2020東京招致成功から1年を振り返る 東京五輪・パラリンピックの準備は今

高樹ミナ

1年前の2013年9月7日、アルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれたIOC総会で、東京が2020年オリンピック・パラリンピックの開催都市に選ばれた 【写真:代表撮影/ロイター/アフロ】

 1年前の2013年9月7日、アルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれた第125次国際オリンピック委員会(IOC)総会で、東京が2020年オリンピック・パラリンピックの開催都市に選ばれた。前回16年招致から足かけ7年の悲願成就。緊迫した会場におもむろに響いた、ジャック・ロゲ前IOC会長の「トウキョウ」の声。真っ白なカードに書かれた「TOKYO 2020」の文字。招致関係者と日本中のサポーターの喜びが一挙に爆発した歴史的瞬間だった。
 東京が、日本が歓喜に沸いたあの日から1年。6年後の大会本番に向けた準備はどのように進められているのか、東京招致成功後の主な足跡を振り返ってみたい。

東京都、組織委員会、国の3本柱で準備が進行

組織委員会の主な業務は基本計画の策定、仮設競技場の整備など 【写真:アフロスポーツ】

 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催準備は東京都と組織委員会、国の3本柱で進められている。主体となるのは開催都市の東京都で、大きな役割は新設・改修される競技会場(国立競技場を除く)の施設整備だ。一方、14年1月に発足した「東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会」(以下、組織委員会)は大会運営全般を担い、当面は15年2月までにIOCに提出する「大会開催基本計画」の策定と仮設競技場の整備が主な仕事となる。さらにその先にはチケット販売、警備、公式ポスターやマスコットの決定なども行う。

 組織は重要方針を決める理事会、理事を選任する評議会、そして実働部隊の事務局で構成され、組織委員会会長には森喜朗元内閣総理大臣、事務局を統括する事務総長に元財務次官の武藤敏郎氏、副事務総長に文部科学省出身の布村幸彦氏が就任。政府主導型が色濃い編成となったが、理事には女性メダリストや障害者アスリート、財界人や文化人らも起用され、34人のうち7人が女性となっている。

 現在の組織委員会は約100人体制。東京都や日本オリンピック委員会(JOC)、省庁、企業などの出向者が中心だ。最終的には3000人規模に膨らむ見通しで、特に16年のリオデジャネイロオリンピック・パラリンピック後に人員増加が加速すると見られている。

東京都が競技施設計画見直しへ

東京都では競技会場の整備費が招致段階で見込んだ金額の2倍以上にあたる約3800億円に膨れ上がるとの試算から、整備費の圧縮を検討、計画は見直しへ 【写真:アフロスポーツ】

 14年2〜3月のソチ冬季オリンピック・パラリンピックが終わると、4月2〜4日には東京大会の監督役であるIOC調整委員会が来日。「第1回IOC/東京2020プロジェクトレビュー」と呼ばれる会議が開かれ、プレゼンテーションや会場視察などを通じて、調整委員会委員長のジョン・コーツIOC副会長らに大会の準備状況が報告された。このときの評価はおおむね合格。しかしこの頃、東京都では競技会場の整備費が招致段階で見込んだ金額の2倍以上にあたる約3800億円に膨れ上がるとの試算から、整備費の圧縮を検討し始めた。そして6月17日、競技場3施設の計画見直しを表明。バスケットボールとバドミントン会場の「夢の島ユース・プラザ」(江東区)、カヌー・スプリントやボート会場の「海の森水上競技場」(東京湾中央防波堤内)、カヌー・スラローム会場の「葛西臨海公園」(江戸川区)を対象とし、地盤の弱さや建設コストの膨張、環境破壊などを理由に各国際競技連盟(IF)に代替案を伝えることとなった。

 計画見直しについては、6月25〜27日に再来日したIOC調整委員会にも説明され、IOC側は「IFの了解を取り付けること」を条件に一定の理解を示した。招致段階の計画、つまり立候補ファイルははたしてどこまで変更できるものなのか。それは近年のオリンピック・パラリンピック開催にかかる膨大なコストと大会後の施設活用の観点から考えるといいだろう。04年アテネ大会、08年北京大会で使われた競技施設は後利用がうまくいかず、その多くが無用の長物と化した。日本人にも1998年長野冬季大会の教訓が残る。そうした過去の反省から、12年に大成功を収めたロンドン大会でも基本計画策定時に施設計画が見直されている。

 IOCも「持続性とレガシー(遺産)」を重視する方針を打ち出し、新会長のトーマス・バッハ氏も計画見直しに柔軟な姿勢を見せる。反発もやむを得ないIF側もこれに同調するように理解を示しており、今後11月頃までを目処に調整が進められる模様。なお施設計画の見直しはほかにも、セーリング会場の「若洲オリンピックマリーナ」(江東区)やホッケー会場の「大井ホッケー競技場」(品川区)、あるいは組織委員会が担当する仮設の自転車トラック・レース会場「有明ベロドローム」や水球会場の「ウオーターポロアリーナ」(ともに江東区)などが対象にあがっている。

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著者プロフィール

スポーツライター。千葉県出身。 アナウンサーからライターに転身。競馬、F1、プロ野球を経て、00年シドニー、04年アテネ、08年北京、10年バンクーバー冬季、16年リオ大会を取材。「16年東京五輪・パラリンピック招致委員会」在籍の経験も生かし、五輪・パラリンピックの意義と魅力を伝える。五輪競技は主に卓球、パラ競技は車いすテニス、陸上(主に義足種目)、トライアスロン等をカバー。執筆活動のほかTV、ラジオ、講演、シンポジウム等にも出演する。最新刊『転んでも、大丈夫』(臼井二美男著/ポプラ社)監修他。

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