亀田和毅が本場ラスベガスで上々デビュー=7回KO勝利にアメリカメディアも高評価

杉浦大介

TV解説者は「素晴らしい成功を収めた」

本場アメリカのラスベガスデビュー戦を7回KOで飾り、2度目の防衛に成功したWBO世界バンタム級王者・亀田和毅 【Getty Images】

「亀田が再びアメリカで試合を行なうなら、ぜひ見てみたい。彼のハンドスピードは素晴らしい。特に(中盤以降に)積極的になってからは、見事な成功を収めた」   
 亀田和毅のラスベガス・デビューを目撃したあと、試合を中継したメガケーブル局『Showtime』の解説者はそう語った。この日に初めて“カメダ・ブラザーズ”の末っ子のファイトを見たアメリカのファンは、恐らく誰もが似たような感想を抱いたのではないか。

 7月12日、ラスベガスのMGMグランドガーデン・アリーナで行なわれたWBO世界バンタム級タイトル戦で、王者・亀田は同級1位のパンルアン・ソー・シンユー(タイ)に7ラウンド1分35秒KO勝ち。現代ボクシングのメッカと言える会場で2度目の防衛を果たしただけでなく、内容的にもなかなかのものを見せてくれた。

4回にダウン寸前からの7回に逆転の左ボディ

 序盤は軽快に足を使ってジャブを突いた亀田だったが、第4ラウンド開始直後に相手の右フックをカウンターで浴びて腰が落ちる。その後もしばらくはダメージが感じられ、パワーで上回るパンルアンに押し切られるかと思えた。

 しかし、ここでも慌てず射程外に出て追撃を避けると、ときに高速連打を放って回復までの時間稼ぎ。ダメージが抜けた6回にリズムを取り戻し、7回は自ら距離を積めて見せ場を作ると、最後は完璧なタイミングで左ボディを打ち込んでフィニッシュしてみせた。

 メリハリの効いた試合展開になったおかげで、観ているものを飽きさせることはないまま。4回にダウン寸前に陥ったことも半ばプラスに働き、本場のファンにアピールする好ファイトを見せるに至った。

カネロの前座ながら試合前はほとんど話題なし

7回KO勝利に、セコンドの兄・興毅らと喜ぶ和毅 【Getty Images】

 サウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)対エリスランディ・ララ(キューバ)というビッグファイトの前座ながら、亀田対パンアルン戦の事前のアメリカ国内での注目度は低かった。

 ファイトウィークが始まっても、話題になることはほとんどなし。テレビ中継も4試合のペイ・パー・ビュー枠内には含まれず、『Showtime』が無料放送するプレビュー番組内での放送に止まった。アメリカのファンはメインイベント寸前に会場に入る傾向にあるため、テレビ画面を見る限り、亀田のファイト時はまだアリーナはガラガラ。そんな背景もあって、『Showtime』のアナウンサーは知名度の低い亀田の紹介を試合中も続けていた。

試合途中には「亀田兄弟はロックスター」と紹介

「亀田兄弟は日本では“ロックスター”のような存在だ」「3兄弟が同時期に世界タイトルを保持した記録はギネスブックに載っている」「大人気の3人の中でも、3男のトモキが最も才能があるとみなされている」

 現在の亀田ジムは事実上の活動停止処分にあり、3兄弟は国内で試合ができない状態にある。その事情に関しても、「カメダ・ブラザーズは多くの騒ぎに巻き込まれ続けている。なぜ日本人ボクサーがアメリカで防衛戦を行なっているかといえば、国内ではライセンスを剥奪されたからだ」と適切に説明されていた。

“ロックスター”という指摘はやや大げさだが、それ以外の形容はおおむね公平。このように背景が語られなければいけないほどだから、日本では物議を醸しがちな亀田兄弟への必要以上の先入観はアメリカのファンにはなかった。それゆえに、現地の人々はその実力に冷静な評価を下すことができたに違いない。

「再びアメリカで放送されるだけの資質がある」

内容的にも見せ場の多い試合だった亀田和毅。パンチのハンドスピードにはボクシングの本場アメリカで高い評価を得た 【Getty Images】

「カメダはジャブとパワーパンチで成功を収めた。試合を通じて54%(74/137)のパワーパンチをヒットさせ、ジャブも効果的。パンルアンは粘り強かったが、亀田がトレードマークのボディブローを当てた瞬間に試合は終わった。才能に満ちたこの若いファイターの試合は、再びアメリカのテレビで放送されるだろう。彼はそれだけのスタイルと資質を持っている」
 試合後には、いつもウィットの効いた記事を書くボクシング・ウェブサイト『バッド・レフトフック』のスコット・クライスト記者はそう記していた。筆者の知人記者に感想を求めても、非常に好意的だったことを付け加えておきたい。

亀田陣営次第では今後もチャンスあり!?

 今回の一戦だけで、亀田がアメリカ国内でも注目の軽量級ボクサーになったというわけではもちろんない。もともと軽量級への興味が薄いこともあり、『ESPN.com』や『BoxingScene.com』のような大手媒体での亀田戦の扱いは小さかった。「日本人としては2人目のラスベガスでのタイトル防衛」といった母国限定の話題にも、現地の関係者は興味は示さない。

 ただそれでも、勝敗だけではなく内容も問われるアメリカでの初戦で、見せ場の多い試合を展開し、最終的にKO勝ちした意味は小さくはない。クライスト記者の予想通り、本人たちが望めば『Showtime』からまた試合のチャンスをもらえるのではないか。亀田陣営がもしも今後にアメリカ進出を望んでいるのだとすれば、まずは好スタートを切ったと言って良かったはずだ。
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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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