ミーシャ・テイトが語る女子MMA=「最初は本当にハングリーだった」

長谷川亮

中井りんとの試合は「歴史的な一戦になる」

9月20日のUFC日本大会ではアジア人初の女性ファイターとなる中井りんと対戦するミーシャ・テイト 【スポーツナビ】

「UFC JAPAN 2014」(20日、埼玉・さいたまスーパーアリーナ)でアジア初の女性UFCファイターとなる中井りんと対戦するミーシャ・テイトは、今大会出場選手中、最も世界ランク上位につける選手である(女子バンタム級2位)。ストライクフォース時代は王者に輝き、現女王でライバルであるロンダ・ラウジーとの激闘では全米の注目を浴びた。しかし一方で、女子MMAが全く注目されない時代から戦ってきた苦労人でもある。8月末大会プロモーションのため来日したミーシャに、女子MMAの歴史を歩んできたその思いを聞いた。

――今日は品川庄司のお二人と南明奈さんを相手に少し変わった形の会見でしたが、いかがでしたか?

 UFCのイベントという点ではアメリカと少し違ったユニークなイベントでしたが、楽しかったです。

――デイナ・ホワイト社長が「日本のファンはMMAについてとても教育されている」と語る一方で、新たなファンがあまり広がっていない一面もあります。ミーシャ選手は日本のファンにどんな印象をお持ちですか?

 日本でも新たにUFCのファンになる方がいると思いますが、古くから見てくれているファンの人でも、アメリカの観客ほど「クレイジーだ」とか自分勝手にものを言ってくる人はいないんじゃないかと思います。それは日本の文化が他を重んじるというか、相手のことを尊重する考え方がベースにあるからだと私は思います。

――日本にはスマックガールに代表される女子総合格闘技が早くからありましたが、一般的には女子総合格闘技はまだメジャーな存在ではありません。そういった中でミーシャ選手は自身の試合をどんな風に見てほしいですか?

 大きな舞台でみなさんが初めて見る、UFCでの女性の試合になると思うので、私たちの試合は歴史的な一戦になると思います。日本人とUFCのファイターが素晴らしい試合ができることを日本の皆さんに示すことができると思うし、地図における一つの道しるべのように、今後の未来へつながっていくんじゃないかと感じています。

「この競技が好きだからという理由で戦ってきた」

8月26日に行われたUFC応援イベントに出席しい、日本ファンへUFCをアピールしたミーシャ 【スポーツナビ】

――ミーシャ選手はこれまでアルバイトをしたりトレーラーハウスの中で生活しながら格闘技をやってきた時期があるということを以前記事で読みました。現在まさに歴史が作られていると言える女子MMA、その渦中に身を置くことはどう思いますか?

 私がMMAをやるようになって9年ぐらいですが、その間女子MMAは紆余曲折を経て進化してきていて、私はその中で知っておくべき全てを体験することができたと思っています。最初の頃というのは本当にハングリーな時代で、試合もファイトマネーをもらえず、ただこの競技が好きだからという理由で戦っていました。女性の大会というのは規模も小さく誰も注目してくれなかったし、でもそういったところからUFCの中でもトップ選手の1人として、全米中から注目を浴びるような試合もしてくることもできました。そういう全ての経験をすることができたのはタイミングが良かったし、ラッキーなことだったと思っています。おそらく私はUFC女性ファイターの中で、そうした両極端の時代を経験している唯一の選手じゃないかと思います。たとえば藤井恵選手は私より年齢が少し上でしたから、UFCが人気が出る前の時点で引退しなければならなくて、もしもう少し後に生まれていればそういう本当にいい時代も味わえたんじゃないかと思うんです。そういう意味でも私はラッキーだったと感じています。

――困難な時代を経て、現在はフルタイムの職業:ファイターとなっていかがでしょう。

 現在私は実際に1日2回のトレーニングをしています。世の中を見れば、好きではない仕事を毎日嫌々ながらしている人が非常に多いと思うので、私は本当に自分が好きなこと、楽しめることを仕事としてやっていける点で恵まれていると感じています。時に女性として戦って生活をするなんてあまりにもクレイジーだというようなことを言われるのですが、私の考えからすれば、自分が嫌な仕事を、毎日嫌々ながら会社へ行ってコンピューターの前に座ってやることの方がずっとクレイジーだと思います。なのでそういう思いをせずに済み、自分のやりたいことをやっているので満足しています。

――評価も注目もされない時代から自分の思いに従って戦い、ファイターとして生きる現在を確立したのですね。それでは最後に日本のファンへメッセージをお願いします。

 9月20日はぜひ私の試合を会場へ観に来てほしいです。中井選手との試合は素晴らしい試合になると思うし、おそらく当日のカードの中でもベストファイトになると思います。絶対に見逃せない試合になると思うのでぜひ注目してください。
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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