イチローにとってベストな役割は何か? 先発よりも“切り札”であることの意味

杉浦大介

今季1号で米国メディアも大きく報道

ブルージェイズ戦で今季1号スリーランを放ち、イチローは久しぶりに米国メディアで大きく報道された 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 開幕時の先発ローテーションの4/5が故障者リスト入りし、野手でも自身の標準以上のシーズンを過ごしている選手はほとんどおらず、チーム総得点もア・リーグ全15チーム中12位に過ぎず……。

 それでもプレーオフを争う位置に付けているのだから、2014年のヤンキースは健闘を続けてきたと言っていいのだろう。多くの選手が要所で働いてきたがゆえに、浮上が可能になってきた。そんなチームに、イチローも分かりやすい形で貢献したのが7月25日(日本時間26日。以下、すべて現地時間)のブルージェイズ戦だった。

「ゼロでなくて良かったという感じです」

 今季1号となる逆転スリーランを3回裏に放ち、チームを6対4の勝利に導き、試合後にはそんな正直なコメントも残した。ベンチでデレク・ジーターと笑い合うシーンが話題になり、その映像はインターネット上を席巻。イチローの勇姿は久々に米国メディアにも大きく報道される結果となった。

スタメン増も球宴後の不振は目に余る

 ただ……この日の活躍を除けば、今季中盤戦以降のイチローは順風満帆の日々を過ごしているわけではまったくない。

 故障者続出のチーム内で健康を保ち、規定打席不足ながら前半戦をチーム最高の打率で終えたのはさすがだった。しかし、後半戦では通算29打数3安打と低迷。打率も2割7分3厘(27日終了時点)まで下がり、その役割についての意見が再び周囲で飛び交うようになっている。 

「いかに今後の日程が容易で、ア・リーグ東地区が強力でないといっても、明らかに終わった選手のイチローをライトのレギュラー、長いイニングを投げられないクリス・キャプアーノを先発5番手で使うようでは、プレーオフにたどり着くことは難しいとブライアン・キャッシュマンGM(ゼネラルマネジャー)も分かっているはずだ」

 上記は『ニューヨーク・デイリーニューズ』紙のビル・マッデン記者の27日付けの記述である。

 イチローには少々厳し過ぎるようにも思えるが、かといって暴論でもない。他の選手のケガやトレードもあって6月下旬以降はスタメンが増えたイチローだが、6月は打率2割5分7厘、7月はここまで2割3分3厘とジリ貧。前述した初本塁打以外、特にオールスター以降の不振は目に余るレベルである。

 好不調の波はあるもので、出場機会が増えた疲れが40歳の身体に影響していると結論づけるのは短絡的かもしれない。ただ、イチローは過去3年連続で打率3割以下、出塁率3割1分以下に終わっているだけに、外野のレギュラーとしてはやはり物足りないと考えられてしまっても仕方ない。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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