ジョコビッチを倒した錦織の勝因=全米オープンテニス

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見事としか言いようのない集中力

世界No.1を撃破! 錦織の勝因に迫る 【Getty Images】

 現地時間6日、錦織圭が第1シード、ノバック・ジョコビッチ(セルビア)をセットカウント3−1で倒し、日本選手としては史上初めてグランドスラムのシングルスでの決勝進出を決めた。

 セットカウント2−1で迎えた第4セットの第1ゲーム、錦織はジョコビッチのサービスの乱れを狙い、強烈なリターンを放って0−30に持ち込んだ。勝負所をしっかり抑えながら、巧みな力の出し入れ……。15−30からジョコビッチが献上した重いダブルフォルトは、強い風のせいではない。そこまで蓄積してきたショットの軽重、ラリーに込められた攻撃性の濃淡の果てであり、15−40からジョコビッチのフォアハンドが力足らずにネットにかかった。このサービスブレークは、初めての6試合目、4時間超の2試合を戦ったボロボロの肉体には爽やかなシャワーだ。

 続く第2ゲーム、0−40から5ポイント連取してサービスキープしたところで布石は整った。無駄な打ち合いでの消耗を避け、自分のサービスゲームに集中――第5、第7ゲームの相手のサーブに抵抗せず、4−3からのサービスゲームは3本のノータッチエースによるラブゲーム・キープで5−3。見事としか言いようのない集中力と完成された試合運びである。第9ゲームの2本目のマッチポイントで、ナンバーワンの必死のフォアハンドがベースラインを大きく跨ぎ、熱いコートにピリオドが打たれた。

世界No.1を狂わせたリターンへの警戒

 心配されたのは疲労だった。準々決勝から丸2日あいたとはいえ、深夜の4時間19分、炎天下の4時間15分を戦った心身が軽いはずはない。ここまで5試合の試合時間の合計はジョコビッチの10時間5分に対し錦織は14時間34分、1試合多く戦ってきた計算になる。立ち上がりのポイントは二つあった。錦織は打ち合いから徐々にペースを上げるスロースターター。もう一つ、ジョコビッチは暑さが苦手でこの日は高温になるという天気予報があった。序盤をどう対処するか。

 トスでは錦織が定石通りにレシーブを選択。第1セットの第2ゲーム、長いラリーを制し、2度のデュースからサービスキープした。続く第3ゲームを先にブレークし、第4ゲームはジョコビッチがラブゲームでブレークバックと、ここは軽いジャブの応酬だったが、こうした出入りの多さは、リズムを呼び起こし、錦織には明るい兆しだ。3−3で迎えた第7ゲーム、ジョコビッチのファーストサーブが入らず、錦織はセカンドサーブを狙って3本のリターンエースを奪い、そのまま第1セットを逃げ切った。

 この日のジョコビッチは、一貫してファーストサーブに精彩を欠いた。疲れも暑さも湿度も影響しただろうが、錦織のリターンへの警戒もあった。ミロシュ・ラオニッチ(カナダ)、スタン・ワウリンカ(スイス)のビッグサーブをかわしたという心理的な重圧であり、そこを感知した錦織はセカンドサーブに狙いを絞ることができた。第1セット、ジョコビッチのファーストサーブの確率は54%、セカンドサーブからのポイント獲得率は僅かに25%。こうした内容でのセット獲得は、スロースターターの錦織にさらに自信を与えただろう。

 だが、相手は今年のウィンブルドンで7度目のメジャー・トロフィーを掲げたチャンピオンだ。1ポイントの揺れで、どう流れが変わるか分からない。

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