今秋、青木宣親に視線が集中する可能性も ロイヤルズ“勝利の使者”となれるか

杉浦大介

今季全般の成績には満足できないが……

青木は今季決して好調というわけではないが、チャンスメーカーとしての役割を果たし、勝利に貢献している 【Getty Images】

「試合の入りやランナーがいるときは最大集中で臨むようにしています」

 9月7日(日本時間8日。以下、すべて現地時間)までニューヨークで行われたヤンキース3連戦を終えて、ロイヤルズの青木宣親はシリーズをそう振り返った。

 5日の初戦ではセンター前適時打で1−0の勝利に貢献し、7日にも相手エラーを誘う内野安打。ヒットはこの2本のみでも、勝った2試合ともで先制点に絡んだのだから、“最大集中”の成果は発揮されたと言っていい。

「自分が(得点に)絡んで絶対に勝つというか、そういう気持ちで臨んでいる」

 敵地で2勝1敗とヤンキースに勝ち越したシリーズの中で、青木は“気持ち”通りの働きができていたに違いない。しかし……この3連戦だけでなく、今季全般を見た場合はどうか?

 本来のスキルを考えれば、その成績は満足できるものではないかもしれない。
 ブリュワーズに属した過去2年は続けて打率2割8分、20盗塁以上をクリアし、昨季終了時点ではブレーク寸前にも見えた。ところが、ロイヤルズに移籍して迎えた2014年はここまで打率2割6分5厘、1本塁打、15盗塁。7月には打率2割5分台まで落ち込み、6月21日に左足肉離れで故障者リスト入りも経験するなど、全般的に苦しいシーズンとなっている。

 ロイヤルズが32歳の日本人外野手を獲得した理由は、何より、昨季3割9厘だった1番打者の出塁率を向上させることだったはず。そういった意味で、過去2年連続3割5分以上だった出塁率を3割3分2厘に落としていることは少々残念ではある。

ロイヤルズは29年ぶりプレーオフへ好位置

 その一方で、楽しみなのは所属するロイヤルズが実に1985年以来となるプレーオフ進出に向けて好位置につけていることだ。

 7月22日以降の勝率7割2分1厘(31勝12敗)はメジャートップ。大本命のタイガースを逆転し、現時点で2.5ゲーム差で首位に立っている。
 アレックス・ゴードン、サルバドール・ペレス、エリク・ホズマーといった才能豊かな若手野手がそろっているものの、平均得点はア・リーグ15チーム中9位。それよりもチーム防御率はリーグ4位と投手陣の質は高く、特にグレグ・ホランド、ウェード・デービス、ケルビン・ヘレラの3枚看板が君臨するブルペンは強力だ。7回を終えた時点でリードしているゲームでは64勝1敗と、終盤のせめぎ合いでは尋常でない強さを誇ってきた。

「優勝するという意識でやっているし、全員の気持ちがその方向に向かっている。みんなでやっているという感覚が強い。勢いそのままにやっている。そんなに点数は取れていないけど、勝っているというのが大きい」

 青木のそんな言葉通り、週末にニューヨークでヤンキースに勝ち越したロイヤルズからはまるで学生チームのようなケミストリーが感じられた。

 昨季はシーズン最終週までワイルドカードを争ったチームは、投手陣と勢いを糧に、タイガースの地区4連覇を阻めるか。ホーム戦の平均観客動員ではこの20年間で最高を記録している地元カンザスシティのみならず、今後のロイヤルズは全米からも注目を集めるチームの1つになっていくに違いない。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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