43歳クルム伊達が放つ不思議な魅力=全米オープンテニス
現役復帰後、初となる準決勝進出
ダブルスで準決勝進出を果たしたクルム伊達。現役復帰後では単複初のことだった 【Getty Images】
全米オープンテニス(米国・ニューヨーク)のシングルス1回戦では、ビーナス・ウイリアムズ(米国)とセンターコートに立ち、2人合せて77歳の最高齢対戦。43歳・クルム伊達が第1セットを奪ってスタンドを沸かせた。結局は逆転されて敗戦。しかし、ドロー運がなかったと思っていたら、それでは終わらない。
今度はバーバラ・ザラボバ・ストリコバ(チェコ)と組んだダブルスの3回戦で、ス・ウェイ・セイとシュアイ・ペンのペアを倒した。この台湾・中国ペアは昨年のウィンブルドン、今年の全仏ダブルスのチャンピオンだ。続く準々決勝も、アンドレア・フラバチコバ(チェコ)/ジエ・ジェン(中国)組をフルセットの末に撃破し、ベスト4まで勝ち上がった。クルム伊達にとって、これがグランドスラムのダブルスでは初めての4強入りで、08年の現役復帰後では、単複初の準決勝進出。44歳の誕生日を目前に、いまさら“初めて”の記録が生まれるとは思いもしなかっただろう。
理想のペアを維持するのは難しい
「マカロワにはスタミナも実力もあり、そもそも、そういうタイプじゃないですよ」
相手サーブで始まった第1セット、クルム伊達が絶好調だ。第1ゲームでいきなりボレーをコースよく立て続けに2本決め、サービスブレーク。一方、ストリコバはこれまで、パワフルなショットでクルム伊達の非力を補ってきたが、この日は力みが目立った。そこをクルム伊達がいい動きでカバー。第7ゲームも、5度目のデュースでブレークし5−2とリードした。第8ゲームはクルム伊達のサーブ。40−30からセットポイントが2本あったが、このチャンスを生かせなかったのが響いた。そこまで不調だったマカロワが動き出し、そこから5ゲーム連取を許して流れがガラリと変わってしまった。
「リスク、ダイナミックさ、勝負強さ、そういうものを全部、相手に出されてしまった」
前に出てくるからダウンザラインかロブを上げなければいけないと分かっていながら、吸い込まれるように打ってしまう……これが、長く組んだペアだから持つダブルスの強さだという。マカロワとベスニナは2012年のこの大会からペアを組んでおり、昨年の全仏オープン優勝、今年の全豪も準優勝を手にした。クルム伊達とストリコバのペアは今年の春から散発的に組んできただけ。ツアーはシングルスを中心に回っているだけに、年齢、ランキングなどの面から理想のペアを維持するのは難しいのだ。
第2セット、第2ゲームのクルム伊達のサーブ。15−40から持ち堪え、デュースを7度繰り返して抵抗したが、ブレークされて流れを変えることはできず、結局、ストレート負けした。