スペインの覇権争いは2強か3強か? 識者が読み解くリーガエスパニョーラ展望

構成:スポーツナビ

シメオネ監督のもと、昨季は18年ぶりの優勝を果たしたアトレティコ・マドリー。今季も2強の牙城を崩すことはできるか 【Getty Images】

 昨季、スペイン・リーガエスパニョーラはアトレティコ・マドリーがディエゴ・シメオネ監督のもと、18年ぶり10度目の優勝を果たした。近年続いていたバルセロナとレアル・マドリーで覇権を分け合う“2強時代”に終止符を打つことに成功した。

 しかし、「覇権奪回」が至上命令の2強は積極的な補強を敢行。バルセロナはルイス・スアレス、レアル・マドリーはトニ・クロースやハメス・ロドリゲスらワールドカップ(W杯)で活躍した実力者を迎え入れた。現地時間23日に開幕する2014-15シーズンのリーガは再び“2強時代”に戻るのだろうか。

 スポーツナビでは、3人の識者にご登場いただき、優勝チーム、チャンピオンズリーグ(CL)圏内に入るチーム(4位以内)、降格するチーム(18位以下)、そして今季の注目選手を挙げていただいた。なお、せん越ながら編集部もこの予想に加えさせてもらっている。

小澤一郎(サッカージャーナリスト)

バルセロナにとって“最大の補強”はルイス・エンリケ監督の就任だと言われている 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

「L・エンリケ監督が最高の補強」

 リーガの「2強時代」は依然として強固なものであり、私の優勝予想は期待込みでバルセロナだ。スアレス、イバン・ラキティッチら大型補強で奪還を誓うバルサだが、最高の補強はジョゼップ・マリア・バルトメウ会長が言う通り「ルイス・エンリケ監督」で間違いない。緩んだチームの規律・手綱を再度締め直すべく、就任会見からピッチ外での厳しさとピッチ内での攻撃から守備への切り替えの早さを強調するL・エンリケ新監督によってジョゼップ・グアルディオラ監督時代とは異なる魅力的な攻撃サッカーが展開されると予想する。

 4位までに与えられるCL出場権はレアル・マドリー、アトレティコ・マドリー、バレンシアの予想。特にピーター・リム氏のクラブ買収でようやくクラブ内部に落ち着きが見え始めるバレンシアの復活に期待したい。降格予想は、コルドバ、エイバル、ヘタフェの3チーム。ハーフナー・マイクが加入したコルドバには当然ながら奮起を期待したいが、昇格組のチームらしく選手の入れ替えが激しい上に、アルベルト・フェレール監督が1部どころかスペインのプロリーグを未経験のため厳しい評価にならざるを得ない。

 最後に注目選手だが、エルチェのクロアチア人MFマリオ・パサリッチ、マラガのポルトガル人FWリカルド・オルタ、バルセロナからの期限付き移籍でセビージャに加入したMFデニス・スアレスとFWジェラール・デウロフェウの若手4選手を挙げたい。彼らはいずれも1994、95年生まれで、近い将来ほぼ確実に欧州ビッグクラブで主力となるタレントだ。

【小澤氏の予想】

優勝  :バルセロナ
CL圏内:レアル・マドリー、アトレティコ・マドリー、バレンシア
降格  :コルドバ、エイバル、ヘタフェ
注目選手:マリオ・パサリッチ(エルチェ)、リカルド・オルタ(マラガ)、デニス・スアレス、ジェラール・デウロフェウ(共にセビージャ)

工藤拓(フットボールライター)

ハメス・ロドリゲスらを獲得し戦力が充実、デジマを達成しリーガに重きを置けるレアル・マドリーが有利か 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

「リーガに重きを置けるレアル・マドリーが筆頭」

 昨季と同様に3強の優勝争いとなることを予想というより期待しているが、中でも優勝候補の筆頭はレアル・マドリーだろう。昨季築いたベースにJ・ロドリゲス、クロースらを加えた戦力の充実ぶりは確実に昨季を上回る。また悲願のデシマ(CL10度目の優勝)を果たしたことでCLに対する過度のプレッシャーがなくなり、リーガに重きを置いた戦い方ができるようになったことも追い風となる。

 王座奪還を目指すバルセロナは各ラインに即戦力を補強したものの、プレシーズンの段階では監督交代によって期待されていた新たな戦術的要素が特に見られていない。それでもリーガではほとんどの試合に勝つことができるだろうが、レアル・マドリー、アトレティコ・マドリーとの直接対決では脆さを露呈するのではないか。

 アトレティコ・マドリーも同様に積極的な補強を行ったが、“カウンター戦術そのもの”だったジエゴ・コスタを失った影響は大きい。既存のチームに新たな得点源となるマリオ・マンジュキッチ、アントワーヌ・グリースマンらをフィットさせ、新たに攻撃の連動性を構築するにはそれなりの時間が必要となるはずだ。

 この3強を除いた4位以下のCL、ヨーロッパリーグ(EL)出場権争いでは、まずCL、ELとリーガを平行して戦う4チームが不利な立場にある。特にレアル・ソシエダとビジャレアルは週2試合の過密日程をこなせるほど選手層が厚くないため、どこかで息切れする時期が出てくるはずだ。

 戦力的に最も充実しているアスレティック・ビルバオはナポリとのプレーオフの結果次第。マルセロ・ビエルサ監督時代に決勝まで勝ち進んでいるELならともかく、勝ってCLに出場することになれば2年連続の4位は厳しいだろう。その点、リーガと国王杯だけに集中できるバレンシアは有力候補だ。日程面の優位に加え、クラブ買収に伴う資金力増により今夏は非常に良い補強ができている。他のクラブに比べて欧州での経験が豊富なセビージャとともに、今季のオトラ・リーガ(3強を除いた別のリーグ)を引っ張る存在となるのではないか。

 残留争いでは昇格組の3チームに加え、昨季も苦しんだエルチェ、アルメリアあたりが苦戦しそうだ。特に不可解な監督交代からはじまったデポルティーボはセンターバックや左サイドバック、センターFWの補強が進んでおらず、1年で2部へ逆戻りした2年前の二の舞となる可能性が高い。

 個人的に注目している選手はバレンシアのMFロドリゴ・デ・パウルとMFブルーノ・スクリーニ、レアル・ソシエダのGKヘロニモ・ルッリ、ビジャレアルのFWルシアーノ・ビエットら新加入のアルヘンティーノたち。そしてマラガのFWオルタ、デポルティーボのFWイバン・カバレイロらポルトガルの若手アタッカーらリーガ初挑戦の選手たちがどんなプレーを見せてくれるのか楽しみだ。

 またアルメリアに加入したタイのスーパースター、FWティーラシン・デーンダーには、コルドバのハーフナーやサバデル(2部)2年目の田邉草民らとともにアジア人の意地を見せてもらいたい。

【工藤氏の予想】

優勝  :レアル・マドリー
CL圏内:バルセロナ、アトレティコ・マドリー、バレンシア
降格  :デポルティーボ、アルメリア、コルドバ
注目選手:リカルド・オルタ(マラガ)、イバン・カバレイロ(デポルティーボ)

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