鈴木亜久里が語る「フォーミュラE」 例えるなら競輪、数年後は別次元の速さ

田口浩次

フォーミュラEの進化の早さに注目してほしい

「アムリン・アグリ・フォーミュラEチーム」で参戦する鈴木亜久里氏。フォーミュラE、さらにはF1の未来を大胆に予測した 【Winpohtographic】

――初年度のフォーミュラEについて、以前、亜久里さんはそのレース内容をマラソンに例えていましたが、他にも分かりやすい例えはあるでしょうか?

 競輪がそうだよね。競輪って最初はゆっくり走っているけれど、最後の1周に向けて一気に勝負するでしょう。フォーミュラEの最初のレースはそういった戦い方をするんじゃないかな。

――F1がタイヤをもたせるように、バッテリー電力をどう保つかですね。

 そう、普通のレースは最初から一気に飛ばすけれど、競輪は違うよね。最初はそこまで無理をせずに走って、最後の1周で勝負する。レースの見方が変わると思うよ。でも、そういう戦い方をするのは、本当に最初だけ。電池とモーターの性能が右肩上がりで向上していくと、どんどん勝負できるようになる。注目してもらいたいのは、これからのフォーミュラEの進化の早さ。目が肥えたファンからしたら、1年目のフォーミュラEの速度は『こんなもんか』という反応かもしれない。でも、3〜5年後のフォーミュラEのマシンは別次元の速さを手にしていると思うよ。それくらい進化する。最後には、最初から最後まで全開で走ることが可能なフォーミュラEになると思うね。

――となると、将来的にはレーススタイルも変わる?

 F1こそ電気で走るレースに変化していくんじゃない。将来的には『昔はガソリンを燃やしてレースをしていたんだ!』と話す時代になりますよ。昔、クルマは石炭だったり、木炭で走る自動車もあったわけだよね。でも、それはガソリンで走るクルマが席巻していった。それと何も変わらない。次の時代を席巻していくのが、電気という動力源という形へ変化するだけだね。

将来すべてのクルマの動力源は電気になる

「すべてのクルマの動力源は電気になっていく」と亜久里氏。いつまでも排気ガスが続く時代ではないという 【Formula E】

――フォーミュラEは時代に求められていると?

 あと10年もしたら走るクルマはみんな電気になっていくでしょう。

――そうなりますかね?

 なるね。それが10年なのか、15年なのか、そこまでは僕には分からないけれど、近い将来はガソリンで排気ガスを出して走るクルマはなくなっていくよ。間違いなく。その手法が燃料電池車両になるのか、EVとして充電して走るスタイルになるのかはまだ分からないけれどね。ただ、すべてのクルマの動力源は電気ということになっていくよ。絶対にそうなる。

――そうなると、やはり将来的にはF1も……

 一般に売られるクルマが電気を動力源とするようになれば、サーキットを走るクルマもそうなっていくだろうね。初代プリウスが登場して以来、まだハイブリッドという形だけれども、電気を使って走る機能を持つクルマは世の中にどれだけ浸透していると思う? 今では当たり前になったよね。僕も今、たまに完全EVの車両に乗ったりするけど、なんか良いことをしている気分になるよ。周囲のクルマは排気ガスを出しているからね。

 F1がフォーミュラEになるかは分からないけれど、F1も新しいレギュレーションで、新しい形の電気を動力源としたレース車両へと進化していくことは、十分にあり得るよ。動力源のフォーマットがガソリンから電気に移行するという形ではね。いつまでも排気ガスじゃないよね。ガソリンエンジンが好きな人もいるけれど、そういう時代ではないよね。音もうるさいしね。排気ガスを出して、タイヤを何セットも使って、というのはいつまで続けられるのかは分からない。

――その他、フォーミュラEの利点はなんでしょう?

 F1だと3日間も4日間も場所を占有するけれど、フォーミュラEなら、レースの1日を占有すればいい。そういう部分では、都市でやる理由にもなるし、開催条件のハードルは下がるよね。

◇     ◇     ◇

「将来は全車電気が動力源になる」と断言した鈴木亜久里氏。ここまでハッキリと断言できるのは、F1をはじめ世界のレースを実際に戦い、見てきたからだろう。その人が感じる次世代の波、それがフォーミュラEである。果たして、従来のモータースポーツとは違ったレースになるのか。そしてF1に並ぶ、世界的な注目を集めるレースへと成長してくのか。今後もフォーミュラEの動向に注目していきたい。

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