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自分たちの戦い方を確立できなかった日本
国内組がW杯で感じた世界との差<前編>

強くこだわった“自分たちのサッカー”

アドリアン・ラモス(右)を倒し、PKを献上したシーン。今野(左)は「コロンビアが優勝する」と思ったくらい、差を感じたという
アドリアン・ラモス(右)を倒し、PKを献上したシーン。今野(左)は「コロンビアが優勝する」と思ったくらい、差を感じたという【写真:ロイター/アフロ】

 その日本はコートジボワールに逆転負けしたことで激しいショックを受け、チームとしての方向性を見失うことになった。


 選手全員の動揺を今野が代弁してくれた。


「4年間やってきた自分は『全員攻撃全員守備』がチームの一番のウリだと思っていた。守らなければいけない時間帯はみんなで辛抱するしかない。コートジボワール戦はそういう時間帯が長かったから、声をかけ合いながらバランスよくやればよかったけれど、外から見ていた僕には、点を取りに行かないといけないと考える前線と後ろとの距離が開いて分散されたように感じました。


 前半は引いてよく守れていたけど、ボールを取って攻めに行こうとして中盤が押し上げようとしている時にまた奪われる状況が続いた。中盤が押し上げられないんだったら、相手にぶつけてスローインを取るとか、違った工夫があってもよかった。『すべての面で相手を上回らないといけない』という意識がどこかにあったのかもしれない。


 その重要な試合に負けて、チームの共通意識にズレが出てきたのかな。やっぱり攻めなくちゃいけないって人と、もうちょっとバランスを見ようって人と、いろんな意見が出てしまった。初戦でプレスがはまらなかったので、それを修正するために2戦目からは普段やらないようなプレスのかけ方にトライしたけれど、いつもと違うことをいきなりやろうとしてもうまくいかないですよね……」


 ボールを支配して相手を凌駕し、ゴールチャンスを数多く作って勝つという4年間継続してきたスタイルに強くこだわったがゆえに、臨機応変な対応ができなくなったのは事実だろう。それは日本サッカー協会の総括でも指摘されている点である。ただ、ブラジル大会直前に加わった大久保嘉人は「みんなの言う“自分たちの戦い方”というのがよく分からなかった」と疑問を口にした。


「4年間ずっとザッケローニ監督のチームで戦っていた選手たちは『ポゼッションサッカー』が自分たちのスタイルだと考えていたんでしょう。それができなくて混乱したのは確か。思うようにならないから、“自分たちのサッカー”という言葉により一層、傾いていったのかなとも感じます。


 僕自身は南アフリカでやったみたいに、しっかりしたブロックを組んでカウンターをする方が日本には合っていたと思う。日本人はみんな走れるし、スピードがあるし、一体感を持って組織的に守るから。そういう話をコロンビア戦の前に皆にしたけど、4年間やってきたことは簡単には変わらない。勝てる戦い方というのは絶対にあったはずだけど……」と彼は不完全燃焼感を拭い切れていない。

Jリーグのレベルアップが不可欠

「自分たちの戦い方というのが何だったか分からなかった」。大会直前に代表入りした大久保は、不完全燃焼感を拭いきれていなかった
「自分たちの戦い方というのが何だったか分からなかった」。大会直前に代表入りした大久保は、不完全燃焼感を拭いきれていなかった【写真:フォトレイド/アフロ】

 肝心な本番で冷静さを失い、方向性にバラつきが生じるような事態を回避するためにも、選手たちがどんな時も動じず、精神的余裕と柔軟性を持てるようにならないといけない。そのためにも、森重が言うように、常日頃から世界基準を意識できるような環境づくりが求められる。Jリーグのレベルアップというのはやはり不可欠なテーマだろう。


「国内からいい選手が出て行けば質が落ちるのは当たり前だし、いい外国人選手が入ってこない限りはレベルアップも難しい。Jリーグが魅力あるリーグになって、優れた選手がメリットを感じられる場になれば、もっと質の高いスターも入ってくるし、日本人選手もJにとどまるという選択をするかもしれない。それは難しいテーマだけど、少しずつ変えていくしかない」と遠藤も強調していたが、Jリーグが変わらない限り、世界との差が縮まることはあり得ないのだ。


 最近になって、ようやくディエゴ・フォルランやカカウ(ともにセレッソ大阪)など世界トップレベルで活躍していたスターが何人か移籍してくるようになったが、ブラジル代表の主力が次々とやってきた90年代に比べると、日本の選手が世界トップを体感できる環境とは言い切れない。日本サッカー界として、その流れを加速させるような何らかの試みを考えていくことも重要だ。アジアチャンピオンズリーグなどの真剣勝負の場を数多く経験できるように、クラブの総合力を高める努力も大切だろう。


 日本代表において欧州組の占める割合は年々増えてはいるが、代表予備軍のほとんどは国内にいる。その現実を我々は忘れてはならないだろう。


(後編に続く)

元川悦子
元川悦子

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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