錦織、「期待薄」でも6年ぶりの16強=全米オープンテニス

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ストレート勝ちで3回戦突破を果たした錦織。6年ぶりの16強進出は「期待薄」の中で楽に大会に入れたことが大きい 【Getty Images】

 予想外と言いえばその通りだが、案外、こんなものかもしれない。現地時間30日、全米オープンテニス(米国・ニューヨーク)6日目が行われ、第10シードの錦織圭(日清食品)は、レオナルド・メイヤー(アルゼンチン)に6−4、6−2、6−3のストレートで勝利し、全米オープンとしては6年ぶりとなる4回戦進出を決めた。

「自信が積み重なってブランクを感じない」

 8月に入って足の親指という、テニスプレーヤーにとって実に微妙な箇所を手術。抜糸して1週間、十分な練習時間もないままに迎えた大会だった。2回戦で相手の途中棄権という幸運もあったが、この日の3回戦では、世界ランク26位のメイヤーを完ぺきに仕留めた。

 試合後に放った言葉も頼もしい。
「いい感じで来ています。1試合1試合、自信が積み重なってブランクを感じない。素直にうれしいですね」

 レシーブを選択して始まった第1セット、第1、第3ゲームで計4本のブレークポイントを握ったが生かせなかった。それでも冷静だ。風も強く、ファーストサーブの入りは良くなかったが(46%)、セカンドサーブをうまく散らし、ここから73%のポイント獲得率でチャンスを待った。相手のメイヤーは時速200キロ台のサービスを随所に織り交ぜ、ランキングに相応しい幅広いラリー戦を展開した。しかし、この日の錦織は特に動きがいい。ショットの角度、切れ味を比較すればかなり格上。3−3で迎えた第7ゲーム、フォアハンドのリターンエース、フォアのパッシングショットを続けて、サービスブレーク。1度だけのブレークではあったが、安定したプレーを印象に残して第1セットを奪った。

楽に大会に入れたことが相乗効果を生んだ

 相手が最も格下だった1回戦が不安だったという。それだけ暗中模索の立ち上がりだったわけだが、意外に動けたことに加え、気持ちの上で大きな期待をかけず楽に入ったこととの相乗効果もあったのではないか。病み上がりの今回だけは、周りの期待がまったくと言っていいほどなかった。

 第2セット、いきなり第1ゲームをブレークして流れをつなげた。メイヤーもギアを上げてきたが、錦織はリズムをとらえて追いこんでいく。第6ゲームのサービスゲームでの0−40のピンチにも、しっかりボールをとらえ、久々の“エアケイ”を決めると、バックハンドのクロス、ドロップショットと多彩な攻めで5ポイント連続で奪って窮地を脱すると、第7ゲームでリターンエースを飛ばしてダメ押しのブレーク。恐らく、ここで相手の戦意をかなり奪うことに成功しただろう。

 余裕で入った第3セット、わずかな不安を抱かせた。錦織は、8月初めのワシントン(シティ・オープン)の準々決勝から実戦を踏んでいない。ましてグランドスラムは5セットマッチだけに、もうひとつの気がかりは体力の面。この日は日差しこそ強かったが気温は25度前後で、2セット終了時点で試合時間は1時間9分。体力の消耗はそれほどでもなかったはずだが、第3セットにやや集中力の分断が見られた。

 自分がサーブの第2ゲーム。40−15からデュースに持ち込まれて初めてサービスブレークを許した。ただ、そこからのメイヤーが甘かった。第5ゲームに2本のダブルフォルトでブレークバック。錦織はこれをきっかけに6ゲーム連取でストレート勝利をもぎ取った。

4回戦の相手は宿敵・ラオニッチ

 大会2週目に入ると相手のレベルも上がり、わずかなスキを逃すことはない。

 次の対戦相手は、すっかり宿敵となったミロシュ・ラオニッチ(カナダ)。ラオニッチは錦織と同じ時刻に、ドミニカ共和国出身の異色の34歳、ビクター・エストレヤと対戦し、大観衆を向こうに回しながら7−6、7−6、7−6で勝ち進んだ。ウィンブルドンでは強烈なサーブに完ぺきにやられてしまったが、錦織の学習能力は高い。勝機は十分にある。

 その他の日本勢ではダブルスに出場した土居美咲(ミキハウス)は2回戦敗退。結果こそ残せなかったが、土居はツアーの水にも慣れ、かたさが取れてきた。これからが楽しみだ。

 女子シングルスではウィンブルドンの優勝者で第3シードのペトラ・クビトバ(チェコ)が世界ランク145位で予選上がりのアレクサンドラ・クルニッチ(セルビア)にストレートで敗れる波乱があった。

 その他ではセリーナ・ウィリアムズ(米国)、ユージェニー・ブシャール(カナダ)、ビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)らが順当勝ち。男子ではノバック・ジョコビッチ(セルビア)、スタン・ワウリンカ(スイス)、アンディ・マレー(スコットランド)、ジョー・ウィルフリード・ツォンガ(フランス)が勝った一方、地元米国の第13シード、ビッグ・サーバーのジョン・イスナーは、フィリップ・コールシュライバー(ドイツ)に敗れた。

(文:武田薫)
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