山田大記がW杯王者の国へと渡った理由 獲得喜ぶカールスルーエで早くも得た信頼

早くも得た確固たる地位

2013年東アジアカップのオーストラリア戦で日本代表デビュー。山田はブンデスリーガでの戦いで自身の成長を促し、再び代表入りを目指す 【写真:築田純/アフロスポーツ】

「山田がいることは、チームにとって間違いなく勝利である」。カールスルーエの専門家であるフリーランスの記者にして作家のピーター・プツィンクはそう断言する。山田は天性のスピードと技術を備えており、ボールコントロールも最高級。先発メンバー入りは当然だった。

 山田のドイツ初陣となった8月3日に行われたウニオン・ベルリン相手のブンデスリーガ2部開幕戦を、プツィンクは一言で言い表した。「おとなしかった」。有名な専門誌『キッカー』にも寄稿する同氏は、続くフランクフルト戦は「だいたい良かった」と評した。山田本人も初戦を終えて、「ここでの試合中のスピードは日本以上のものがある。それにプレーもさらにハード」と話していた。

「ボールが前に早く送られている時には、山田はテンポを落として安全なバックパスをする方を選ぶ」とライゼンノイアーは語る。そのため山田は、お気に入りのポジションである中央に入って行くことを好むのだという。「カールスルーエに来てから短い準備期間しかなかったのだから、今後数週間で山田のパフォーマンスはさらに向上していくことが予想される。まだシーズン序盤なのだから、山田には時間を与える必要がある」と同氏は語る。

「ブンデスリーガ2部はとてもフィジカルが前面に出るリーグだ」とトッドSD。「ここまで彼はプレーしながら解決して、そうした多くの物事に慣れてきた。時には荒っぽく、フィジカル的な面が出てくる。そういうことを少しずつ経験して、適応のプロセスを踏んでいく。だが、山田はそれもうまくやっているし、私は心配していない」。むしろ、ドイツに慣れるだけではなく、自分のスタイルを保ってほしいと願っている。
「試合の中で技術を活かすことと、流れを読む目とスピードを持っていて、そうしたものを我々にもたらすことが、彼を特別な存在たらしめているんだ」

 欧州への移籍によって日本代表入りのチャンスが生まれることを、山田は願っている。「ヒロキは2013年に、サムライブルー(日本代表)の一員として2試合に出場している。もちろん、ブラジルワールドカップ(W杯)に行くことも願っていた」とトッドSDは山田の胸のうちを代弁する。「最終的にW杯メンバー入りは逃した。間違いなくこれが、欧州行きを望んだ理由の一つだろう」。南米大陸での落胆は、日本にも大きく広がった。W杯王者の国での戦いで、山田は自身の成長を促そうとしている。

「再び上昇していて、2部でも確固たる地位を築くようになっている」ことが、山田がカールスルーエを選んだ理由の一つだった。それにもうすぐ、カールスルーエは単なる2部のクラブ以上の存在になるだろう。山田の助けによって、である。

(翻訳:杉山孝)

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著者プロフィール

フランソワ・デュシャト 1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net。 ダビド・ニーンハウス 1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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