実力示すも屈した侍18U代表の課題、悔しさは次のステージの糧に……

沢井史

5試合で自責点0、投手陣の奮闘光る

決勝で韓国に1−2で敗れた日本。投手陣の奮闘が目立ったが、一方で課題も浮き彫りとなった 【写真は共同】

「ピッチャーは好投してくれたのに、勝たせてやれなかったのは監督の責任。選手たちはよく頑張ってくれました」

 試合後、ベンチ前での取材で高橋広監督は悔しさをかみしめながらこう振り返った。

 一次ラウンドでは3試合すべて無失点、被安打は全投手6人で計2本という投手陣で臨んだ決勝ラウンド。準決勝・チャイニーズ・タイペイ 戦で先発した高橋光成(前橋育英高・3年)は4回2/3を投げて3安打6奪三振の好投を見せたものの、味方の失策が絡んで2失点。その後、バトンを受けた小島和哉(浦和学院高・3年)、岸潤一郎(明徳義塾高・3年)が無失点リレーを見せた。

 決勝戦は左打者の多い韓国打線を見て、左腕の森田駿哉(富山商高・3年)が先発。強打者がそろう韓国打線に対し、キレ味鋭いスライダーと最速141キロのストレートを武器に凡打の山を築き、8回を終えてわずか1安打に封じ込む快投を見せた。

 準優勝に終わった今大会だったが、チームをたたえる点を挙げるとすれば、先述した通り投手陣の奮闘だっただろう。高橋監督がエースとして指名した高橋光成は、2試合9回2/3を投げて被安打5、奪三振13。決勝戦で潜在能力の高さを証明した森田も「アジアのチームでこれだけ投げられたのは自信になる」と試合後、笑顔をのぞかせた。また、投打でフル回転した岸は、4回を投げて被安打0、奪三振7という完璧な内容だった。終わってみれば6人が投げて5試合で自責点0。この数字は胸を張っていい。

派手さはないが、実力の片りんを示した打者陣

投打“二刀流”で活躍し、実力の片りんを見せた明徳義塾高・岸 【Getty Images】

 打者は全体的に昨年の森友哉(大阪桐蔭高→埼玉西武)、渡辺諒(東海大甲府高→北海道日本ハム)のような派手さはなかったが、やはり不動の主砲を務めた岡本和真(智弁学園高・3年)の名前を挙げたい。練習試合を含めて期待された本塁打はなかったものの、強いライナー性の当たりを連発し、全5試合で安打をマーク。打率は4割を超えた。3番に座った岸田行倫(報徳学園高・3年)は、準決勝で1点ビハインドの9回裏に反撃の口火を切るヒットを飛ばし、サヨナラ勝ちのお膳立てをするなど勝負強さを披露。木製バットの対応力は、チームで最も長けていたかもしれない。

 日本での練習試合から調子が上がらなかった浅間大基(横浜高・3年)だが、1次ラウンドの中国戦で4打数3安打と一気に調子を上げ、決勝戦の韓国戦では1番センターでスタメン出場。ノーヒットに終わったが、リストの強さと広角に打ち分けられる打撃センスはやはり本物だった。投手でも名を挙げた岸は打撃でも実力の片りんを見せ、決勝戦では唯一の打点をマーク。投打の柱としてチームを勢いづけた。準決勝まで1番に座った脇本直人(健大高崎高・3年)は、予選ラウンドでは持ち前の俊足を生かす場面も多かったが、準決勝では無安打。決勝ではスタメンを外れるなど、消化不良の格好で大会を終えた。「自分の力のなさを実感した」と試合後、無念の表情を浮かべたが、この悔しさを次の世界でどう生かすのか注目したい。

来年、自国開催のW杯で勝利するために――

準決勝、決勝で失った4点はいずれもエラーから許したもの。急造チームの懸念点とはいえ、来年のW杯で頂点に立つための課題と言える 【写真は共同】

 準決勝、決勝を通して悔やまれるのはミスからの失点だった。2試合で許した計4失点はいずれも失策から許したもの。野球にミスはつきものではあるが、それをいかに、どう防ぐか。急造チームゆえに懸念されていた部分ではあったが、「1点を争う試合になるとミスした方が負ける。これはどんな野球チームにも言えることだが、いかにミスの少ないチーム作りができるかが大事」と、高橋監督は締めくくった。

 試合後、涙に暮れた遊撃の安田孝之(明徳義塾高・3年)の表情が物語っていたように、勝ちたいという執念は決して韓国には負けていなかった。だが、ここ一番でのメンタリティーに多少の差があったのか。来年は日本で18Uワールドカップ(大阪・兵庫で予定)が開催される。昨年の世界大会でも2位で終わった日本。今大会で得た課題が、来年のチームにつながり、頂点に立つための糧となることを強く願いたい。
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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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