錦織、「期待薄」でも6年ぶりの16強=全米オープンテニス
ストレート勝ちで3回戦突破を果たした錦織。6年ぶりの16強進出は「期待薄」の中で楽に大会に入れたことが大きい 【Getty Images】
「自信が積み重なってブランクを感じない」
試合後に放った言葉も頼もしい。
「いい感じで来ています。1試合1試合、自信が積み重なってブランクを感じない。素直にうれしいですね」
レシーブを選択して始まった第1セット、第1、第3ゲームで計4本のブレークポイントを握ったが生かせなかった。それでも冷静だ。風も強く、ファーストサーブの入りは良くなかったが(46%)、セカンドサーブをうまく散らし、ここから73%のポイント獲得率でチャンスを待った。相手のメイヤーは時速200キロ台のサービスを随所に織り交ぜ、ランキングに相応しい幅広いラリー戦を展開した。しかし、この日の錦織は特に動きがいい。ショットの角度、切れ味を比較すればかなり格上。3−3で迎えた第7ゲーム、フォアハンドのリターンエース、フォアのパッシングショットを続けて、サービスブレーク。1度だけのブレークではあったが、安定したプレーを印象に残して第1セットを奪った。
楽に大会に入れたことが相乗効果を生んだ
第2セット、いきなり第1ゲームをブレークして流れをつなげた。メイヤーもギアを上げてきたが、錦織はリズムをとらえて追いこんでいく。第6ゲームのサービスゲームでの0−40のピンチにも、しっかりボールをとらえ、久々の“エアケイ”を決めると、バックハンドのクロス、ドロップショットと多彩な攻めで5ポイント連続で奪って窮地を脱すると、第7ゲームでリターンエースを飛ばしてダメ押しのブレーク。恐らく、ここで相手の戦意をかなり奪うことに成功しただろう。
余裕で入った第3セット、わずかな不安を抱かせた。錦織は、8月初めのワシントン(シティ・オープン)の準々決勝から実戦を踏んでいない。ましてグランドスラムは5セットマッチだけに、もうひとつの気がかりは体力の面。この日は日差しこそ強かったが気温は25度前後で、2セット終了時点で試合時間は1時間9分。体力の消耗はそれほどでもなかったはずだが、第3セットにやや集中力の分断が見られた。
自分がサーブの第2ゲーム。40−15からデュースに持ち込まれて初めてサービスブレークを許した。ただ、そこからのメイヤーが甘かった。第5ゲームに2本のダブルフォルトでブレークバック。錦織はこれをきっかけに6ゲーム連取でストレート勝利をもぎ取った。
4回戦の相手は宿敵・ラオニッチ
次の対戦相手は、すっかり宿敵となったミロシュ・ラオニッチ(カナダ)。ラオニッチは錦織と同じ時刻に、ドミニカ共和国出身の異色の34歳、ビクター・エストレヤと対戦し、大観衆を向こうに回しながら7−6、7−6、7−6で勝ち進んだ。ウィンブルドンでは強烈なサーブに完ぺきにやられてしまったが、錦織の学習能力は高い。勝機は十分にある。
その他の日本勢ではダブルスに出場した土居美咲(ミキハウス)は2回戦敗退。結果こそ残せなかったが、土居はツアーの水にも慣れ、かたさが取れてきた。これからが楽しみだ。
女子シングルスではウィンブルドンの優勝者で第3シードのペトラ・クビトバ(チェコ)が世界ランク145位で予選上がりのアレクサンドラ・クルニッチ(セルビア)にストレートで敗れる波乱があった。
その他ではセリーナ・ウィリアムズ(米国)、ユージェニー・ブシャール(カナダ)、ビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)らが順当勝ち。男子ではノバック・ジョコビッチ(セルビア)、スタン・ワウリンカ(スイス)、アンディ・マレー(スコットランド)、ジョー・ウィルフリード・ツォンガ(フランス)が勝った一方、地元米国の第13シード、ビッグ・サーバーのジョン・イスナーは、フィリップ・コールシュライバー(ドイツ)に敗れた。
(文:武田薫)
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ