プレミア優勝は“4強”の争いか? 識者が読み解く混戦必至のリーグ展望

構成:スポーツナビ

昨シーズンはシティーが優勝。今季はピンポイントの補強で連覇を狙う 【写真:ロイター/アフロ】

 有力クラブが数多くそろうイングランド・プレミアリーグは、優勝予想が最も困難なリーグと言っても過言ではない。今季も各チームが戦力拡充に勤しみ、8月16日の開幕に照準を合わせている。昨季王者のマンチェスター・シティーはピンポイントの補強で、弱点をカバー。モウリーニョ体制2年目を迎えるチェルシーもディエゴ・コスタ、セスクら大物選手を獲得し、飛躍的な戦力アップを遂げた。ライバルに遅れを取るまいとアーセナル、リヴァプールも実力者を迎え入れ、昨シーズン7位とまさかの成績に終わったマンチェスター・ユナイテッドは新たにファン・ハールという名将にチームの再建を託した。

 まさに混戦必至の様相を呈している今季のプレミアリーグ。来年5月に優勝カップを掲げているのは一体どのチームなのか。識者の展望をお届けする。皆に共通していたのは、1位から4位を占めたのがロンドン勢(チェルシー、アーセナル)とマンチェスター勢(シティー、ユナイテッド)だったことだ。なお、せん越ながら編集部のサッカー担当も予想させてもらった。

東本貢司(翻訳家、サッカーライター・コメンテーター)

「最大のダークホース」に推されるユナイテッドは、新キャプテンに任命されたルーニー(写真)の活躍がカギを握る 【写真:Action Images/アフロ】

「良くも悪くもユナイテッドが渦の中心」

 この数年来、エヴァートンとトテナム・ホットスパー(スパーズ)が安定した成績で上位に定着する中、近年のプレミアリーグは事実上、昨シーズン7位に終わったマンチェスター・ユナイテッドまでの「7強時代」に入っている。戦力の質と層、経験度と最新の補強成果などを照らし合わせて相対的順位をつけるとしたら、マンチェスター・シティー、チェルシー、アーセナル、リヴァプール、マンチェスター・ユナイテッド、スパーズ、エヴァートン辺りになりそうだが、勝負のアヤという不確定要素も加味して、いずれにも優勝の可能性はあると見る。必然的に、チャンピオンズリーグ(CL)出場権争いもこの7チームに絞られる。

 順当なら、つまりアクシデント(故障、極度のスランプ、“事件”)がなければ、シティーとチェルシーに一日の長あり――とは、現地メディアのほぼ一致した見解だが、前者には特定のキープレーヤー(コンパニー、ダヴィド・シルヴァ)頼みになりがちな傾向が見え隠れ、後者は乱戦模様にもつれ込むと格下相手にも取りこぼす“くせ”が目立つ。プラスアルファのブレイク、すなわち、シティーなら2年目のジョヴェティッチ、チェルシーは新加入ディエゴ・コスタの活躍度合い如何で、前半戦をどう乗り切れるかがカギになる。

 昨季、久しぶりのFAカップ制覇で弾みのつくアーセナルには、波に乗れば最後まで突っ走ってしまいそうなオーラも。が、プレミアきっての高速プレーの宿命か、故障者続出の“定番”が常に付きまとう。新戦力サンチェスも含め、ラムジー、ウィルシャー、ウォルコット、チェンバレンの若い主力がシーズンを全うするという条件付きとする。

 問題はようやくプレミア初制覇が見えてきたリヴァプールだ。スアレスの抜けた穴はあまりにも大きく、CL出場も明らかな負担増。ジェラードとスタリッジに過度の負担がかかりすぎるようでは早期脱落も。そこで、キーマンと目される進境著しいヘンダソンと新加入ララーナにチームを引っ張る自覚が望まれる。また、ここでつまずくと悲願がまた遠のいてしまうという焦り、切迫感を払拭できるかどうかも、運命と成績を左右しそうだ。

 とはいえ、最大の焦点は、現地識者がほぼ声をそろえて「最大のダークホース」に推す“堕ちた盟主”ユナイテッドの大反攻だろう。当初は不安視された熱血・唯我独尊のファン・ハール・イズムが早くも前向きに浸透し始めたか、オフの米国遠征以来、ほとんどスキのないチームパフォーマンスで手応えも上々。特に、忘れられかけていたフレッチャーとヤングに復活の道を開いた発想と手腕は好感度も高く、何よりもファンの受けがいい。即優勝はともかく、トップ4(CL圏内)はまず堅いと専らの評判。国内に集中できる強みと、新キャプテンのルーニーが気力充実の新境地を開けば、ひょっとしたらひょっとする!? 今シーズンのプレミアは、良くも悪くもユナイテッドが渦の中心になって動いていく予感がする。

 なお、個人的には主力をごっそり失ったサウサンプトンの逆襲に期待したい。降格候補は、可能性の高い順にバーンリー、レスター、ウェスト・ブロム、QPR。

【東本氏の予想】

優勝:チェルシー
2位:アーセナル
3位:マンチェスター・シティー
4位:マンチェスター・ユナイテッド

降格:
バーンリー
レスター
ウェスト・ブロム

注目選手:
アンデル・エレーラ(マンチェスター・ユナイテッド)
アダム・ララーナ(リヴァプール)

平床大輔(雑文家)

セスク(左)ら大物選手を獲得したチェルシーは戦力的に有利か 【写真:ロイター/アフロ】

「シティーとチェルシーが軸となる」

 他人の優勝予想をちゃかすのは、フットボールファンにとってこの時期の楽しみの一つであるが、自分でその予想を立てるとなると、途端に鹿爪(しかつめ)らしい顔をしてしまうのが我ながらおかしい。というわけで、せん越ながらプレミアリーグの展望なるものを書き記してみた。

 優勝争いは昨季王者のマンチェスター・シティーとモウリーニョ復帰2シーズン目となるチェルシーを軸に展開すると予想する。CLとリーグ優勝の2冠を狙う両チームは今夏も順調に補強を進めており、スカッド(選手層)は厚みを増すとともに、確実に両指揮官好みの編成に変容を遂げつつある。いささか面白味に欠ける嫌いはあるが、この2チームを差し置いて大胆予想をする度胸は、私にはない。

 3位にはファン・ハールを新監督に迎えたマンチェスター・ユナイテッドを推したい。これまで必ずと言っていいほど就任1年目はどのクラブでも結果を出してきたファン・ハール監督にとって、欧州カップ戦不出場というモイーズ前監督の残した負の遺産は、リーグ戦を戦う上で日程的に有利に働くのは間違いない。

 4位はアーセナル。マージーサイド勢も捨て難いが、リヴァプールはスアレスの抜けた穴が余りに大きく、エヴァートンも魅力的ではあるが総合力でロンドンの名門に劣っている感は否めない。

 残留争いは例年のごとく混迷を極めそうだが、降格する3チームは、主力を一斉放出しながらクーマンという危険な賭けに出たサウサンプトン、チーム力で見劣りのする昇格組のバーンリー、そして解任レースで人気を集めるアーバイン新監督のウェスト・ブロムになると予想する。

 注目選手にはついにチェルシーのユニホームに袖を通すことになったGKのクルトワを挙げたい。弱冠22歳で世界に冠たるGKにまで成長した彼こそ、プレミアに吹く新しい風の象徴となるはずである。

【平床氏の予想】

優勝:チェルシー
2位:マンチェスター・シティー
3位:マンチェスター・ユナイテッド
4位:アーセナル

降格:
サウサンプトン
ウェスト・ブロム
バーンリー

注目選手:クルトワ(チェルシー)

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