代表サプライズ選出、皆川佑介の価値 広島の希望から日本の大黒柱へ

中野和也

目指す部分が重なる大迫のスタイル

リーグ初得点は右足でのバイシクル。ヘディングだけではなく、右足の破壊力も武器となる 【写真は共同】

 皆川は今や、広島の希望である。ポストプレーだけでなく力強いドリブルでボールを運べるし、豊富な運動量と的確な位置取りで守備にも貢献できる。リーグ初得点(第16節柏レイソル戦)が強烈な右足バイシクルだったように、高さのあるヘッドだけでなく右足の破壊力もインパクト大だ。

 もちろん、周囲の評価も高い。森保一監督は「皆川は得点もアシストもできる。攻撃の起点にもなれるし、守備でも身体を張ってくれる。すべてにおいてチームに貢献しようとしてくれる気持ちが伝わってくる」と信頼を口にした。サガン鳥栖戦で皆川のゴールをアシストした柏好文は「ミナは広島の武器」と言い切り、水本も「苦しい時間帯でもミナに預ければボールを収めてくれるし、時間もつくれる。後ろの選手としては本当に助かります」と称賛を惜しまない。実際、再開以降における広島の総得点は13点だが、そのうち皆川が絡んだゴールは6点。第17節の鹿島アントラーズ戦以降は、彼が絡まないとゴールにならないという状況にすら陥っている。広島の攻撃そのものがうまくいっていない中で、彼の3得点3アシストという活躍が、どれほどサポーターの気持ちを癒やしているか。

「日本代表では、誰のプレーを見てみたい?」という問いに対し、「大迫勇也選手(ケルン)です」と即答。実は大迫とは前橋育英高2年の時に、高校選手権の準決勝で対戦している。結果は5−3で大迫擁する鹿児島城西高の勝利。皆川も美しいループシュートを決めているが、同点弾を決めた大迫の圧倒的な破壊力を目の当たりにして「別格だ。半端ない」と感じていた。大迫が持つ万能型のスタイルは、皆川にとっても目指す部分が重なる。もちろん、4−3−3と言われるアギーレ監督のフォーメーションを考えればセンターFWの位置を争うライバルとなるが「学べるところは貪欲に学ぶ」という姿勢こそ、皆川を成長させてきたエネルギーとなっている。

サッカー人生はまだ始まったばかり

 課題は、まだまだ多い。ポストプレーの質にしてもボールを自在に止める形にはなっていないし、落としだけでなく自ら反転してゴールに向かうプレーも、彼ならばできるはずだ。森保監督も「まだまだ、彼のポテンシャルはこんなものではないし、もっと高みを求めたい」とした上で、代表入り後のあるべき姿についても言及した。

「自分がどういうプレーを評価されて代表入りしたのかを理解してほしい。彼の特長は、ハングリーで泥くさいプレーができること。代表入りしたことで注目されると『きれいな、魅せるプレーを』と考えてしまうものですが、ミナのストロングポイントはそこではない。自分の特長を見失わないことです」

 自らもハンス・オフト監督の大抜てきによって代表入りした経験を持つだけに、森保監督の言葉は重い。つまりは、彼のサッカー人生はまだ始まったばかりだということ。しっかりと自分を見つめ続け、真摯な努力を重ねれば日本代表の大黒柱になり得るポテンシャルを持つ。それができなければ、一瞬の花火となってしまうだけ。大規模土砂災害で苦しむ広島の街に明るい灯火(ともしび)をともした皆川佑介の価値が、本物かどうか。もう少し時間をかけて、じっくりと見つめる必要がある。半年間、彼の真摯な人間性にずっと触れてきた筆者としては「本物だと思う。そうあってほしい」と強く強く、思っているのだが。

2/2ページ

著者プロフィール

1962年生まれ。長崎県出身。広島大学経済学部卒業後、株式会社リクルートで各種情報誌の制作・編集に関わる。1994年よりフリー、1995年よりサンフレッチェ広島の取材を開始。以降、各種媒体でサンフレッチェ広島に関するリポート・コラムなどを執筆。2000年、サンフレッチェ広島オフィシャルマガジン『紫熊倶楽部』を創刊。近著に『戦う、勝つ、生きる 4年で3度のJ制覇。サンフレッチェ広島、奇跡の真相』(ソル・メディア)

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント