スアレスの加入は吉と出るか凶と出るか!? エンリケ監督率いる新生バルサの挑戦
南米最強3トップへの期待以上に……
8100万ユーロ(約112億円)もの移籍金でバルセロナに移籍したスアレス。クラブの期待に応え、新たなスターとなるのか 【写真:Action Images/アフロ】
スポーツディレクターのアンドニ・スビサレッタも同席したこの日の会見にて、最も多かったのは新加入選手とさらなる補強についての質問だ。中でも8100万ユーロ(約112億円)もの移籍金を払って獲得したルイス・スアレスの加入については、現状リオネル・メッシ、ネイマールと織りなす南米最強3トップへの期待以上に、問題児の加入を不安視する声の方が多く聞こえてくる。
最大の懸念は、先のW杯でも見られた“かみ癖”に代表される精神的な未熟さだ。
アヤックス時代の2010年に初のかみつき事件を起こして7試合の出場停止処分。リバプールに移籍した翌11年には、パトリス・エブラへの人種差別発言で8試合出場停止。昨年のチェルシー戦では2度目のかみつき事件を起こして10試合出場停止。そして今回のW杯における3度目の再犯で、代表戦9試合出場停止と4カ月の「サッカーに関わるあらゆる活動の禁止」という厳罰を受けた。
処分が解ける10月末まで試合どころかチーム練習への参加も、加入時のプレゼンテーションすら許されないスアレスに対し、ジョセップ・マリア・バルトメウ会長は「彼は自分のミスを認めた。バルサは彼が再びフットボール界で成功できるようサポートするつもりだ」と“社会復帰”を全面的にサポートする意思を示している。だが、これまで彼はそんなクラブの努力を何度も裏切ってきただけに、再び愚行が繰り返される可能性は十分にある。
決して消えることのない“悪童”のイメージ
そしてもし本当に反省しているとしても、その汚名が世界中に認知されてしまった今、彼はどこに行っても決して消えることのない“悪童”のイメージを背負い続けなければならない。それもフェアプレー精神を重視するプレミアリーグよりずっと狡猾(こうかつ)で陰険なやじや挑発行為が横行する、リーガ・エスパニョーラの舞台で。
そのことを誰よりも懸念しているのは、自身もレフェリーの足を踏みつけて2カ月の出場停止処分を受けた経験がある“元悪童”、フリスト・ストイチコフ(元バルセロナ)だ。
「かみつき事件のイメージは生涯つきまとう。彼の“前科”はバルサでプレーする上で問題になるだろう。あらゆるライバル、レフェリー、メディアが彼の人生を苦しめるはずだ。挑発行為やメディアの注目を受けながら、常に緊迫した精神状態でプレーしなければならないのだから」
実際、英国メディアから受ける執拗(しつよう)なバッシングには今も苦しんでいる。
「リバプールはクラブのイメージを汚し続けてきた選手を手放せたことを喜ぶべきだ」
「かみつき男、人種差別主義者のペテン師、といった汚名を持つ恥ずべきストライカーが犯した(ジョルジョ・)キエッリーニへのかみつき行為は、これまで彼を大いにサポートしてきた誇り高きクラブに対する最後の侮辱となった」
これは先日、『デイリーメール』の電子版が彼のバルサ移籍を伝えた文面だ。スアレスがW杯でイングランド代表相手に2ゴールを決め、グループ敗退に追い込んだことに対する恨みもあるのだろう。だが、それを差し引いても英国メディアの「スアレスたたき」は行き過ぎな印象がある。