お寺の境内で前代未聞の格闘技大会開催=須藤元気が仕掛ける武道「一騎討」とは?

長谷川亮

須藤元気(中央)が主宰した第1回「一騎討」。お寺の境内を舞台に前代未聞の格闘技大会が行われた 【長谷川亮】

 格闘家を引退後も作家・俳優、そしてダンスパフォーマンスユニット「WORLD ORDER」でも活躍と、多彩な活動で今も“変幻自在のトリックスター”ぶりを発揮する須藤元気。そんな須藤が呼び掛け、新たに開催されたのが24日に行われたアマチュア柔術大会「一騎討」(いっきうち)。お寺の境内という前代未聞の場を舞台とした会場へ足を運ぶと、そこにはあたかもマンガや映画のような異世界が広がっていた。

お寺に試合場…須藤「江田島塾長の気分」

お寺に試合場という異次元空間に須藤は「江田島塾長の気分」と興奮 【長谷川亮】

「衆人環視のもとに技をぶつけあい雌雄を決する一騎討こそ、武道の『華』ではないでしょうか」と公式サイトにメッセージを寄せた須藤は、「一騎討」を体重無差別のトーナメント戦で開催(8人制で実施)。会場となった足立区の善立寺へ足を踏み入れると、まず朱色の台に緑色の畳が鮮やかに広がる様に目を奪われる。

 大会は最初に善立寺の住職が祈祷を行い、その後で主宰者・須藤のあいさつへ。お寺に試合場という現実離れした眼前の光景に、「男塾で言うところの江田島平八の気分です」と、須藤もやや上気した様子を隠せない。

太鼓の生演奏をバックに選手入場

選手は太鼓の生演奏をバックに朱色の敷物が敷かれた階段を1人ずつ降りながら登場 【長谷川亮】

 続いての選手入場式では勇壮な太鼓の生演奏をバックに、選手たちが朱色の敷物が敷かれた階段を1人ずつ降りながら登場。プロの格闘技大会では選手たちが花道を行く入場シーンが見どころの1つとなっているが、その日本版といった趣きで、選手たちもきっと誇らしい気分だろうと思わせる。

 そしていざ試合が始まると、選手たちは控え室に戻るのではなく、試合場の傍らで座して戦いを見守り、自身の出番を待つ。これも「一騎討」ならではの光景だ。

中村“アイアン”は袴を身に着け出場

中村“アイアン”浩士(左)は須藤のリクエストに応じ袴を身に着け出場 【長谷川亮】

 選手中、異彩を放ったのがDEEPや海外のベラトールといった団体で活躍するMMAファイター・中村浩士(中村“アイアン”浩士)。須藤のリクエストに応じ袴を身に着け出場した中村は、MMA出場時はバンタム級(61.2kg以下)と出場選手の中でも小柄・軽量な部類であったが、準決勝ではDEEPの元王者でミドル級(83.9kg以下)で活躍する桜井隆多を背負い投げから腕十字で攻め、この攻勢が評価されて延長判定勝ち。決勝戦へと進む。

 反対ブロックを勝ち進んできたのは、2011年と12年のブラジリアン柔術・全日本王者である細川顕。引き込んだところをアキレス腱固めで中村に狙われる場面もあったが対処して極めさせず、三角締め→オモプラッタ→バックポジションと流れるように動き、最後はそこから送り襟締めを極め、見事「一騎討」の第1回優勝者となった。

“和”を意識し日本の武道、柔術を世界に発信

第2回大会開催と世界進出に手応えをつかんだ須藤元気 【長谷川亮】

 試合は三味線、あるいは和太鼓の演奏をバックに行われ、大会中には空手の演武も実施。さらに優勝者には副賞として米俵も贈呈と、存分に独自の世界観を展開した第1回大会を終え、須藤は「とにかく“和”を意識して、やはり世界に日本の武道、柔術というものを発信していければと思っていたので、素晴らしい大会だったんじゃないかと思います」と手応えをにじませる。

 今後は第1回大会の映像を世界に配信することで「必ず反響があるし、海外のメディアが取り上げてくれるっていうのは読んでいます」と語り、「WORLD ORDER」と同じ手法で話題を集め、大会を継続していくことを狙う。

「お正月に紅白の垂れ幕の中でやったらカッコいいと思うんですよね」
「第2回からは天下一武道会みたいに“落ちたら負け”にしようかなと」
「本当はナギナタとかの試合も1つ入れようと思っていたんです」

 今回は実現に至らなかった様々なビジョンも、すでに須藤の中には溢れんばかりとなっている様子。

 江田島塾長ならぬ須藤塾長が、次はいかなる異世界を見せてくれるのか。夜のとばりが下りたお寺を後にする観客の後ろ姿には、すでに次回大会への期待が感じられた。
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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