錦織、世界的トッププレーヤーの証明 全米オープンテニス

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日本から出た世界的トッププレーヤー

錦織は今年の全豪OP覇者ワウリンカをフルセットの末に倒し、グランドスラムでは自身初のベスト4進出 【写真:ロイター/アフロ】

 錦織圭(日清食品)が今年の全豪オープンの覇者、第3シードのスタン・ワウリンカ(スイス)を4時間15分のフルセットの末に倒し、グランドスラムでは自身初のベスト4、日本人選手としては1918年の熊谷一弥以来となる96年ぶりの全米オープン4強入りを果たした。錦織は中2日の休養を挟んで9月6日(現地時間)、この日の準々決勝でアンディ・マレー(スコットランド)を退けた第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)と対戦する。

 炎天下で始まった4時間15分。両者ともフラフラになりながらの死闘で勝利をもぎとったのは錦織だ。2日前には午前2時すぎまでの4時間19分を戦い、床に就いたのは朝の6時。そんななかでも第3シードに勝ち切った技術、体力、精神力――日本からついに世界的トッププレーヤーが出たと言い切れる見事な勝負だった。

慌てず騒がず、集中力を維持

「スタニマル」と呼ばれるワウリンカはパワーで錦織を攻めたてた 【写真:Action Images/アフロ】

 第1セットはワウリンカのパワーに吹き飛ばされた。時速210キロを超えるサーブ、ヘビー級のショット。同じスイスのロジャー・フェデラーが「スタニマル(スタン+アニマル(野獣)」と名付けたように、野性味たっぷりの攻撃は、自在な片手打ちバックハンドが特徴だ。第2ゲーム、打ち合いからそのバックをライン際どく決められ、デュースに入って今度はフォアのウィナーを連続で叩かれて早々にブレークされた。このセットのウィナーを比較すれば、ワウリンカの14本に対し錦織はわずか2本。しかし、ここで慌てず騒がず、集中力を維持できることが今大会の飛躍につながっている。

 準々決勝で、ミロシュ・ラオニッチ(カナダ)をフルセットで倒した自信はかなり大きい。相手のパワーに押されて得意の切り返しに苦労したものの、長いラリーはほぼ確実に奪い、第2セットから徐々に押し気味に試合を進めた。互いにサービスゲームをキープして3−3で迎えた第7ゲーム、錦織のサーブ。15−40と2本のブレークポイントを逃げ切った。この辺りからワウリンカは守備的になり、逆に錦織がリズムに乗って試合をリード。そして第12ゲーム、ワウリンカは30−15から脱力して崩れ落ち、セットポイントでダブルフォルト……。錦織が第2セットを奪った。

ワウリンカの戦術ミス!?

錦織は今シーズンは3戦負けなしと、5セットマッチに強さをみせる 【写真:Action Images/アフロ】

 第2セット以降、ワウリンカのサーブの威力が落ちた印象があった。ただ、本人によればそれは意図的なものだという。

「戦術の問題だ。圭をもっと走らせオープンスペースを作るために、ファーストを入れていこうと思った。セカンドサーブで中に入らせたくなかった。第2セットの最後以外、サーブは思うように打てていた」

 もし戦術だったなら、それは裏目に出たのではないか。錦織はラリー戦にますます自信を深めており、リターンゲームの不安が薄くなった分だけ、今度は自分のサービスゲームに集中できるようになっていた。それが出たのが第3セットだ。1ブレークずつ交わしてタイブレークに突入。ワウリンカは5−4リードからの自分のサーブを2本とも落として5−6。そこから錦織のサーブを連続で破って再び7−6としながら、再びミニブレークを2本献上。結局、錦織がこのセットを奪ってセットカウント2−1とリードした。

5セットマッチに強い錦織

4回戦、準々決勝を連続フルセットで突破した錦織は、準決勝でジョコビッチと対戦する 【写真:ロイター/アフロ】

 ここまで4試合のワウリンカの試合時間は計7時間52分で錦織は9時間19分。互いに疲れもあっただろう、第4セットは粛々とサービスをキープしあって二度目のタイブレークに入った。錦織がサーブの5−5から、リターンをダウンザラインに切り替えようとしたバックハンドが力負けしてミニブレークを与え、そのままこのセットを落とした。

「ラオニッチ戦よりもラリーが多く苦労しましたが、十分に打てていたので、第4セットのタイブレークはすぐに忘れようと思いました。諦めずに最後までやれているのが、これまでとの違いかと思います」

 体力的には見劣りのする錦織だが、通算で9勝2敗、今シーズンは3戦負けなしと、5セットマッチには強く、均衡状況から最後の1本を捻り出すエネルギーを秘めている。ファイナルセットでも第3ゲームの15−40からの危機を切り抜けると、5−4で迎えた第10ゲーム、ワウリンカのダブルフォルトを生かし、2本目のマッチポイントで勝利をもぎ取った。

 足の手術から、出場することすら不確実で迎えたこの大会だっただけに、連続フルセットで初のベスト4は驚きだろう。

「痛みはないし、体の堅さも1日の休みで取れた。決勝まで進みたいですね」

 夢は目前に迫ってきた。

クルム伊達はダブルスでキャリア初の快挙

 これに先立つ女子ダブルスではクルム伊達公子(エステティックTBC)とバーバラ・ザラボバ=ストリコバ(チェコ)のペアが準決勝進出を決めていた。クルム伊達のグランドスラムでのベスト4進出は、単複を通じて復帰後では初めて、ダブルスではキャリア初の快挙となった。

 女子シングルス準々決勝はエカテリーナ・マカロワ(ロシア)がビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)を倒してシングルスではグランドスラム初の4強進出。準決勝で第1シードのセリーナ・ウィリアムズ(米国)と決勝への切符を争うこととなった。

(文:武田薫)
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