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成功でも失敗でもないドルトムント復帰
輝きを取り戻すため、香川はまた歩き出す

歓迎されたドルトムントへの復帰

マンチェスター・ユナイテッドから2年ぶりに古巣ドルトムントへと復帰した香川
マンチェスター・ユナイテッドから2年ぶりに古巣ドルトムントへと復帰した香川【写真:アフロ】

 8月31日、ボルシア・ドルトムントは公式ホームページで正式に香川真司の復帰を発表。背番号は7に決まり、笑顔で黄色のユニホームを手に持つ香川の写真が添えられていた。ファンは喜び、ツイッターやフェイスブック上では復帰を歓迎するコメントがあふれかえっていた。あるドルトムントファンは「夜になって眠り、朝が来て起きた。シンジが帰ってくるというニュースはまだあった。夢ではなかったんだ」と喜びのツイートをしていた。


 代表取締役社長ハンス・ヨアヒム・バッツケは1年前に「ドルトムントでは香川のための扉はいつでも開かれている」と語っており、これまでにも何度か復帰話のうわさはあったが、具体的な話が出たことはなかった。しかし今回は香川サイドにも移籍の意思が出たこともあり、チームマネージャーのミヒャエル・ツォルクは「数日前に初めて香川真司の移籍を現実化する可能性が出てきた。もちろん我々としては彼の強烈なクオリティーを勝ち取る決断をした」と積極的に交渉に動き出した。


 移籍話がドイツメディアで頻繁に流れる数日前、『ルールナッハリヒテン』紙によると僚友ケビン・グロースクロイツはイングランドの香川のもとへ電話をかけていたという。ドルトムント時代に思い出深い関係を築いていた友人からの連絡は少なからず香川の心にも響いたことだろう。正式に契約がかわされるとクラブの公式ホームページ上で「またドルトムントに戻ってこれてうれしい。素晴らしいチームと素晴らしい環境と素晴らしいファン。ドルトムントは家族のようなもの。僕のことを忘れずにいてくれて、またその仲間入りできることを誇りに思う」と喜んでいた。


 そんな香川が復帰したドルトムントではどのような化学反応が見られるのだろうか。そのためにまずはチームの現状を考えてみたい。

まだどこか本調子ではないドルトムント

 シーズン開幕前に行われたスーパーカップではバイエルン・ミュンヘンを2−0で下し、今季に向けた意気込みを最高の形でアピールした。しかしリーグが始まると開幕ではバイヤー・レバークーゼンに0−2で敗れ、第2節アウグスブルク戦では3−0とリードしながら残り8分で2点を返されるなど、まだどこかしっくりしていない。


 今シーズンに向けて一番のテーマは、バイエルン移籍のポーランド代表FWロベルト・レバンドフスキが抜けた穴をどう埋めるかであり、補強ポイントはまず計算できるセンターFWの獲得だった。昨シーズン、トリノでセリエA得点王に輝いたイタリア代表チーロ・インモービレ、ヘルタ・ベルリンでゴールを量産したコロンビア代表アドリアン・ラモスが加わったが、前所属チームでの活躍をそのままあてにできるわけではない。昨シーズン加入したヘンリク・ムヒタリアン、ピエール・エリック・オーバメヤンも前評判は非常に高かったが、結局1年間ではドルトムントのサッカーになじみ切ることができなかった。


 選手は新しいコンセプトを意識し過ぎると最適な判断がしづらくなる。「自分で勝負するよりもパスをした方がいいんじゃないか」「トラップせずにダイレクトでパスしなければならないんじゃないか」とやらなければならないと思うことばかりに意識が向き、他の可能性を探る目を閉ざしてしまう。ましてドルトムントのハイプレス・ハイスピードサッカーでは最大限の集中力と判断力と決断力が要求される。確かに2シーズン目を迎えたムヒタリアンとオーバメヤンがようやくちゅうちょすることなくプレーに関与できるようになってきた点は好材料ではある。しかしドルトムントが失ったのは、世界でも有数のFWであるレバンドフスキだ。ただでさえ1対1で補うことが難しい選手の穴を、まだなじんでいない選手でカバーするのは簡単なことではない。ユルゲン・クロップ監督は攻撃陣の組み合わせをマイナーチェンジする必要があり、そのための最適な答えはまだ見つかっていない。

中野吉之伴
1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで経験を積みながら、2009年7月にドイツサッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU15チームで研修を積み、016/17シーズンからドイツU15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。

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