ラグビー日本代表に加わる「新戦力」 エディーHCは小瀧の成長を評価

斉藤健仁

来年のW杯に向けて競争激化

エディージャパンの恒例となった菅平合宿。来年のW杯に向けて厳しいトレーニングを行った 【斉藤健仁】

 テストマッチ(国際試合)10連勝を達成し、初めてIRB世界ランキングを10位に上げたラグビー日本代表は、7月14日から5日間の強化合宿を長野県上田市の菅平高原で敢行した。豪州出身の名将エディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)が就任してから恒例で、今年で3度目のことだった。

 来年のラグビーワールドカップ(W杯)を踏まえた強化であるとともに、11月に日本で対戦する、ニュージーランド(NZ)の先住民族の血を引く選手で構成されたマオリ・オールブラックスとの試合などに向けた強化合宿だった。
「マオリ・オールブラックスは、世界ランキング6〜7位に匹敵するチーム。アンストラクチャー(ターンオーバーやカウンターのような崩れた局面)からの攻撃を好むので、彼らと対戦するときはより、ストラクチャー(セットプレーからの攻撃)を重視した試合をすることです」(ジョーンズHC)

小野の復帰で「司令塔争い」が過熱

小野(左)はエディーHC(右)との面談を経て、日本代表に復帰した 【斉藤健仁】

 特に時間が割かれていたのが、自陣のセットプレーからのキックによる脱出と、春シーズンの課題の一つだったキックオフだ。こうしたセットプレーからの練習の中で「BKをリードしている」とキャプテンのFLリーチ・マイケル(東芝)が言うように、声を出して引っ張っていたのはNZ育ちのSO小野晃征(サントリー)だった。過去2年、チームの中心にいた司令塔だったが、春シーズンはスコッドから名前が消えていた。

「家庭の事情」で離れていた小野は言う。「結婚など向こう(NZ)でいろいろありましたが、リフレッシュすることができました。サントリーで良いプレーをしてから再チャレンジしようと思っていました」。だが、「どのポジションも3人くらい良い選手が必要」という指揮官は、コミュニケーション力、判断力に長けた小野への信頼は変わらず、面談の機会を設けたという。

「(面談で)エディーには日本代表でもサントリーでも頑張りたいと言いましたが、今回の合宿から呼ばれるとは思っていませんでした。10番、12番ができる選手も多く層が厚い。周りをうまく動かすなど自分のできることからやっていきたい」。2度目のW杯出場へ向けて、迷いのない、すっきりとした表情で語った。

 やはり存在感を見せた小野の再加入で、春シーズン、10番と12番を務めていた立川理道(クボタ)と田村優(NEC)、WTBからSOにコンバートされた廣瀬俊朗(東芝)、若手CTB中村亮土(サントリー)、秋にはケガから復帰できる見込みのクレイグ・ウィング(神戸製鋼)と、一気に競争は激しくなった。

CTBベネット「日本代表でW杯の舞台に」

13番としての活躍が期待されるベネット 【斉藤健仁】

 他にも今回の合宿で注目されたのはWTBカーン・ヘスケス(宗像サニックス)と、CTBティム・ベネット(キヤノン)だ。ヘスケスは他のWTBにはない力強さと決定力が武器で、ベネットはオーストラリアU20代表経験のあるスキルの高い23歳の若手CTB。残念ながら育成選手を除き、指揮官のお眼鏡にかなった日本人BKはいなかったようだ。

 ベネットは、来年で居住3年の代表加入条件をクリアするため、まだ試合には出場できないが、マレ・サウ(ヤマハ発動機)、松島幸太朗(サントリー)とともにアウトサイドCTBとしての期待がかかる。「われわれの求める13番のスキルを持っている」とジョーンズHCが言うように、合宿ではレギュラー組に入ってプレーし、スキルの高さを披露。そんなベネットは母親がフィリピン人で、兄もフィリピン代表であるが、フィリピン代表入りは断った。「日本代表でW杯の舞台に立ちたい。今回の合宿は、最初のステップ」と桜のジャージに意欲を見せた。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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