八重樫東との大一番に挑むロマゴンの強さ=39戦無敗の軽量級最強ボクサーとは!?
「9月5日は戦争をお見せする」
3階級制覇をかけて八重樫の持つWBC世界フライ級王座に挑むローマン・ゴンサレス 【船橋真二郎】
8月25日、プロモート契約を結んでいる帝拳ジムで行われた公開練習時の記者会見。八重樫東(大橋)のWBC世界フライ級王座に挑戦するローマン・ゴンサレス(ニカラグア)は、この一戦の意義を問われてこう答えた。「日本の気候に慣れるため」と、本番から2週間以上も前の8月18日に来日していることからも、並々ならない意気込みの強さが伝わってくる。周到に最終調整を進めるゴンサレスは“チョコラティート”(小さなチョコレート)の愛称どおりの愛らしい笑顔を浮かべながら、こう言ったものだ。
「9月5日は試合ではなく、戦争をお見せすることになる」
日本初登場は衝撃の秒殺KO勝利
後楽園ホールをどよめきが包んだのは、ほとんど最初の攻防だった。パンチをかわしざまに叩き込まれるコンビネーションの正確さ、力強さ。じわじわとプレッシャーをかけながら、いつの間にかロープ際に追い込むステップワークの的確さ。そこからのフィニッシュがまた圧巻だった。ガードの真下から鋭く突き上げられた左アッパーが顔を跳ね上げ、その見事さを堪能する間もなく次の左フックが脇腹をえぐる。キャンバスに這いつくばった相手は悶絶し、そのまま10カウントを聞いた。要した時間はわずかに69秒。その相手がWBA世界ミニマム級4位にランクされるエリベルト・ゲホン(フィリピン)だったのだから、衝撃度はなおさら増した。世界上位ランカー同士の好カードという試合前の期待までも、ゴンサレスはあっさりと蹴散らしてしまったのだ。
V8狙う新井田に4回TKOで圧勝
強烈なデモンストレーションから10カ月後の08年9月、パシフィコ横浜で新井田の8度目の防衛戦の相手として立ちはだかったゴンサレスは4回TKO勝ちで圧勝。新井田も最後までダウンは拒否し、果敢に打ち合う意地を見せたが、その強打に鼓膜を破られ、右目の周囲は大きく腫れ上がった。だが、ゴンサレスのボクシングは決して暴力的でなく、洗練されたスキルと戦略の内にその本性を潜ませている。若さの勢いではなく、すでにほとんど完成されたボクシングスタイルで世界のベルトを初めて手にした21歳には、末恐ろしさしか感じられなかった。
23歳で2階級制覇を達成し、WBA世界ライトフライ級王者として、5度の防衛にも成功。現在に至るまで39戦39勝33KOと、誰にもその牙城を崩させていない。アマチュア時代も全勝というのが一般的だが、1敗しているという説もある。いずれにしても、その強さが色褪せるものではないだろう。