絶対王者ユベントスの序列に変化あり!? 識者が読み解くセリエAの展望
昨季はユベントスが史上最多の勝ち点を挙げて3連覇を達成した 【写真:Maurizio Borsari/アフロ】
ミラノの両雄に所属する日本人選手の活躍も期待される。昨季途中にミランに加入した本田圭佑は、チームの不調もあり、厳しい評価に終わった。しかし今季はプレシーズンから好調を維持。3試合連続でゴールを挙げるなど、フィリッポ・インザーギ新監督にアピールを続けている。昨季は本田の欠場で実現しなかったが、インテルで確固たる地位を築いている長友佑都との日本人対決にも注目が集まる。
スポーツナビでは、3人の識者にご登場いただき、今季のセリエAの展望を語ってもらいつつ、優勝チーム、チャンピオンズリーグ(CL)圏内に入るチーム(3位以内)、降格するチーム(18位以下)、そして注目選手を挙げていただいた。なお、せん越ながら編集部もこの予想に加えさせてもらっている。
片野道郎(ジャーナリスト・翻訳家)
ユベントスがレアル・マドリーから獲得した22歳のモラタは故障で出遅れている 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】
過去3シーズン、際立った強さを見せてタイトルを独占してきたユベントスが、7月半ばに電撃的な監督交代。ここまで積み上げてきたアドバンテージが一度リセットされた格好になったことで、今シーズンのスクデット争いは混戦模様になりそうな気配が漂っている。
コンテの辞任を受けてユベントスの新監督となった元ミランのアレグリは、システムを従来の3−5−2から4−3−1−2に変更するなどチームのリファイン(洗練)を進めているが、まだ道半ば。前線にレアル・マドリーから獲得した21歳のビッグタレント、アルバロ・モラタが故障で出遅れたこともあり、昨季までのような安定感を開幕から発揮するのは難しそうだ。
その一方でライバルのローマ、ナポリはともに、補強で戦力に厚みをつけている。昨季リーグ戦に専念して2位に躍進したローマは、アルゼンチンU−20代表フアン・イトゥルベを獲得して前線を強化した。今季はCLとの二正面作戦となるため、週2試合のリズムの中で取りこぼしをどう減らすかが鍵になる。その取りこぼしが原因で昨季の優勝戦線から脱落した3位ナポリは、CLのプレーオフで敗退したこともあり、スクデットに照準を合わせる。
やや不安要素の多いユベントスと、着実に力を上積みしたローマ、ナポリ。昨季抜きん出ていたこの3強を脅かす存在があるとすれば、マリオ・ゴメス、ジュゼッペ・ロッシの2トップが復活したフィオレンティーナ、2年目のワルテル・マッツァーリ監督の下で完成度を高めたインテルか。CL出場権を争うのはこの5チームまでだろう。フィリッポ・インザーギを新監督に内部昇格させたミランは、不確定要素が多くチームが固まるまで時間がかかりそうだ。
戦力的に見ると、降格候補になりそうなのは昇格組のチェゼーナ、エンポリに加えて、エラス、キエーボのベローナ勢、そしてカリアリあたりか。残留争いも上位同様、混戦が期待できそうだ。
【片野氏の予想】
優勝 :ナポリ
CL圏内:ユベントス、ローマ
降格 :チェゼーナ、エンポリ、キエーボ
注目選手:アルバロ・モラタ(ユベントス)
神尾光臣(サッカーライター)
ラツィオはフェイエノールトからブラジルW杯でオランダ代表3位入賞に貢献したデ・フライを獲得した 【写真:ロイター/アフロ】
昨季はユベントスが史上最大の勝ち点を挙げて3連覇を達成したが、今季は勢力図が入れ替わることになるかもしれない。7月、コンテが突然監督を辞任し、昨季途中までミランを指揮していたアレグリに指揮官が代わった。その状態でキープコンセプトというのはやはり難しく、就任当初「3バックを維持する」と語っていた指揮官は結局自らが手慣れた4バックにチームを変革している。ただプレシーズンでは機能不全も目立ち、形が定まらなければ前半戦は思わぬ低迷をする可能性もある。
その代わりに優勝候補として挙げるのはローマだ。昨季猛威を振るった攻撃陣には、エラス・ベローナで大活躍した高速ドリブラーであるイトゥルベを獲得した。守備ではメディ・ベナティアの慰留に失敗(バイエルン・ミュンヘンへ移籍)したものの、その後釜にはダビデ・アストリ、さらにはブラジルワールドカップ(W杯)でも評価を上げたギリシャ代表DFのコスタス・マノラスら有力な若手を獲得しており、フィットに成功すれば楽しみだ。
攻撃サッカーの質でいえばナポリも期待が高いが、上記の2チームと比較すると守備と選手層にウィークポイントを抱えている。ゴンサロ・イグアインをはじめ替えのきかない選手は主力に多く、長いシーズンを戦い抜けるかには不安が残る。特にインテルについては、ネマニャ・ヴィディッチの獲得などが守備の強化へ確実につながっており、マテオ・コバチッチやマウロ・イカルディらの若手タレントが期待通りに成長すれば上位進出も望めそう。もっとも地力では、ポゼッションサッカーが完成の域に達しつつあるフィオレンティーナも遜色はない。故障がちなジュゼッペ・ロッシがコンスタントに稼働できれば、CL出場権は2枠を4チームで争うことになりそうだ。
残留争いも、今季はドロドロの混戦になりそう。アタランタから余剰戦力を引っ張ってくる以外に補強を見せていないチェゼーナは現状どこよりも不利な立場にいるとして、動向の読めないチームはあと2、3存在する。比較的その中で戦力に乏しいところを消去法的に選んではみたが、コリーニ監督率いるキエーボの試合運びには粘りがあるし、優秀な若手がそろい戦術も固まっているエンポリは意外な躍進をする可能性も残している。あと、注目選手にはブラジルW杯でオランダ代表3位入賞に貢献したステファン・デ・フライを挙げたい。今季のラツィオは戦力も整っており、チーム共々上位をかき回すダークホースになるかもしれない。
【神尾氏の予想】
優勝 :ローマ
CL圏内:ユベントス、インテル
降格 :エンポリ、キエーボ、チェゼーナ
注目選手:ステファン・デ・フライ(ラツィオ)