ふがいないオランダ代表ユーロへの船出 攻撃スタイルを標榜も守備が再び崩壊
4−3−3への回帰を目指すも……
ユーロ2016予選の初戦でオランダはチェコに1−2で敗れた 【写真:ロイター/アフロ】
敵地での、しかも開幕戦ということで、オランダにとっては引き分けで十分な試合だったが、まさかの自滅に全国紙『アルヘメーン・ダッハブラット』は「悲惨なシナリオ/ヤンマートの大ちょんぼが、冴えなかったオランイェをつぶす」と報道した。
オランダの迷走は4日の親善試合、対イタリア戦から始まった。1998年ワールドカップ(W杯)フランス大会でオランダを率いたフース・ヒディンク監督にとって、この試合は復帰初戦だった。W杯ブラジル大会でオランダは3位になったが、この時、ルイ・ファン・ハール前監督が採用した5−3−2によるカウンターサッカーをヒディンクはよしとせず、イタリア戦ではオランダ伝統の4−3−3に戻していた。しかし、オランダの守備はたった10分で崩壊した。
3分、イタリアのセンターバック(CB)レオナルド・ボヌッチのロングボールからセンターFW(CF)チロ・インモービレが難なくフリーになって先制点を決めると、9分にはMFダニエレ・デ・ロッシのロングボールからCFシモーネ・ザザがあっさり抜け出し、オランダのCBブルーノ・マルティンス・インディのファウルを誘った。このPKをデ・ロッシが決めて0−2。ファウルにより、マルティンス・インディが退場となったことで、オランダは残り80分間、点差をつけられないよう慎重に戦い、何とか0−2で試合をまとめた。しかし、この敗戦は、チェコ戦を目前に控えたオランダに大きなダメージを残した。
今年3月、パリで行われたフランス戦でオランダは成す術なく0−2で敗れ、さらにケビン・ストロートマンがセリエAで負傷したことで、ファン・ハールは5−3−2への切り替えを決断した。ヒディンクは、バリのイタリア戦をきっかけに前任の戦術をコピーすることを決断し、チェコ戦に臨んだ。
DFのミスはオランダサッカー界の課題?
攻撃スタイルを目指す意向を示していたヒディンク監督だが、チェコ戦では5−3−2を選択した 【写真:ロイター/アフロ】
しかし、チェコ戦ではキックオフの笛が鳴ってから22分、早くもオランダの守備は破られ、チェコに先制点を許した。その後、ヒディンクの動きは早く、39分にCBジョエル・フェルトマンを下げて右ウイングのルシアーノ・ナルシンを投入、フォーメーションを4−3−3に変更した。すると、オランダは55分、CKの2次攻撃からMFダレイ・ブリント(キックオフ時は左ウイングバック)のクロスからCBステファン・デ・フライがヘディングゴールを決めて1−1に追いついた。以降、オランダは、チェコのバリエーション豊かなセットプレーには悩まされたものの、しっかりとゲームをコントロール。ヤンマートのミスが起こるまで勝ち点1を持ち帰ろうとしていた。
このミスはヤンマート個人のもので、2度と起こらぬよう彼には猛省が必要だが、例え個人のミスであっても代表チームで起こった以上、そこには“何か”があるものだ。今季のヨーロッパリーグ(EL)予選で、フローニンゲンのCBエリック・ボテギンが守乱を起こし、アバディーン(スコットランド)に1−2で敗れてしまった。ブラジル人とは言え、彼のプロ人生は長くオランダにある。フェイエノールトもチャンピオンズリーグ予選でスベン・ファン・ベーク、ヨリス・マタイセン、ハリド・ブラルースが拙守を続け、ベシクタシュ(トルコ)に敗退。続くEL・プレーオフでは、ザルヤ・ルガンスク(ウクライナ)に対し3点のリードを守りきれず、4−3で辛うじて勝利した。
PSVのCBジェフリー・ブルマは芝生の上で滑ってしまい、ピンチを招くシーンが多い。チェコ戦の前半、敵陣に上がってパスを相手に渡してしまったフェルトマンも、昨年冬辺りからアヤックスで集中力を欠いたミスが目に付く。ヤンマートはSBだが、オランダでは国を代表するクラブのCBですら、見ていて「えー!?」と驚くようなミスが多い。その中から選ばれたDFなのだから、代表チームでも他の国では決して許されないミスが起こってしまう。だから、ヤンマートのミスは、オランダサッカー界として負うべきものと見ている。
悲惨なインターナショナルマッチウィーク
A代表は絶対的なエース、アリエン・ロッベン、W杯で守備の要となったロン・フラールを負傷で欠いたとは言え、U−21も含めて9月のインターナショナルマッチに4戦全敗というオランダのふがいなさ。この地に過ごして16年、こんな悲惨なインターナショナルマッチウィークは記憶に無い。僕の心も泣いている。
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