「組織が良くなって成績も良くなった」=強化育成担当に聞く 卓球・倉嶋洋介監督

構成:スポーツナビ

倉嶋男子監督が、目指すべきプレースタイルや男子の現強化システムの成果・課題などを語った 【スポーツナビ】

 2020年東京五輪の開催が決まって以来、さまざまな競技で“東京五輪世代”の若手選手が注目を集めてきた。日本オリンピック委員会(JOC)が発表した東京五輪の目標は「金メダル数で世界3位以内」と「実施全28競技で入賞(8位以内)」。各競技団体が一丸となって、目標達成に向けて選手強化を進めている。

 その中で、金メダル候補の1つとなるのが卓球だ。五輪でのメダルはロンドン五輪女子団体での銀1つのみだが、世界ランキングでは男子3位、女子2位(2014年9月現在)と好位置につけている。
 スポーツナビでは、日本卓球界が描く6年後の青写真を2回にわたって紹介する。前半は、倉嶋洋介男子監督に目指すべきプレースタイルや男子の現強化システムの成果・課題を語ってもらった。なお、後半では村上恭和女子監督のインタビューを掲載する(13日掲載予定)。

現トップ選手+数名が東京の主力に

――東京五輪に向けて、注目している選手を教えてください。

 アジア大会(19日開幕、韓国・仁川)に出場する高校3年生の村松雄斗(2014年ユース五輪銀)がいます。若い選手では中学1年生の宇田幸矢(ともにJOCエリートアカデミー)や小学校5年生の張本智和(仙台ジュニア)という選手がいて、彼らの世代も東京五輪に間に合う可能性を秘めています。とはいえ現在、水谷隼(beacon.LAB)は25歳、丹羽孝希(明治大)がまだ19歳、松平健太(ホリプロ)も23歳なので、5、6年後だとちょうどいい時期になります。なので、今のトップ選手と(代表の座を)狙う数名の選手の戦いになるのかなという感じですね。

――40歳前後でも一線で活躍する選手も多いのが卓球の特色だと思います。競技者としてのピークは何歳くらいですか?

 一概に年を取ってもできるのではなくて、一番のピークは30歳前くらいになりますね。東京五輪で金メダルを目指すのは当然なので、今は中国が断然強いですが、中国に勝つ選手を今から育成していかないといけないと思います。

――世界に勝つためのプレースタイルとはどのようなものでしょうか?

 日本が世界に勝つための特長は「速さ」なんですよ。打球を速いタイミングで打って時間を与えなければ、それだけ相手がミスしてくれたりします。なので、速い卓球というのが今、日本が勝つための1つのポイントでしょう。
 加えて、これからはパワーが必要だと思います。中国選手のように、一発で決められる決定打・決定力があれば、中国やドイツにも勝つことも多くなってくるのではないかと思います。

水谷、岸川らを育てた強化システム

東京五輪世代の注目選手である村松。今夏のユース五輪で銀メダルを獲得するなど、着実に成長している 【スポーツナビ】

――東京五輪を見据えての現在の強化の柱として、卓球では「国際競争力のさらなる向上」を挙げています。具体的に教えてください。

 今の卓球の代表チームはピラミッド型で、トップの「ナショナルチーム(NT)」、その下が高校3年生〜中学1年生までの「ジュニアナショナルチーム(JNT)」、さらにその下の小学生を「ホープスナショナルチーム(HNT)」という3つに分けられています。JNTの中には、村松のように世界選手権に出られるか出られないかというレベルの選手もいます。そういった選手はNTに繰り上げて、NTとJNTで交互に練習をさせるなどしています。エスカレーター式ではないですが、昔からずっとそういった強化をしていて、成功している部分じゃないかなと思います。

――コーチ陣の縦の情報共有はどのように行っていますか?

 JNTで監督をやっている方が、必ずその上のNTではコーチをやるなどして、上(のカテゴリー)はどうやっているかを見ているんです。また、年に1回、NT、JNT、HNT全員を集めたミーティングを必ずやっています。そこで意識や情報を共有して、それを指導者が1年をかけて教えていく。(方針が)変わってきたら、「こういうふうに教えていきましょう」と僕から発信していきます。

 他の競技の人にも「これほどしっかりした組織でやっているのは珍しいですね」と褒められるんですけど、(2001〜12年まで男子監督を務めた)宮崎義仁さんが「HNTを作ろう」と言うところから(現システムが)始まって、初代のチームメンバーだった水谷、岸川聖也(ファースト)が育って今があります。なので、すごくいいシステム、流れができあがってきたというふうには思いますね。

――NTの強化スタッフ一覧を見ると、男子が5人なのに対して女子は村上恭和監督を筆頭に15人もいます。取り組みにはどういった違いがあるのでしょうか?

 男女では方針が全然違っていて、男子は簡単に言えば「ナショナルトレーニングセンター(NTC)で強い者同士で強化をしましょう」という考え方。でも、女子は女子同士ではやらないんですよ。男子とやれば強いじゃないですか。だから、個別に男性や中国選手を呼んで練習相手にさせる人もいます。女子は、アジア大会や世界選手権などの大きな大会の前に事前合宿をするくらいで、僕ら(男子)みたいには全然やらないですね。

 また、女子は「母体コーチ制」といって、自分の所属チームのコーチがそのままNTのコーチになり、その選手の担当コーチになっています。だから村上監督は(チームを)統括している感じになるんですね。男子の場合は全体的に僕が見て、それにコーチがついている感じです。

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