ダルの超遅球カーブに見た未来への期待 新たな物語が加わった“夢の球宴”

杉浦大介

3年目の初登板、球宴の意味を理解していたダル

初の球宴マウンドに上がったダルビッシュ。投じた14球のうち、57マイルのスローカーブが話題を呼んだ 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

“夢の球宴”と呼ばれるオールスターは、世界中のベースボールファンに普段は現実的ではない夢を見せるファンタジーの舞台である。

 その夢とは、リーグ最高の強打者vs.好投手の対決であったり、間もなく現役を退く英雄への球界を挙げての送別セレモニーであったり。あるいは、実力派投手がメジャーでも他に使い手の少ない持ち球を披露したり。

 メジャーデビューから3年連続でこの大舞台に選ばれてきたダルビッシュ有は、オールスターの意味をすでによく理解していたのだろう。

 日本時間7月16日(現地時間15日)、ミネソタ・ツインズの本拠地ターゲット・フィールドで行われた2014年のMLBオールスター。ダルビッシュは3対2でア・リーグがリードした3回表に初登板し、先発したフェリックス・ヘルナンデス(マリナーズ)、2番手のジョン・レスター(レッドソックス)という球界を代表するエースたちとの豪華リレーの一角を担った。

見せ場を作った91キロのスローカーブ

 過去2年は諸事情で登板がかなわなかったダルビッシュにとって、初めての球宴のマウンド。そこで投じた14球の中で最も話題を呼んだのは、この日に全投手が投げた中で最も遅い57マイル(約91キロ)のスローカーブだった。

「持ち味の1つなんで、カーブは。1球くらい投げたいとキャッチャーにもマウンドで言ってましたし。球場のファンが喜ぶ球なので、今日は見せることができて良かったです」

 後にそう振り返ったダルビッシュがその球を投げたのは、前半戦で打率3割4分5厘、21本塁打というMVP級の成績を残したトロイ・トロウィツキー(ロッキーズ)への4球目。2ストライク、1ボールと追い込まれていたトロウィツキーは、驚いたような顔をして見送ったが、惜しくも内角高めに外れるボールだった。

「あんな球が来るとは思わなかった。三振しないで良かったよ。そうしていたら何度もリプレイが流されていただろうからね」

 結局は左飛に倒れた好漢、トロウィツキーの言葉はあまりにも正しい。ナ・リーグ有数のスラッガーを見逃し三振に取っていたら、ダルビッシュの超遅球は今オールスターの見せ場の1つとなっていただろうからだ。

1/2ページ

著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

新着記事

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント