UFCデビュー戦勝利の佐々木憂流迦に直撃「夢は王者…っていうか実現させます」

長谷川亮

UFCデビュー戦を一本勝ちで飾った佐々木憂流迦に直撃インタビュー 【スポーツナビ】

 8月23日に行われたUFCマカオ大会でUFCデビューを果たした佐々木憂流迦は、1R1分06秒、ロラーンド・デロームに得意のチョークスリーパーで一本勝ち。秒殺に加え、見事なKO・一本に贈られるパフォーマンス・ボーナスも獲得し順調な出足を切った。早くも年内に第2戦を見据える憂流迦(※うるか/サンスクリット語「天狗」を意味する)を都内でキャッチし、UFCデビューの裏側、そして今後を聞いた。

舞台が変わっても別にやることは一緒

急なオファーにも万全のコンディションでオクタゴンへ 【t.SAKUMA】

――快勝でのUFCデビューおめでとうございます。

 ありがとうございます。結構急なオファーで、自分的には11月ぐらいにやりたかったんですけど、向こうからもマカオいいよって勧められていたので、じゃあやるかって(笑)。最初はカン・ギョンホ(※9月20日の日本大会で田中路教と対戦)でのオファーで、そこで考えてオッケーを出した時には相手が変わっていて、ローランド・デロームっていう感じでした。

――試合まで時間がない中でのオファーでも躊躇(ちゅうちょ)するところはなかったですか?

 なかったですね。舞台が変わっても別にやることは一緒だと思って。俺、酒も飲まないし、普段から体はバッチリ作っているのでいつでも行けます。体重の調整も今回は長期でやってすごく調子がいいです。あんまり今もバックしていなくて、長期は結構いいなと思いました。オファーも1カ月ぐらい前なら大丈夫かな。行けますね。

――憂流迦選手は通常体重は何kgあるんですか?

 節制しないと72〜73kgぐらいあります。でも今は全然なくて、67ないぐらいです。なので1カ月あれば。2週間前でもやれないことはないです。

――試合前は地元・沼津から東京へ拠点を移して練習していたと聞きました。

 予定では本当は11月に行きたかったので、2カ月マンスリーの物件を借りたんです。それで2カ月はスパーリングを結構みっちりやろうと思っていたんですけど、いきなり決まって1カ月しかいなかったので、あとの1カ月は家賃を無駄に払いました(笑)。急に決まって、調整はやっぱり沼津でやりたかったので、UFCの経費で落としてほしいです(笑)。

――それがボーナスに含まれていたと考えましょう(笑)。でも、事前の練習は東京で積んでも直前の調整はやはり沼津の方がいいですか?

 そうですね。やっぱり移動もなくそこだけでできるので。実家もあって何より落ち着くんです。なので調整はやっぱり沼津の方がいいです。

――これから戦いの場がUFCとなっていきますが、今後もそういったやり方で?

 そうですね、アメリカであれ東京であれキャンプを張って、1カ月前に戻って調整するっていうスタンスになると思います。今は9月からまた賃貸を借りて東京で練習して、11月にまた試合を予定しているので、10月の終わりぐらいにまた沼津へ帰ってやろうかと思ってます。それであと1、2勝したらアメリカでキャンプを張って、っていう形になっていくと思います。

天狗はお預け…バタバタの初オクタゴン

トレードマークの「天狗の面」での入場は第2戦にお預け 【t.SAKUMA】

――今日は目が充血していますが、試合でのダメージによるものでしょうか。

 これは違うんです、コンタクトを付けたまま寝てしまって(笑)。試合でのダメージは2発目のジャブで少し上唇を切ったぐらいです。目がよくないので、吉田沙保里さんが矯正したオサートっていうコンタクトレンズをやろうかと思っています。

――寝ている間に着用することで視力が矯正されるというものですね。


 パフォーマンス・ボーナスが入ったので(笑)、それをやろうかと思っています。

――今回試合を放送で観ていたら、CM明けで急にオクタゴンに入っていましたが、あれはどういうことだったのですか?

 あれは自分もビックリしたんですけど、時間が押し過ぎていて「お前は入場はない」って言われて(苦笑)。ワセリンも裏で塗られて、天狗の面もワセリンを縫ってるからダメじゃないですか。セコンド陣と「行ってきます」ってやろうと思ったら、それもダメだって言われてハグもできず(苦笑)。だから計量ではやったんですけど、天狗面での入場はお預けになっちゃいました。だから次ですね。今回天狗の面はお客さんにあげちゃったので、また新しいのを買います。

――長く使って愛着のあるものだったのではないですか?

 結構使っていました。ガイ・デルモ戦(2011年9月)まで使っていて、ガイ・デルモに負けて「これは呪われてる」と思って捨てて、また買ってからのやつでした(※この試合以後、憂流迦は現在まで11連勝を記録している)。面はネットで買ってます(笑)。

試合後は初めて朝まで興奮して寝られなかった

現UFCバンタム級チャンピオン、TJ・ディラショーとの練習で手応え 【スポーツナビ】

――バタバタの中でのUFCデビュー戦となりましたが、これまでの日本での試合と何か違いはありませんでしたか?

 ないですね。何もなかったです。試合に行くまでがすごいストレスフリーです。UFCが全てエスコートしてくれるので、本当に仕事ですね。試合をするのが仕事で、他は何も気にしなくていい。後は海外マネージャーがやってくれるし、すごいラクですよね、その部分は。

――海外だとむしろ試合までのストレスが増すのではないかと思いました。

 ないですね。海外もちょいちょい行かせてもらっていたので、行くことに関しては全然苦じゃなくて、アメリカに行った時は時差がすごいあったので大丈夫かなと思ったんですけど、マカオはそんなことなかったのですごく快適でした。

――では今後やっていくにあたり、初UFCの感触は良かったと。

 そうですね、すごくいい、本当にベストな環境だと思います。久しぶりに試合の後興奮して寝られませんでした。初めて朝ぐらいまで寝られなくて。お客さんの反応だとか、多分それぐらいうれしかったんですよね。終わってから早く帰りたかったからホテルの抜け道みたいなところを行っていたんですけど、そうしたら「ピクチャープリーズ」って言われて日本のノリで「OK、OK」なんて言って撮っていたら、どんどん集まってきちゃって(笑)。

――きっと勝ちっぷりが良かったのもあったんでしょうね。

「ビースト、ビースト」って言われたので、「違う、天狗だ!」って言って(笑)。でも何にも伝わらなかったですね(笑)。赤髪でああいう動きをしてたから、みんな「ビースト、ビースト」って(苦笑)。でも天狗はキャラクターとして行きたいし、(将来UFCの)ゲームであれで入場できるように。そこは強調したかったので、計量会場か髪もちゃんと赤く、天狗カラーにしてやりました。

――まずは第1戦を見事な形で飾り、今後も期待しています。

 UFCの舞台を選んだのでUFCのチャンピオンを目指しているんですけど、正直いま上位陣とやっても通用するかっていうのはちょっと自分でも信じ切れてない部分があるので、やっぱり段階を踏みたいです。なのでローランド・デロームとか、俺ぐらいのレベルの選手とあと1、2試合やってからランキングの選手とやりたいと思ってます。夢は、夢っていうか実現させますけど、UFCのチャンピオンです。

 アルファメール(※軽量級の強豪が揃うアメリカのチーム)へ行った時TJ・ディラショー(現UFCバンタム級チャンピオン)と練習して、1回目はすっごいぶっ飛ばされたんです。こんなにやられるのか、絶対通用しないなと思ったんですけど、2回目の練習の時は結構食らいつけていけたんです。でも、あれがランキングのレベルなんだなと思っていたらチャンピオンになったので、ちょっと安心してよかったと思って(笑)。ただ、そうやってやられたのはディラショーだけで、食らいついていけるなっていう気持ちは持てたので、だから段階を踏んでいけば絶対行けると思うので楽しみです。もう奇抜なことばっかりやるので楽しみにしていてください。
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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