初戦敗退も継続される“クルム伊達流”=全米オープンテニス

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クルム伊達、10歳差を忘れさせるプレー

惜しくも初戦敗退も、自身のテニスを貫いたクルム伊達 【写真は共同】

 現地時間25日に全米オープンテニス(米国・ニューヨーク)が開幕した。大会初日は雲一つない快晴。センターコートの第2試合、クルム伊達公子(エステティックTBC)とビーナス・ウィリアムズ(米国)の第2セット、クルム伊達がハチに襲われた。逃げ惑うクルム伊達にスタンドが騒然となり、その時はぶぜんとしていたビーナスを、ファイナルセット、ハチが襲った。一寸先は闇。何が起こるか分からない予感をはらんで、15日間の戦いが始まった。

 センターコートのアーサー・アッシュ・スタジアムの完成は、クルム伊達(当時は伊達公子)が一度引退した翌年の1997年だった。間もなく44歳になるクルム伊達が初めて足を踏み入れた大舞台で、3年前のウィンブルドンのセンターコートでファイナルセットを8−6まで追い込んだビーナス・ウィリアムズと渡り合った。

 ここまで2人の対戦成績はクルム伊達の3戦3敗だが、そのうち2度はフルセットに持ち込んでいる。身長差が約22センチ、体重差は約20キロ。年齢差はクルム伊達が最年長の43歳、2番目に高齢のビーナスは34歳だ。クルム伊達は「10歳差は全然違います」と言うが、その差を忘れさせるプレーだった。

 第1セットの第2ゲーム、クルム伊達は0−40から追いつき、合計5本のブレークポイントをかわしてサービスキープする。続く第3ゲーム、15−40のチャンスから追いつかれながら、最初のデュースでブレークに成功した。どんな状況でも攻撃的な姿勢を押し出すクルム伊達流テニスで第1セットを先取し、予想外の展開になった。

 しかし第2セット、形勢が変わった。

「今日のビーナスは決して調子が良かったとは思わなかった。第2セットからペースダウンし、対応できなかった。あらゆるケースを考えていたけれど、波長が合わなかった」

 第2セットは0−4、ファイナルセットは0−5まで持ち込まれながら3ゲームずつを挽回してセンターコートに相応しいドラマを演出した。クルム伊達流テニスは継続されている。

初出場も臆せず戦ったダニエル太郎

 この日登場した3人の日本勢でも特に注目を浴びたのが、予選から初めてグランドスラムの本戦入りを果たしたダニエル太郎(エイブル)。父はアメリカ人、母が日本人。ニューヨーク生まれでジュニア時代を日本で過ごし、いまはスペインのバルセロナを拠点とする21歳が、第5シードのミロシュ・ラオニッチ(カナダ)に胸を借りた。

 第1セットは、ラオニッチの時速210キロ台のファーストサーブ、頭まで跳ね上がるキックサーブに戸惑いを隠せなかったが、ダニエルも冷静に自分のサービスゲームを押さえての立ち上がり。しかし、第8ゲームをブレークされて先手を奪われた。
 リードをして余裕が出れば、ラオニッチのサーブは冴(さ)えを増す。第2セット、第5ゲームをブレークするとセカンドサーブで最高時速220キロをたたき出してスタンドを沸かせた。

「サーブが全然返せなかったのが悔しい。サーブもリターンもスピードが違った。ただ、差はあまり感じなかった。ファーストサーブを決めてフォアに動かせばミスが出るとアドバイスされ、そうなった。僕はまだひょろひょろしているけれど、がっちりした体でフォームが崩れないようになりたい」

 何もかも初めての経験。それでも少しも臆さないところがダニエルの強みだ。ストレート負けとは言え、ポイント獲得率が第1セットの35%から42%、44%と上昇。第1セットに一度もなかったブレークポイントが第2セットは3本に増加。第3セットには5本のうちの1本を生かしてブレークした。試合が行われたのは今大会の会場で2番目に大きなルイ・アームストロング・スタジアムだった。

「コートに出たとき、声援がワーッときて、いい感じだった。もっと、こういうコートでやれるようになりたい」とダニエルは自信に目を輝かせた。

錦織は第2日の第1試合に登場

 この日の日本勢でただ一人、2回戦に駒を進めたのは、メジャーで初めてシードされた(第31シード)奈良くるみ(安藤証券)。3月に50位内に入ってから安定感を増し、日本のトップに定着した。26日現在のランキングでは33位まで上げている。一方、対戦したアレクサンドラ・ウォズニアク(カナダ)は現在97位。6−2、6−1は順当勝ちだった。

 男子では第1シードのノバック・ジョコビッチ(セルビア)、第3シードのスタン・ワウリンカ(スイス)、アンディ・マレー(イギリス)、ジョー・ウィルフリード・ツォンガ(フランス)らが順当勝ち。女子も第2シードのシモーナ・ハレップ(ルーマニア)、第5シードのマリア・シャラポワ(ロシア)がやや手こずりながらも初戦を通過し、アグニエシュカ・ラドワンスカ(ポーランド)らとともに2回戦に進んだ。
 なお、第2日は第1試合に錦織圭(日清食品)が登場する。

(文:武田薫)
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