錦織圭、100%復調でさらに深まる自信=全米オープンテニス
錦織のショットに本来のスピードが復活
コンディションは完全に戻ったという錦織が3回戦進出を決めた 【写真は共同】
右足親指の故障明け初戦となったウェイン・オデスニック(米国)戦で、自信が戻ったのだろう。この日は、最初から気持ちの乗り移ったショットでリズムよく打ち合い、得意のストロークを左右に操って主導権を奪った。第1セットは、第9ゲームまで互いにサービスキープ。そうはいっても、ウイナー数が錦織15に対しアンドゥーハルは7本、流れは完全に錦織のものだ。相手サーブの第10ゲーム、錦織はラリー戦で一気にギアを上げると、フォアハンドのクロスを3本通してあっさりサービスブレークし、先手を奪った。
錦織が放つショットの1本、1本に本来のスピードが乗り、両サイド際に角度をつけた打球を散らす。動き回っているのはアンドゥーハルばかりと、まるでこまを操るようなラケットさばきが戻った。
第2セットに入ると、その自在な手綱さばきに、さらに磨きがかかる。この日はサービスも順調で、第2セットには3本のエースをたたき込み、セカンドサーブからのポイント率も80%。第4ゲームは、2度目のデュースから矢のようなバックハンドのパッシングショットがクロスに。その直後、バックハンドでダメ押ししてブレークした。
「1時間で終わってラッキーでした」
「サーブはもっといいはずなのに、最初からファーストサーブを打ってこなかった。作戦的なことがあるのかと思っていました。急に終わったのには驚きました。向こうのケガも心配ですが、1時間で終わってラッキーでしたね」
アンドゥーハルは右ひじの故障を抱えていたようだが、戦意を失わせるほど錦織のプレーが冴(さ)え渡り、試合後には「100%、戻ってきている」と言い切ったほど完璧だった。試合時間は1時間3分。病み上がりからの2戦目、エネルギーはできるだけセーブしたかったところ。第1セットの打ち合いで自信がさらに深まったことも合わせて考えれば、“100%”という言葉から、いまの気持ちが伝わった。
3回戦の相手はレオナルド・メイヤー(アルゼンチン)。メイヤーはクレー巧者とはいえ7月にはベット・アット・ホーム・オープンの決勝でダビド・フェレール(スペイン)を倒して優勝している実力者。そこを突破すれば、4回戦では、今年のウィンブルドンで敗れた宿敵ミロシュ・ラオニッチ(カナダ)が待ち受けることだろう。ここまで来れば欲も出てくる。失いかけた目標が再浮上し、負けられなくなってきた。
15歳の新星・ベリスは惜敗
一方、海外勢の男子は、第1シードのノバック・ジョコビッチ(セルビア)、第5シードのラオニッチ、第8シードのアンディ・マレー(イギリス)、前哨戦のロジャーズ・マスターズでロジャー・フェデラー(スイス)を倒して優勝した第9シードのジョー・ウィルフリード・ツォンガ(フランス)が好調。ウィンブルドンでベスト8入りした19歳のニック・キルギオス(オーストラリア)や、地元の声援を受けた第13シードのジョン・イスナー(米国)も、30本のサービスエースを決めて3回戦へ。今年のセンターコートは、特に球足が速いと言われるだけに要警戒だろう。
女子では、第1シードのセリーナ・ウィリアムズ(米国)、第7シードのユージェニー・ブシャール(カナダ)らとともに、今年のウィンブルドン優勝以降、調子を崩していたペトラ・クビトバ(チェコ)、今季低迷しているビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)もしっかり勝ち上がった。
一方、第8シードのアナ・イバノビッチ(セルビア)が、チェコの新鋭・カロリナ・プリスコバに不覚を取ってストレート負け。1回戦で第12シードのドミニカ・チブルコワ(スロバキア)を倒して話題になった15歳のキャサリン・ベリス(米国)は、世界ランク48位のザリーナ・ディアス(カザフスタン)とフルセットを戦ったが惜しくも敗退。また、昨年からダブルスで復帰していたマルチナ・ヒンギス(スイス)は、フラビア・ペネッタ(イタリア)と組んでの7年ぶりのグランドスラム勝利に笑顔を見せていた。
(文:武田薫)
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