成功でも失敗でもないドルトムント復帰 輝きを取り戻す為、香川はまた歩き出す
歓迎されたドルトムントへの復帰
マンチェスター・ユナイテッドから2年ぶりに古巣ドルトムントへと復帰した香川 【写真:アフロ】
代表取締役社長ハンス・ヨアヒム・バッツケは1年前に「ドルトムントでは香川のための扉はいつでも開かれている」と語っており、これまでにも何度か復帰話のうわさはあったが、具体的な話が出たことはなかった。しかし今回は香川サイドにも移籍の意思が出たこともあり、チームマネージャーのミヒャエル・ツォルクは「数日前に初めて香川真司の移籍を現実化する可能性が出てきた。もちろん我々としては彼の強烈なクオリティーを勝ち取る決断をした」と積極的に交渉に動き出した。
移籍話がドイツメディアで頻繁に流れる数日前、『ルールナッハリヒテン』紙によると僚友ケビン・グロースクロイツはイングランドの香川のもとへ電話をかけていたという。ドルトムント時代に思い出深い関係を築いていた友人からの連絡は少なからず香川の心にも響いたことだろう。正式に契約がかわされるとクラブの公式ホームページ上で「またドルトムントに戻ってこれてうれしい。素晴らしいチームと素晴らしい環境と素晴らしいファン。ドルトムントは家族のようなもの。僕のことを忘れずにいてくれて、またその仲間入りできることを誇りに思う」と喜んでいた。
そんな香川が復帰したドルトムントではどのような化学反応が見られるのだろうか。そのためにまずはチームの現状を考えてみたい。
まだどこか本調子ではないドルトムント
今シーズンに向けて一番のテーマは、バイエルン移籍のポーランド代表FWロベルト・レバンドフスキが抜けた穴をどう埋めるかであり、補強ポイントはまず計算できるセンターFWの獲得だった。昨シーズン、トリノでセリエA得点王に輝いたイタリア代表チーロ・インモービレ、ヘルタ・ベルリンでゴールを量産したコロンビア代表アドリアン・ラモスが加わったが、前所属チームでの活躍をそのままあてにできるわけではない。昨シーズン加入したヘンリク・ムヒタリアン、ピエール・エリック・オーバメヤンも前評判は非常に高かったが、結局1年間ではドルトムントのサッカーになじみ切ることができなかった。
選手は新しいコンセプトを意識し過ぎると最適な判断がしづらくなる。「自分で勝負するよりもパスをした方がいいんじゃないか」「トラップせずにダイレクトでパスしなければならないんじゃないか」とやらなければならないと思うことばかりに意識が向き、他の可能性を探る目を閉ざしてしまう。ましてドルトムントのハイプレス・ハイスピードサッカーでは最大限の集中力と判断力と決断力が要求される。確かに2シーズン目を迎えたムヒタリアンとオーバメヤンがようやくちゅうちょすることなくプレーに関与できるようになってきた点は好材料ではある。しかしドルトムントが失ったのは、世界でも有数のFWであるレバンドフスキだ。ただでさえ1対1で補うことが難しい選手の穴を、まだなじんでいない選手でカバーするのは簡単なことではない。ユルゲン・クロップ監督は攻撃陣の組み合わせをマイナーチェンジする必要があり、そのための最適な答えはまだ見つかっていない。