捕手の矜持を貫いた里崎智也の野球人生、満身創痍の体……決断した現役引退

週刊ベースボールONLINE

予想以上に遅れた回復

9月11日に現役引退を発表した里崎。無名のアマチュア時代から這い上がった野球人生だった 【写真=高塩隆】

 長きにわたり、千葉ロッテのホームベースを死守してきた里崎智也。今季は故障により近年では最少の試合数にとどまっており、皮肉にもそれが、里崎が果たす役割の大きさを示すことになっていた。しかし、左ヒザ故障の回復がおもわしくなく9月11日に今季限りでの現役引退を発表した。

 夏の風物詩、全国高校野球選手権が終わり、野球ファンの目がプロ野球に向く8月末。各チームは総力を上げてラストスパートに入るが、クライマックスシリーズ出場に望みをかけるロッテのベンチに、ベテラン捕手・里崎の姿はなかった。

 開幕から1カ月が過ぎた5月。かねてから痛めていた左ヒザがとうとう悲鳴を上げた。無理をすれば、プレーを続けることはできたが、歩くだけでも痛みを覚えるようになり、このままではチームに迷惑をかけるとの思いで手術に踏み切った。

 手術は5月12日、千葉県船橋市内の病院で受けた。

「シーズンは始まったばかり。大事な時期に万全にプレーができるようにと思って(手術を)決断した」

 投手がヒジの軟骨を除去するのと同様の簡単なクリーニング手術で、当初球団は全治1カ月と発表した。術後のリハビリを加えても遅くともオールスター明けには戻れると、首脳陣はもちろん、里崎もそう思っていた。

 だが、予想以上に回復が遅れた。全治予定の1カ月を過ぎたころから、少しずつ動くことができるようになったが、肝心のヒザは曲げると痛みが走る。術後2カ月が経過したある日、苦しい胸の内を話した。
「打つだけなら問題ない。指名打者でいいというならば、いつでもいけるとは思うけど……。でも、自分が求められているのは、そこではない」
 正捕手としてのプライドをのぞかせた。

後継者育成のチーム方針

 今季、開幕の福岡ソフトバンク戦(ヤフオクドーム)は先発マスクを任されたが、翌日はルーキーの吉田裕太にその座を譲った。

「自分の立場は分かっている。試合に出るだけが、選手の仕事ではない。チームが勝つために、やるべきことをやるのも仕事」

 2013年シーズンから指揮を執る伊東勤監督が、里崎の後継者育成を掲げているのを理解しているからこそ、ベンチから試合を見ることも納得していた。

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