絶賛急成長中の現役大学生、武藤嘉紀 FC東京でストライカーへと変貌を遂げる
得点力が増したきっかけ
フィッカデンティ監督(右)の指導を受け、武藤(左)はストライカーへと変貌をとげた 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
今シーズンの東京は4−1−2−3でスタートした。アンカーの前にインサイドハーフが2人。その前にセンターFWと両ウイング。武藤はウイングに入った。まだ攻撃の手法が確立されていなかったこともあり、単独突破でのチャンスメークが主な見せ場となっていた。
事情が変わったのは、主なフォーメーションが4−1−2−1−2に変わったことによる。
4−1−2までは4−1−2−3と同じ。異なるのは前線の構成だ。主に河野広貴が務めるトップ下の前に2トップが配置される。
ワールドカップ・ブラジル大会による中断期間が明けて以降は、エドゥーと武藤の2トップがスターティングイレブンに並ぶことが多かった。
求められるのは得点である。高いボールを受けるのはエドゥーの役割。
点獲り屋への変貌だ。
7月23日の第16節対アルビレックス新潟戦。この試合で決勝ゴールをマークした武藤は、試合後フィッカデンティ監督の指導について触れた。
いわく、一瞬で自分のスピードが(相手DFに対し)勝るということは分かっていた。監督には、いつもゴール前にしっかり入っていくようにと指導されていた。監督は積極的なミスに関しては絶対にマイナスの評価をしない。足りないものに関しては指導を受けられる。DFの前でさわってのゴールも、監督の指導の賜物――要約すると、監督のおかげ、ということだ。
2ゴールを決めた8月2日の第18節対清水エスパルス戦の試合後には、次のような談話を残している。
「だいぶ切り返しの練習をしていた。その成果を初めて試合で実践できたんじゃないかと思います」
「裏に抜け出す動き、DFとの駆け引きは、FWをやり始めて、少し分かってきたということもあるのかなと。(2トップだと)最初から真ん中にいるので、DFとの駆け引きに勝てれば一気にゴールが近くなる。そこの駆け引きがうまくなっている」
「自分としても、今まではサイドハーフからFWへのコンバートだったので、どこか難しいところもあったんですけれども。FWとして点を獲らなければいけないという“頭”の確立ができて、そのことによってゴールへの意識が高まってきたんじゃないかと思います」
ストライカーとしての努力とセンス
「ゴールへの意識が高まってきた」と自身で口にするように、第20節終了時点でチーム最多タイの5ゴールを奪っている武藤 【写真:築田純/アフロスポーツ】
いつの間に“ストライカー”へと変身したのか――。
クラブハウスで練習帰りの武藤に、これまでの試合後の発言を踏まえ、あらためて変貌の理由を尋ねた。武藤は言う。
「FWはゴールに近いところでゴールを獲らなければいけない役割。そのせいもあって、最初に見るところがゴールになっているんじゃないかと」
さらに武藤は「GKにばれてしまうのではっきりとは言えないですが」と前置きして、点獲り屋のレシピを教えてくれた。
「監督には、シュートを撃つ時にここを狙え、ということも言われています。クロスへの入り方や、どこがDFにとって嫌な所でどこがFWにとってよい所か、などということも詳しく指導してくれるから、本当にありがたいなと思っています」
まさにストライカーコーチとして、フィッカデンティ監督がFW養成講座を開いてくれているに等しい。しかしそれらをすばやく吸収し、成果にしているのは、まぎれもなく武藤の努力とセンスだ。
では最後に、武藤嘉紀の魅力を端的に紹介するとしたら?
「得点感覚と裏への抜け出しです」
激しいプレッシャーでボールを奪う。そのままドリブル突破。欧州や南米の名だたるDFを置き去りにし、強烈なシュートをたたき込む――今の武藤には、そんな場面を見せてくれそうなオーラが漂っている。