絶対王者・バイエルンは止められない? 識者が読み解くブンデスリーガの展望

構成:スポーツナビ

昨季は圧倒的な強さで優勝を決めたバイエルン。今季彼らを止めるチームは現れるか 【写真:ロイター/アフロ】

 ドイツ代表の優勝で幕を閉じたワールドカップ(W杯)ブラジル大会から早くも一カ月が経過し、現地時間22日からは2014−15シーズンのブンデスリーガが幕を開ける。昨季は王者バイエルン・ミュンヘンが2位のドルトムントに勝ち点差19をつけ、史上最速で優勝を決めるなど圧倒的な強さを見せつけた。今季はドルトムントから昨季得点王のロベルト・レバンドフスキを獲得したが、チーム得点王のマリオ・マンジュキッチ、W杯でも活躍したトニ・クロースを放出した。さらに新たに導入する3バックシステムで中心を担うことを期待されていたハビ・マルティネスが負傷し年内の復帰が絶望となるなどここにきて不安要素が出てきている。一方でエースをライバルに奪われたドルトムントは昨季セリエA得点王のチロ・インモービレ、コロンビア代表のアドリアン・ラモスらを獲得。けがでW杯を欠場したマルコ・ロイスも順調に回復しており、絶対王者バイエルンの独走を阻止できるかに注目が集まる。

 スポーツナビではブンデスリーガをより楽しんでもらうため、3人の識者にご登場いただき、優勝チーム、チャンピオンズリーグ(CL)圏内に入るチーム(4位以内)、降格するチーム(16位は入れ替え戦)、そして今季の注目選手を挙げていただいた。なお、せん越ながら編集部もこの予想に加えさせてもらった。

木崎伸也(スポーツライター)

昨季もドルトムントからゲッツェを獲得しているバイエルン。力の差は開く一方だ 【VI-Images via Getty Images】

「バイエルンの優勝は揺るがない」

 先日、ある企業の方に会うと、「外資系コンサルタント会社はライバルの競争力を落とし、相対的に自分の優位性を高めるという考え方がベースにある。これでは業界が発展しない」と嘆いていた。この話を聞いて、すぐに連想したのがバイエルンだった。

 今季、バイエルンは最大のライバルであるドルトムントからFWレバンドフスキを獲得した。昨季にはMFマリオ・ゲッツェを引き抜いており、前者と後者の力の差は開く一方だ。今季はドイツ代表選手たちに“W杯疲れ”の影響が予想され、“グアルディオラ流・新3バック”に慣れる時間もかかりそうだが、それでもバイエルンの優勝は揺るがないだろう。実際、大手ブックメイカーの『bwin』を見ると、「バイエルン抜きで考えたとき最上位に来るのは?」という項目があった。バイエルンを含めてしまうと、賭けが成立しづらいのがブンデスリーガの現状だ。

 ただし、残留争いはし烈だ。上述の「バイエルン抜きの最上位」のオッズが大きい順に並べると、パーダーボーン251倍、フライブルク151倍、フランクフルト126倍、ブレーメン、ヘルタ・ベルリン、ケルン、マインツ、アウクスブルク101倍となっていた。この8チームで残留を争うことになるだろう。

 初昇格のパーダーボルンは降格濃厚だが、個人的に次に危ういと見ているのがフライブルクだ。GKオリバー・バウマンとDFマティアス・ギンターが引き抜かれ、守備力が著しくダウン。3シーズンに渡って1部を死守してきたクリスティアン・シュトライヒ監督のサバイバル能力を持ってしても、今季は厳しそうだ。同様にMFアンドレ・ハーンとDFマティアス・オストルツォレクを引き抜かれたアウクスブルクも辛いシーズになるだろう。

 この“残留争い組”の中で、いい意味で予想を裏切りそうなのがフランクフルトだ。レギュラークラスのボランチ2人を放出したものの、攻撃陣にスイス代表のハリス・セフェロビッチ、パラグアイ代表のネルソン・バルデス、元U−17ブラジル代表のルーカス・ピアゾンを補強。特に20歳のピアゾンは勢いがあり、得点とアシストを重ねそうだ。また、トーマス・シャーフ新監督はブレーメン時代にジョアン・ミクー、ジエゴ、メスト・エジル、マルコ・マリンを輝かせており、トップ下で技術屋を生かすのがうまい。今季、シャーフ監督は乾貴士をトップ下に指名。乾はその期待に応え、柔らかいトラップを生かして攻撃のリズムを作っている。ニュルンベルクから加入した長谷部誠が後方から支え、欲しいタイミングでパスが来るのも大きい。新加入の彼らと乾の化学反応によって、フランクフルトは残留争いから抜け出せるはずだ。

【木崎氏の予想】

優勝  :バイエルン・ミュンヘン
CL圏内:ドルトムント、レバークーゼン、ボルフスブルク
降格  :パーダーボルン、フライブルク、アウクスブルク(入れ替え戦)
注目選手:ルーカス・ピアゾン(フランクフルト)

中野吉之伴(サッカー指導者・ライター)

バイエルンはハビ・マルティネスの負傷が非常に痛い。調整不足の前半戦をしのぐことができるかが鍵を握りそうだ 【写真:ロイター/アフロ】

「バイエルンは前半戦をしのぐことができるか」

 昨シーズンのような独走優勝は考えられないが、今季のブンデスリーガでも優勝候補はやはりバイエルンだろう。抱える選手の質と量は世界トップクラス。ジョゼップ・グアルディオラ監督は昨シーズンのチームをベースに、ポゼッションという方向性を変えずバージョンアップを図っている。一方で最多となる選手をW杯に派遣したため、主力の調整不足は否めない。守備の要として期待されていたハビ・マルティネスの長期離脱も非常に痛い。主力選手のコンディションが整うまでの前半戦をうまくしのぐことができるかが鍵になるだろう。

 ドイツ・スーパーカップでバイエルンに快勝したドルトムントは序盤からダッシュをかけたい。好材料は2年目のピエール・エメリク・オーバメヤン、ヘンリク・ムヒタリアンのプレーから躊躇(ちゅうちょ)や戸惑いがなくなり、好プレーを連発している点。セリエA得点王のインモービレら新加入選手に加え、けがでW杯を棒に振ったエースのマルコ・ロイスもDFB杯で復帰。打倒バイエルンへ陣容は整っている。

 CL出場権はシャルケ04、レバークーゼン、ボルフスブルク、ボルシア・メンヘングラードバッハの4チームが争うことになりそうだ。4チームともベストメンバーならば2強とも好勝負をするだけの力はある。それだけにどれだけムラなくシーズンを戦い抜けるかが重要になる。残留争いに目を向けると、戦力的に問題を抱えるパーダーボルン、ケルン、フライブルク辺りが厳しいか。また新監督を迎えたフランクフルト、シュツットガルトは早くスタイルを確立させないと下位に沈む危険もある。

 注目選手にはバイエルンの若手ジャンルカ・ガウディーノとピエール・エミール・ホイビュルクの2人を挙げたい。特にガウディーノはまだ17歳とは思えないほどの落ち着きと卓越した技術を持っている。いきなりレギュラーに抜てきされることはないが、将来が非常に楽しみなタレント。

【中野氏の予想】

優勝  :バイエルン・ミュンヘン
CL圏内:ドルトムント、レバークーゼン、ボルフスブルク
降格  :パーダーボルン、ケルン、フライブルク(入れ替え戦)
注目選手:ジャンルカ・ガウディーノ、ピエール・エミール・ホイビュルク(共にバイエルン・ミュンヘン)

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