初戦敗退も継続される“クルム伊達流”=全米オープンテニス
クルム伊達、10歳差を忘れさせるプレー
惜しくも初戦敗退も、自身のテニスを貫いたクルム伊達 【写真は共同】
センターコートのアーサー・アッシュ・スタジアムの完成は、クルム伊達(当時は伊達公子)が一度引退した翌年の1997年だった。間もなく44歳になるクルム伊達が初めて足を踏み入れた大舞台で、3年前のウィンブルドンのセンターコートでファイナルセットを8−6まで追い込んだビーナス・ウィリアムズと渡り合った。
ここまで2人の対戦成績はクルム伊達の3戦3敗だが、そのうち2度はフルセットに持ち込んでいる。身長差が約22センチ、体重差は約20キロ。年齢差はクルム伊達が最年長の43歳、2番目に高齢のビーナスは34歳だ。クルム伊達は「10歳差は全然違います」と言うが、その差を忘れさせるプレーだった。
第1セットの第2ゲーム、クルム伊達は0−40から追いつき、合計5本のブレークポイントをかわしてサービスキープする。続く第3ゲーム、15−40のチャンスから追いつかれながら、最初のデュースでブレークに成功した。どんな状況でも攻撃的な姿勢を押し出すクルム伊達流テニスで第1セットを先取し、予想外の展開になった。
しかし第2セット、形勢が変わった。
「今日のビーナスは決して調子が良かったとは思わなかった。第2セットからペースダウンし、対応できなかった。あらゆるケースを考えていたけれど、波長が合わなかった」
第2セットは0−4、ファイナルセットは0−5まで持ち込まれながら3ゲームずつを挽回してセンターコートに相応しいドラマを演出した。クルム伊達流テニスは継続されている。
初出場も臆せず戦ったダニエル太郎
第1セットは、ラオニッチの時速210キロ台のファーストサーブ、頭まで跳ね上がるキックサーブに戸惑いを隠せなかったが、ダニエルも冷静に自分のサービスゲームを押さえての立ち上がり。しかし、第8ゲームをブレークされて先手を奪われた。
リードをして余裕が出れば、ラオニッチのサーブは冴(さ)えを増す。第2セット、第5ゲームをブレークするとセカンドサーブで最高時速220キロをたたき出してスタンドを沸かせた。
「サーブが全然返せなかったのが悔しい。サーブもリターンもスピードが違った。ただ、差はあまり感じなかった。ファーストサーブを決めてフォアに動かせばミスが出るとアドバイスされ、そうなった。僕はまだひょろひょろしているけれど、がっちりした体でフォームが崩れないようになりたい」
何もかも初めての経験。それでも少しも臆さないところがダニエルの強みだ。ストレート負けとは言え、ポイント獲得率が第1セットの35%から42%、44%と上昇。第1セットに一度もなかったブレークポイントが第2セットは3本に増加。第3セットには5本のうちの1本を生かしてブレークした。試合が行われたのは今大会の会場で2番目に大きなルイ・アームストロング・スタジアムだった。
「コートに出たとき、声援がワーッときて、いい感じだった。もっと、こういうコートでやれるようになりたい」とダニエルは自信に目を輝かせた。
錦織は第2日の第1試合に登場
男子では第1シードのノバック・ジョコビッチ(セルビア)、第3シードのスタン・ワウリンカ(スイス)、アンディ・マレー(イギリス)、ジョー・ウィルフリード・ツォンガ(フランス)らが順当勝ち。女子も第2シードのシモーナ・ハレップ(ルーマニア)、第5シードのマリア・シャラポワ(ロシア)がやや手こずりながらも初戦を通過し、アグニエシュカ・ラドワンスカ(ポーランド)らとともに2回戦に進んだ。
なお、第2日は第1試合に錦織圭(日清食品)が登場する。
(文:武田薫)
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