UFCデイナ・ホワイト社長が語る今後=「格闘技に熟練された国」日本の可能性

長谷川亮

社長はトム・クルーズよりいい男!?

6月に来日したUFCデイナ・ホワイト社長に今後の日本での戦略を直撃インタビュー 【スポーツナビ】

 いよいよ開催が迫った「UFC JAPAN 2014」(20日、埼玉・さいたまスーパーアリーナ)。6月に大会発表会見が行われるとデイナ・ホワイト社長は自ら来日して登壇し、ファンからの喝さいを集めた。選手顔負けでキャラ立ちする名物社長に、その人となりと素顔、そして今後の日本におけるUFCの展開を直撃した。

――社長はインターネットのマスコミは好きではないという話を以前読んだことがあるのですが、今日は大丈夫でしょうか。お手柔らかにお願いします。

 それは「アメリカのインターネットに書かれていることはクダらないことが多過ぎる」と言っただけで、全般的にということではありません。日本はしっかりしているし、アメリカに比べて数段いいので大丈夫です。

――それを聞いて安心しました(笑)。今日も会見の前ずいぶんたくさんのファンに囲まれていましたが、最近映画のプロモーションでトム・クルーズが来日して、ファンサービスで50分間写真撮影に応じたという話があったので、何だかそれを思わせるところがありました。

 ありがとう、ただ私の方がトムよりいい男です(笑)。

――まるでスター選手のようにファンから歓待されていましたが、どんなお気持ちですか?

 いやいや、もし本当のスターファイターが同じ部屋にいたら、みんなそちらへ行ってしまうし、本物のスターはこんなもんではありません。

――がっしりした体格が見た目にも印象的な社長ですが、最近はどんなトレーニングをされているのですか?

 普段は毎朝ワークアウトをしているのですが、このアジアツアー中はちょっとサボっています。香港とマカオは今回初めて来て、飲んだり人付き合いが多くて(笑)。日本には昨日着いて、大好きなステーキハウスの「ハマ」でゆうべたくさん食べてしまったので、ちょっと今のコンディションは良くないです(苦笑)。

――格闘技の練習もされるのですか?

 スパーリングはやらないですが、ミット打ちはやっています。

「日本は格闘技に熟練された国と感じる」

「ファンは確実に増えて成長していると思うし、今後さらに伸びる可能性を秘めていると確信している」と日本市場へ大きな期待を寄せる 【スポーツナビ】

――ではUFCのことをお聞きしていきたいと思います。一昨年・去年と日本大会は2月、3月の開催で今年もその頃開催になるのかと思ったのですが、今年は時期をズラしての開催となりました。これはどういう理由によったのでしょうか。

 UFCはほかの国々でも興行を開催するので日程調整が必要で、今年の場合は春に固執せず、9月がちょうどよくスケジュールが組めたというだけのことです。

――以前日本でUFCを開催するにあたって妨害ややりにくい部分があったと話されていましたが、今はもう大丈夫なのですか?

 そんなことはだいぶなくなったので大丈夫です。

――日本でのUFCの人気、浸透ぶりというのを社長自身はどのように感じていますか?

 前回大会は1万5000人が熱狂してくれましたし、今日の記者会見でもすごく熱烈な女の子のファンがいました。ファンは確実に増えて成長していると思うし、今後さらに伸びる可能性を秘めていると確信しています。

――日本のファンはMMAの教育がなされていると社長はお話しでしたが、その場合はやはり他の国とは違ったアプローチの仕方があるのでしょうか。

 たとえばメキシコでTUF(※UFCへの出場権を争う登竜門的番組)をやった時は、非常に進行をゆっくりしないと視聴者が付いてこれません。TUFが何なのか、UFCが何なのか、MMAが何なのか。まずそこから入りますが、日本はそういう説明、分かってもらう段階を踏まないといけない心配がないし、MMAだけでなく格闘技において日本は本当に熟練された国だと感じています。

バンタム級とフェザー級でTUFを開催する予定

修斗を引退した佐藤ルミナらの協力を仰ぎ、日本の格闘家発掘にも力を注ぐ。TUF日本版も計画されている 【スポーツナビ】

――会見でもお話しされていまいたが、日本でもTUFを開催すると期待・理解していていいのでしょうか。

 8人の135ポンド級(≒61.23kg、バンタム級)、8人の145ポンド級(≒65.77kg、フェザー級)の選手を揃えてトーナメント形式で進めます。多分8カ月掛けて、全30話に渡って放送する計画です。ドキュメンタリースタイルで、1人1人の選手の身の周りのことや考えていることを深く掘り下げ描写するので、全部観終わった視聴者は、絶対に誰かを応援したり、誰かのアンチになっていることは間違いないと思います。

――では、これまでのTUFとは違う形になると。

 別の構想です。今回はUFCがコーチを決めてチームを組んで合宿をするのではなく、それぞれの選手が自分のコーチの下で、それぞれの指導を受ける姿をドキュメンタリーで撮り続けるので、今までと全く違うものになります。

――これは日本だからということで、通常のTUFと違うスタイルを採用したのでしょうか。

 日本という市場を考えて、こういう形が一番いいんじゃないかと思いました。

――他のアジアの国でもこの形でやることをお考えですか?

 そうですね、今後中国でもこの形でやるかもしれません。日本に限らず、アジアの国々は市場としての可能性はもちろん、いい選手が生まれていて発掘し甲斐があるというのを感じています。

――今回社長が会見のために直接来日したあたりも、アジアにかける意気込みを感じます。

 今回はアジアツアーで日本以外にも1週間ぐらい、いろんなところへ行っています。中国には本当に注目していますし、フィリピンや他の国にも可能性を感じています。インドにも目を向けていて、行く予定があります。

「日本ファンが楽しめることをいろいろ考えている」

6月に行われたUFC日本大会概要会見では、会見終了後もイスに座って報道陣からの質問に丁寧に答えていたホワイト社長 【スポーツナビ】

――もう何度も日本にはいらしていると思いますが、何か日本でやってみたいことはありますか?

 仕事で東京には来ているのですが、正直東京以外は見たことがないので、今後機会があれば、東京以外の都市を回ってみたいと思っています。でも、そう言いながらも私は仕事が大好きで、仕事でやるべきことをやって、おいしいものを食べて帰れればかなり満足なので、大好きな「ハマ」ばかりでなくほかのおいしいレストランも探してみたいです。でも、むしろ日本人のあなた方の視点から、7度も8度も日本に来ながら、仕事で東京、「ハマ」ばっかり行っている私に対して、何かオススメがあれば教えてください。

――では、温泉なんかいいんじゃないですかね。

(東京都内や近郊にもあり、入りながらお酒も楽しめるところがあるという説明を聞き)いい提案ですね、気に入りました。

――では最後になりますが、日本大会、そしていつもUFCを楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。

 日本のファンが格闘技を大好きであることは熟知しています。今回9月20日にUFCジャパンをやりますが、それ以外にも日本のファンが楽しめるUFCをいろいろ考えています。日本版のTUFをやることも含めぜひ期待していてください。この新しいテレビ番組は総合格闘技ファン限定でオススメするのではなく、登場する人物たちに肉体的・身体的チャレンジもあり、精神的悩みもあります。感情的葛藤もあり、それでも何とか頑張り、生きていこうともがき苦しんで前に進もうとする人々を描写しますので、総合格闘技ファンに限らず、スポーツファンだけでもなく、こういうドキュメンタリーに興味がある人全員に見てほしい、そういう内容になると思います。
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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