ダルがNYで見せつけた上質な投球、チーム低迷も「エース」の働きに期待

杉浦大介

釈然としない結末を迎えたNY登板

一度は試合再開が決定されたはずが、両軍監督による抗議などの間に再び雨が降り出し、試合は中止に 【Getty Images】

 まるでバケツをひっくり返したような大雨と、80年代の野球映画「ナチュラル」のラストシーンをほうふつとさせるような雷鳴とともに、日本時間24日(現地時間23日)に迎えたダルビッシュ有の“ブロードウェイ再演”は終わった。

 聖地・ヤンキースタジアムでのヤンキース戦で、4回1/3を投げて、4安打、2失点、5奪三振。序盤から変化球のキレの良さは感じさせたものの、3回裏にまさかのボークとガードナーの本塁打で2点を奪われ、1対2と逆転を許す。5回裏も1死二塁の場面で激しい雨が降り始め、2時間近く待ったあげく、結局はコールドゲームが告げられてしまった。

 「試合はできたと思いますし……。チームが負けたらもちろん悔しいですけど、これで負けなのかなと」

 試合後のダルビッシュの言葉通り、結末はもうひとつ釈然としないものだった。
 長い中断の後にゲームは一度は再開されるかと思われ、続投に意欲を見せるダルビッシュはマウンドに向かった。しかし、そもそもの対処が遅れたためにグラウンド状態が悪く、審判団と両監督がさらなる協議を開始。その間に再び雨が降り出すというお粗末な流れで、試合後には一部からヤンキース側の“陰謀論”まで飛び出したほどだった。

“陰謀論”が飛び出すのはエースの証し?

 ふと思い出したのは、今年のNBAファイナル第1戦でのこと。サンアントニオ・スパーズの本拠地アリーナで、エアコンが作動しないというアクシデントがあった。その際には脱水症状に陥ったマイアミ・ヒートのレブロン・ジェームスが左足にけいれんを起こし、ヒートは敗北。試合後、地元のスパーズが空調を故意に故障させたのではないかとの推測がささやかれたのだった。

 この時のレブロンと状況は大きく違うが、レンジャーズの大黒柱・ダルビッシュも相手の策略によって続投の機会を奪われたのか?

 いや、実際にはどちらのケースも会場側の不手際で、単なるアクシデントに過ぎなかったはずだ。ヤンキースのグラウンド整備員が強風のおかげでグラウンドにシートを張り切れなかっただけで、故意だなどと真剣に疑ったら憤慨されてしまう。

 しかし……。そんな声が出ること自体が、この日に先発したダルビッシュに対してのリスペクトだと言ったら少々こじつけに過ぎるだろうか。

 「明日はダルビッシュ有が先発だから、ヤンキースは今日のうちに勝っておいた方がいい」

 延長14回にもつれこんだ前夜のゲーム中も、ヤンキース自前のテレビ局であるYESネットワークの解説者がそんな意味の言葉を漏らしていた。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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