災難を好機に変える小川泰弘のプラス思考
〜燕軍戦記2014〜VOL.4

フォームを修正し1軍へ復帰

7月21日、広島戦で101日ぶりの復活勝利を挙げた小川(右)。試合後、小川淳司監督も賛辞を惜しまなかった
7月21日、広島戦で101日ぶりの復活勝利を挙げた小川(右)。試合後、小川淳司監督も賛辞を惜しまなかった【写真は共同】

 好調時の映像を見返し、コーチのみならずさまざまな人たちにアドバイスをもらいながら、フォームの修正に取り組んだ。6月10日からブルペンに入り、その10日後には打撃投手として51球を投げた。70日ぶりの実戦登板となった6月27日のイースタン・リーグ巨人戦(戸田)では3イニングを1安打、無失点。続く7月5日のフューチャーズ(イースタン・リーグ混成チーム)との試合で5回を無失点に抑えると、1軍復帰にGOサインが出た。


 だが、復帰戦となった7月12日の横浜DeNA戦(神宮)はグリエル、筒香嘉智に一発を浴びるなど、5回5失点で敗戦投手に。3カ月近くも1軍マウンドから離れていたブランクは、昨年、ルーキーながら16勝を挙げてセ・リーグ最多勝に輝いた小川をもってしても、そう簡単に埋められるものではなかった。


「勝負勘というか、危機感を持って投げるとか、そういうところがまだ足りないというか……。やっぱりもう少し厳しくっていう意識がなかったのがいけなかったですね。“意志のあるボール”というか、そこに投げるっていう気持ちをもっと強く持って、次はやろうと思います」

“意志のあるボール”に指揮官が最大の賛辞

 その言葉はすぐに現実のものとなった。後半戦開幕の7月21日、広島戦(神宮)。小川は何度もピンチを招きながら、意志のあるボール──明確な意図とともに強い気持ちを込められたボールでこれを切り抜け、7回無失点で101日ぶりの勝利。小川淳司監督も「ピンチを招いたところのボールなんか素晴らしかった。あそこ(3回2死満塁)で(セ・リーグ本塁打王争いトップの)エルドレッドを三振に取るんだから、気持ちもボールも一番だったんじゃないかと思います」と賛辞を惜しまなかった。


 8月3日の中日戦(神宮)でも、小川は立ち上がりからやや制球に苦しみながら、7回を1失点で乗り切って今季5勝目。「今日は視野を広く持てたというか、1−2とか2−2でもストライクを取りにいかずに、低めで勝負するっていう意識を持った投球ができました。調子だけで抑えるんじゃなくて、考えて抑えていくピッチャーになっていきたいんで、ピンチでも冷静に低めに丁寧に投げられたっていうのは良かったと思います」と話すなど、調子が良くないながらも粘り強いピッチングができたのは、大きな収穫となった。


 ケガを機に見直しを進めている投球フォームは、小川の言葉を借りると「まだ発展途上」。思わぬ災難で長期の離脱を強いられたことには忸怩(じくじ)たる思いだったはずだが、それをマイナスのままにしておくことなく、“進化”という形で大きなプラスに変えようとしている。転んでも決してタダでは起きない──。それが小川泰弘という男である。

菊田康彦
菊田康彦

静岡県出身。地方公務員、英会話講師などを経てライターに。メジャーリーグに精通し、2004〜08年はスカパー!MLB中継、16〜17年はスポナビライブMLBに出演。30年を超えるスワローズ・ウォッチャーでもある。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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