IBF王者・高山、4団体制覇に挑む=8月のボクシング興行見どころ

船橋真二郎

WBOとの統一戦へ「一番望んでいた戦い」

8月9日(日本時間10日)のメキシコでWBOとの統一戦に臨むIBF世界ミニマム級王者・高山。日本人史上初の4団体制覇を目指す 【船橋真二郎】

「自分が一番望んでいた戦い。とても興奮して、ドキドキ、わくわくしています」
 IBF世界ミニマム級王者の高山勝成(仲里)が8月9日(日本時間10日)、メキシコ・モンテレイで日本人史上初となる世界タイトル4団体制覇に挑む。去る6月23日、フィジカルトレーニングをサポートしているケビン山崎氏が主宰する、東京・渋谷の『トータル・ワークアウト』で行なわれた発表会見で、高山が口にした言葉は心からの実感だろう。

 21歳でWBCタイトル、23歳でWBAタイトル(暫定)を獲得した高山は26歳になった2009年秋、“ワールドチャレンジ”を掲げ、JBC(日本ボクシングコミッション)を脱退。当時、非公認だったIBF、WBO制覇を目指して、戦いの舞台を海外へ移した。困難の果てに現在のベルトをメキシコで奪取したのが昨年3月31日(日本時間)。JBCが正式にIBF、WBOに加盟する1日前のことだった。その後、JBCに復帰し、今年5月には2度目の防衛に成功。「年末までに(WBOとの)王座統一戦が決まらなければ、階級を上げることも考えていた」と明かす高山にとっては31歳で迎える5年越しの“ワールドチャレンジ”成就のチャンスだ。

21歳の若手に持ち前の機動力を生かせるか!?

勢いに乗ると連打の止まらない21歳のロドリゲスに対して、持ち前の機動力を生かしたい高山 【写真:AFLO】

 今年3月、無敗のサウスポー、メルリト・サビージョ(フィリピン)を攻略し、ベルトを奪取したフランシスコ・ロドリゲスJr(メキシコ)はこれが初防衛戦。中出博啓トレーナーが「フィジカルが非常に強い」と評価するように、2階級上のフライ級でも戦ってきたロドリゲスは体格も大きい。それでも中出トレーナーは将来の転級を視野に入れて「昨年からサイズ的にはライトフライ級の選手を意識して戦ってきた」と、ライトフライ級が主戦場のベルギリオ・シルバーノ(フィリピン)、小野心(ワタナベ)との2度の防衛戦が格好の対策になったと自信も示す。加えて、シルバーノ、小野はともにサウスポー。頻繁に左構えにスイッチするロドリゲスに、その対策や課題が生きてくるだろう。

 とはいえ、21歳のロドリゲスは今が伸び盛り。自信の上積みもあるだろうし、昨年9月のローマン・ゴンサレス(ニカラグア)とのノンタイトル戦では、“軽量級最強の男”に終始押されながらも果敢に打ち返す場面もあり、気持ちの強さも証明した(7回TKO負け)。ひとたび連打がつながり出せば、手数が止まらないファイターでパンチ力も備える。高山としては、持ち前の機動力を生かしてサイドに回りながら要所に強いパンチを当てて、まずはロドリゲスを勢いに乗せないことがミッションになる。

完全アウェーのメキシコで集大成の戦い

 舞台となるモンテレイはロドリゲスの出身地。地元の大声援がWBO王者を後押しし、完全アウェーの容赦ない大ブーイングがIBF王者に浴びせられるだろう。だが、そんな環境も高山にとっては望むところでしかない。
「アウェーの地で勝てば、文句なしの勝者。本当の世界チャンピオンだと胸を張って帰って来られる。“ワールドチャレンジ”の原点に戻れる戦い」

 高山が14歳のときに出会って以来、2人3脚で歩んできた中出トレーナーは「ミニマム級で4団体をすべて制覇することで、(1階級1王者時代の)昔の世界チャンピオンと初めて肩を並べられると思っている」と言う。7月上旬に脳動脈瘤の手術を受けた中出トレーナーはメキシコにも同行して、高山に寄り添う。師弟に共通の思いは“真の世界チャンピオン”の証明。史上初の4団体制覇はミニマム級での集大成の戦いになる。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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