W杯で再確認した目指すべきGK像=西川周作×権田修一クロスインタビュー

構成:戸塚啓

西川(左)は第2GK、権田(右)は第3GKとしてW杯に臨んだ。2人が世界の舞台で感じたこととは? 【星野洋介&源賀津己】

 8月23日、味の素スタジアムで日本代表の第2GK、第3GKとしてワールドカップ(W杯)・ブラジル大会に臨んだ2人の守護神が再会を果たす。浦和レッズの西川周作とFC東京の権田修一である。2人はW杯で何を感じ、いま何を課題にJリーグでの戦いに身を投じているのか。そして、4年後どんな進化を見せようとしているのか。日本を代表する2人のGKをそれぞれインタビューし、対談調でお送りする。

権田「日本人GKでも世界と台頭に戦える」

試合には出場できなかったが、権田はW杯で「日本人GKでも世界で対等に戦えるというのを再確認できた」と語る 【源賀津己】

──日本代表のハビエル・アギーレ新監督が、8月11日に来日しました。チームの基本コンセプトとして、GKやFWといったポジションを問わずに、全員攻撃・全員守備を求めていくと語っています。

西川 実は来日を知ったのが翌日でした。記者会見の映像も見ていませんし、どんなことを話したのかも知りません。全員攻撃・全員守備というのは、非常に楽しみですね。

権田 代表については、正直なところいまはあまり考えていないと言うか。代表に入るためにFC東京で頑張るというスタンスではなくて、とにかくFC東京のために頑張る。いまはチーム状態もすごくいいので、その状態を維持するのではなく、さらにもっと良くしていきたい。そのために何をすればいいのかで、頭がいっぱいです。次の試合に向けた準備をしていると、アッという間に1週間が過ぎていく。そういう意味では充実していますね。

──先のブラジルW杯は、GKが脚光を浴びた大会でした。

西川 刺激を受けました。

権田 ひと言で表せば、すごい大会だなと。

西川 試合には出られなかったですけど、大会の雰囲気に触れたり世界レベルのGKを見たりして……ヨーロッパのリーグは日本でもテレビで見られますが、中南米のGKはなかなか見られないですし。とくに攻撃の部分で、GKの存在感が出たと感じました。

権田 中南米のGKには、強い印象を受けました。とくにコスタリカの(ケイラー・)ナバス選手は、W杯の前に日本が試合をして、彼のプレーを目の前で見たので。基本的なプレーのレベルが高いだけではなく、何かストロングポイントを持っているGKが、W杯という舞台で試合を決められるのではないかと。ナバス選手のスピード感、1対1で間合いを詰める速さはすごい。そして、動きの速さやキャッチング、キックの精度などは練習で伸ばしていけるもの。身長が高いか、低いかは関係ありません。そういう部分をレベルアップしていければ、日本人GKでも世界で対等に戦えるというのを再確認できました。

西川 僕の中では、目指すべきGK像がより核心に迫っていった大会でした。W杯前も意識していたことを、優勝したドイツの(マヌエル・)ノイアー選手がそのままやっていた。いま浦和でもやっていることですけど、DFラインの裏側はGKがカバーすればいい。ノイアーのようなスタイルは、自分も目指していかないといけない。まだまだ、理想の半分ぐらいのレベルにしか到達できてないですけど。試合ごとに課題が出てくるし、理想の追求に終わりはない。それがプロとしての醍醐味(だいごみ)でもあります。

西川「GKは1人しかいないゲームメーカー」

「GKは1人しかいないゲームメーカー」と持論を展開した西川。攻撃へのこだわりを明かす 【星野洋介】

──国際舞台に出ると、日本のウィークポイントはGKと言われることがあります。

西川 強いチームとの対戦で、結果を残せていないのが大きいのでは。2012年10月のブラジル戦も、今回のW杯のコロンビア戦も、4失点してしまった。強豪相手に勝たないと、どうしても評価は厳しくなってしまう。僕自身、W杯前のザンビア戦で3失点しましたし。

──チームは4−3で勝ちましたが、GKとしては納得できないゲームでしょうね。

西川 サッカー人生で一番悔しい試合になりました。守備だけでなく、自分の特徴である攻撃面でも何もできなかった。ポジションをつかむチャンスを逃したと、本当に考え込みました。

権田 W杯で日本はどこを目指すのか。少なくともグループステージを突破して、ベスト4や優勝を狙うとしたら、日本国内ではなく世界でも通用するストロングを持たなければいけない。W杯が終わって、自分のなかで導き出されたひとつの答えです。

西川 いままでの日本のGK像は、守るだけというものだった気がします。でも、攻めることのできるGKが大事になってくるのは、今回のW杯を見ても明らかです。「日本で攻撃を展開するGKと言ったら西川だよな」と、子どもたちに見てもらいたい。もちろん、まずはしっかり守ることが大事なので、守ったあとの攻撃参加はこれまでどおり楽しんでできればいいと思います。

──「楽しむこと」は、西川選手のキーワードのひとつですね。

西川 攻撃に関わるのは、セーブしたあとのご褒美だと思っています。GKはワンプレーで悪い流れを断ち切ることができるし、攻撃面でも同じようにワンプレーで流れを変えられます。GKは1人しかいないゲームメーカーというのが、僕の考えなのです。

──ブラジルW杯では川島永嗣選手がファーストチョイスで、西川選手が第2GK、権田選手が第3GKという位置づけでした。この序列を崩すために、これからやっていくべきことは何でしょう?

権田 当たり前のことですが、まずはFC東京で勝利に貢献していく。急にうまくなることはないですし。監督が代わったということは好みが変わるということで、試合に出る選手も変わると思うのです。だからこそ、GKのストロングポイントは大事だと思っています。たとえば、「権田はシュートやクロスをはじかないでキャッチして、しっかり味方につないでくれるから、マイボールの時間が増えるよね」といった評価を受けることができれば、それも持ち味のひとつになる。世界で勝つための武器を身につけて、いつ代表に選ばれてもいいように準備をする。試合に出ることになったら、チームの勝利に貢献できるように自分のストロングポイントを出し切る、ということをやるしかないでしょう。

西川 ザンビア戦が終わったあと、もう2度と同じ思いをしないように、Jリーグで結果を残していこうと思いました。それと同時に、経験を積んでいかなければいけない、とも。国内だけでなく海外でも試合をしていかなければ、と感じます。そのためにもACL(アジアチャンピオンズリーグ)の出場権は取りたいですし、チームがリーグ戦の上位をキープしていれば、代表に呼ばれるチャンスは広がる。実際に呼ばれたら、監督の要求を聞いたうえで自分の長所を出していく。頭を柔軟にして、臨機応変に対応したいですね」

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著者プロフィール

1968年、神奈川県出身。法政大学第二高等学校、法政大学を経て、1991年より『週刊サッカーダイジェスト』編集者に。1998年フリーランスとなる。ワールドカップは1998年より5大会連続で取材中。『Number』(文芸春秋)、『Jリーグサッカーキング』(フロムワン)などとともに、大宮アルディージャのオフィシャルライター、J SPORTS『ドイツブンデスリーガ』『オランダエールディビジ』などの解説としても活躍。主な著書に『不動の絆』(角川書店)、『マリーシア〜駆け引きが日本サッカーを強くする』(光文社新書)、『僕らは強くなりたい〜東北高校野球部、震災の中のセンバツ』(幻冬舎)がある。

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