リオ五輪を見据えたU−21日本代表 2連覇を懸けてアジア競技大会に挑む

川端暁彦

アジア競技大会がいよいよ開幕

U−21日本代表を率いる手倉森監督は「アジア大会の代表に選ばれたことで満足するな。国を背負って仕事をするという決意が必要だ」と選手に熱く指導する 【川端暁彦】

 第17回アジア競技大会(韓国・インチョン)が9月19日に開幕する。ただし、サッカー競技は五輪と同じく先行開幕かつ広域開催となる。男子サッカー競技は14日に開幕。日本代表は、グループリーグでクウェート(14日・インチョン)、イラク(17日・コヤン)、そしてネパール(21日・コヤン)と対戦する。

 ここでは、まず「日本代表」についての説明が必要だろう。4年に1度開催される「アジア版オリンピック」であるアジア競技大会は、1998年までは「A代表の大会」であった。つまり各国が年齢無制限でのベストメンバーを送り込む大会だったわけだ。ただ、ワールドカップ(W杯)と開催年を同じくする難しさがあったこともあり、参加国ごとの温度差はあった。

 日本も98年大会では中村俊輔、小野伸二らを擁するU−21日本代表(シドニー五輪代表)を派遣。若手に経験を積ませる場として利用した。こうした中で、2002年大会からは本家の五輪にならう形で大会レギュレーション自体が変更となる。「23歳以下の年齢制限+オーバーエイジ3名」という五輪と同一のレギュレーションが採用されることとなった。

 サッカーの国際大会における年齢制限は1月1日区切りなので、今大会の年齢制限は「91年1月1日以降に生まれた選手」が対象となる。「今年23歳になる選手までが対象」と言ったほうが分かりやすいかもしれない。ここに24歳以上の選手たちを3名まで加えることができる。例えば韓国は、GKキム・スンギュ(蔚山現代)、MFパク・チュホ(マインツ)、FWキム・シンウク(蔚山現代)の3名を「補強」している。

リオ五輪を見据えたU−21日本代表

川崎の主力として活躍している大島(左)を招集するなど、今大会には「1クラブ1名」の原則の下で主軸クラスを集めることができた 【川端暁彦】

 この大会へ日本はU−21日本代表、すなわち「今年21歳になる選手」を年齢制限のリミットとしたチームで参戦する。レギュレーションよりも2歳年少となるが、これは「U−23」が年齢制限となる2年後のリオデジャネイロ五輪を見据えての編成だ。前述の98年大会から一貫している日本の強化策である。アジアサッカーのレベルは確かに低いのだが、年齢が上の相手と真剣勝負でぶつかることができるこの場は「格上」との強化試合に等しい。アジア大会での金メダルを狙うならこの編成は下策なのだが、日本サッカー界が欲するのはあくまで「五輪のメダル」ということである。

 強化策以外にも、Jリーグ開催期間中であるこの時期にオーバーエイジまで含めたベストチームを編成するのは難しいという現実的な事情もある(これは日本に限らず他の参加国も頭を痛める問題だ)。実際、4年前の10年大会ではJリーグでレギュラーを張る選手たちが招集できず、控え選手と大学生の急造混成チームで臨んだということもあった(もっとも、そのチームは粘り強く勝ち進んで金メダルを勝ち獲ったのだが)。なお今回は日本サッカー協会(JFA)とJクラブが話し合い、「1クラブ1名」の原則の下で、MF大島僚太(川崎フロンターレ)ら各クラブの主軸クラスを招集することに成功している。

 チームを率いるのは、手倉森誠監督。かつて08年から13年にかけてベガルタ仙台を率いてJ1昇格から定着までの流れを作ったことで知られる。選手の印象は「守備にこだわりがある」というもので、まずは守りから入るセオリー通りのチーム作りに取り組んでいる印象だ。

 また精神面、特に「代表選手」という面にフォーカスした言葉を重ねて選手に発し続けているのも印象的だ。大会直前の合宿初日にも、選手たちに向かって「アジア大会の代表に選ばれたことで満足するな。国を代表して戦うということには大きな責務が発生するんだ。期待もあれば、厳しい目も注がれる。国を背負って仕事をするという決意が必要なんだ」と語り掛けた。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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