「ラトゥの息子」が加わった大東大 個性豊かな集団でラグビー界に旋風を

向風見也

クルーガー・ラトゥら将来性豊かな選手たち

 切り込み隊長は2年生のSH(スクラムハーフ)小山大輝。向こう気の強さと瞬発力で密集の脇を突っ切り、春季大会の試合中は絶えず「コヤマ! コヤマ!」と相手に警戒されても「自分がマークされていたら他が空くということを考えてパスする」と動じない。

 小山の後ろから駆け込む突破力自慢の面々は、爆発力のある2年生CTB(センター)のホセア・サウマキ、細やかなステップを踏む4年生No.8(ナンバーエイト)のテビタ・ツポウ、50メートル走のタイムが5秒台のFL(フランカー)長谷川崚太……。いずれも身長185センチ超、体重100キロ前後である。密集ができればランナーが左右に散り、パスを呼び込む。指揮官の目指す「蹴らないラグビー」を具現化する。

 新戦力にはラトゥの息子がいる。クルーガー・ラトゥ。群馬県太田市で幼少期を過ごし、高校卒業までの6年間はニュージーランドのカンタベリー州でトータルスキルを醸成した二世ラガーは、「完璧じゃない」という英語を学び直すべく帰国。父が監督を務めていた2000年代中盤によく出入りしていたクラブで、センターを務める。こちらは「完璧」な日本語で言った。

「大東大の良さ、ですか?元気なところ。先輩、後輩とも遠慮なく、仲が良くて皆が明るいことです」

「何が出てくるか分からない」大東大の魅力

 そして、大東大そのものも、生来の良さを示すスタイルで復権へのプロローグを紡ぎつつある。若きラトゥは帰化申請済みで、同じく新人でトンガ出身のWTB(ウイング)岡新之助タフォキタウは日本人を母に持つ。外国人枠「2」というルールにのっとりながら、海外にルーツを持つ選手が4人同時に活躍できそうだ。

 帝京大や早大と比べると、チーム全体の「リアクションスピード」で劣っていると青柳監督は認める。ただ、「それを身につければ、自ずといい結果が出てくる。いいキャラクターを持っているので」とも言い切った。

 何を聞かれても概ね前向きに語る鏡も、こう展望を語る。

「何拍子もそろっている子なんてそうそういないんだから、まずはいいところを伸ばして、その後に悪いところを修正するって感じでいいんじゃないかな?全員が平均点ぐらいのところまでいて、そのうち3人くらいがその平均点を突き抜けていれば。うちはもう、その3人(にあたる個性)はいるわけだから、あとは他の選手が大学選手権に出てくるチームと遜色のない1対1を身につける。特に、タックルかな」

 大東大の魅力とは。黄金期の指揮官が言い当てた。「何が出てくるか分からない、一発がある、抜けないところを抜ける、ってところかな」。時代は変われど変わらぬクラブ文化を、いま、本当の意味で見つめ直している。

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著者プロフィール

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとなり、主にラグビーに関するリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポルティーバ」「スポーツナビ」「ラグビーリパブリック」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会も行う。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。

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