「K−1甲子園」に見た新生K−1の未来 「100年続くK-1」へ熱気に満ちた船出

長谷川亮

新生K−1の第1弾として開催された「K−1甲子園」。熱戦を勝ち上がった佐野(左)と平本が11月の決勝戦へ 【長谷川亮】

 新たに発足した「K−1実行委員会」による第1回大会「K−1甲子園2014」が21日、東京・新宿FACEで開催された。K−1甲子園としては2012年3月以来、2年4カ月ぶりとなる開催。大会の冒頭で前田憲作・新プロデューサーは「アマチュアをプロと同じぐらい大事に考えている」とあいさつを行ったが、実質的スタートをこの育成大会たるK−1甲子園で切ったことで、実行委員会の目指す姿勢がより明らかとなった。

プロ・アマ問わず選りすぐりの高校生猛者が集結

「K−1甲子園」に集まった未来のK−1ファイターたち 【長谷川亮】

 大会は朝11時の開会式を前に10時45分開場となったが、それ以前から会場ビルの周辺に観客が列を作り、なかなか会場におさまり切らない。場内には応援に駆けつけた保護者や選手の友人である高校生の姿も多く見られ、熱気と期待感とに開催がなかった2年の間もK−1甲子園が待たれていたことが実感された。

 5月29日に実行委員会の発足が発表され、エントリー期間は短かったものの、選考を経て選りすぐりのトーナメント出場者32名が決定。すでにプロデビューして活躍している者はもちろん、各種アマチュア大会で優勝を遂げている高校生猛者たちがひしめいた。

「甲子園」の名にふさわしい熱戦・熱闘の連続

Krush新人王の佐野はプロの意地を見せ決勝進出 【長谷川亮】

 試合は本戦2分・延長1分の短時間制で行われたが、その中で明確に差を出さなければならないため、選手はアグレッシブに戦いを繰り広げる。エキサイトして制御がきかず、レフェリーが制止した後も攻撃を繰り出してしまう選手も間々見られたが、どの選手も禁止されているつかみ行為は少なく、攻撃をまとめなければ勝利につながらないルールの特性をよく把握し戦っているようだった。

 大会では準決勝までを行い、前評判の高かった佐野天馬(神奈川総合産業高校、Krush新人王)と平本蓮(日出学園、アマチュア大会でジュニア時代から多数優勝)が決勝に進出。2人は11月3日に開催される「K−1 WORLD LEAGUE 2014」(東京・国立代々木競技場第二体育館)で雌雄を決することとなる。

 結果を見れば有力候補の2人が順当に勝ち進んだ形となったが、佐野は準々決勝で南野卓幸(平野高校)を相手に延長判定2−1、平本も準決勝で篠原悠人(関西大学第一高校)に再延長判定2−1と、ともに際どい一戦を制しての勝利もあった。試合時間が短いため、どの選手も勝負どころを逃さんとラッシュのように果敢に攻め、本戦2分とはいえプロ顔負けの試合も少なくなく、「甲子園」の名にふさわしい熱戦・熱闘が多かった。

甲子園ファイターたちに受け継がれる「K−1魂」

K−1 MAXで活躍した小比類巻氏がレフェリーを担当 【長谷川亮】

 負けてリングで涙を流す選手、反則による減点が響いて判定負けを喫し茫然自失とする選手とドラマも多く見られたが、好きな選手にK−1ファイター、将来の目標にK−1チャンピオンを挙げている選手たちを見ると、幼き日に見てきたK−1の存在・影響力が改めて感じられる。そして現在の格闘技界でもHIROYA、卜部功也、野杁正明といった甲子園出身ファイターがトップで戦っている姿を見ると、佐野や平本はもちろん、この日出場した選手たちが数年後にはプロの舞台を賑わせていることが確信を持って予想された。

 かつてのK−1は大規模会場での大会を連発し膨れ上がり過ぎてしまった印象があるが、そこで蒔かれた種は確実に甲子園ファイターたちに憧れや目標として宿っていた。選手募集から大会開催まで短期間であったにも関わらず、熱気に満ちたハイレベルな戦いが見られた今年の甲子園だっただけに、来年は地方予選を経て本大会という従来のシステムに戻しての開催が望まれる。
 今後も流行り廃りの影響を免れない“イベント”としてではなく、「100年続くK−1を」と前田プロデューサーが目指す確たる“文化”あるいは“競技”として、アマを重視する第1回大会で示した姿勢をブラさず、新K−1に期待したい。
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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