全員で戦い、3位を勝ち取ったオランイェ 世代を問わず成長を続けた選手たち

中田徹

7試合で得点者9人、毎試合ヒーローが生まれる

大会前は期待値の低かったオランダ。大会中にも成長し、全員で3位を勝ち取った 【写真:ロイター/アフロ】

 中2日の強行日程もなんのその。オランダはブラジルを3−0で下し、ワールドカップ(W杯)を3位で終えた。『アルヘメーン・ダッハブラット』紙の見出しには「オランイェ、銅メダルに喜ぶ」という文字が踊り、ディルク・カイトとアリエン・ロッベンが満面の笑みを浮かべて銅メダルを誇らしげに見せている。オランダサッカー協会(KNVB)ディレクター、ファン・オーストフェーン氏は「4年後は金メダルだ」と野望を語る。オランダは“メダル”という言葉に沸いている。

 今回のオランダ代表は、過去の歴史の中でも最も期待値の低いチームだったと言われている。ところがふたを開けてみると連戦連勝。コスタリカ戦ではPK戦用GK(ティム・クルル)投入という奇策が当たる物語性もあった。エールディビジの無名選手がたくましくなっていく様や、チームの一体感あふれる姿にシンパシーが集まり、準決勝のアルゼンチン戦は国民1600万人のうち、900万人がテレビを見ながらオランダを応援した。これは歴代の記録を更新するものだった。

 5勝2分、得点15、失点4という数字にはただ驚くばかりだ。世界的スーパースターのロビン・ファン・ペルシが4ゴール、ロッベンが3ゴール、クラース・ヤン・フンテラールとウェスレイ・スナイデルがそれぞれ1ゴール決めたのはさすがだが、今回のオランダにとって、より価値を帯びるのが世界的には無名の選手たち5人のゴールだ。メンフィス・デパイ(2ゴール)、ステファン・デ・フライ、レロイ・フェル、ダレイ・ブリント、ジョルジニオ・ワイナルドゥムの名前が、W杯の得点者リストに載ることになろうとは誰が予想しただろうか。7試合で9人もの得点者が生まれたということも、今回のオランダが全員で戦い、毎試合異なるヒーローが生まれたことを示している。

大会中に成長を続けた守備陣

大会中に成長を続けた守備陣。デ・フライ(右)はクラッキを相手にも安定した守備を披露した 【写真:ロイター/アフロ】

 守備は劇的な改善を見せた。大会序盤から、オランダの守備はかなり頑張ってはいたものの、とても危なっかしいものだったのも確か。オーストラリア戦では2失点を喫し、その他の試合でもやや運が味方したところもあった。しかし、準々決勝のコスタリカ戦、準決勝のアルゼンチン戦、3位決定戦のブラジル戦と、オランダの守備は相手チームのいら立ちが伝わってくるほど固くなり、3試合連続、合計330分間に渡って無失点を記録したのだ。

 元々、ルイ・ファン・ハール監督が4−3−3から5−3−2に切り替えた意図の1つに、中央の守備をセンターバック(CB)3枚で固めて、個々の実力不足を補う点があった。ところが彼らは大会中に成長を続け、1人でもしっかり相手の攻撃をストップできるようになっていた。特にデ・フライはアルゼンチン戦でもブラジル戦でも、クラッキ(名選手)を相手に、自分の間合いに持ち込みながら安定した1対1の守備を披露、さらにフェイントやドリブルを駆使して相手をかわして、落ち着いたフィードを見せていた。3位決定戦でのパフォーマンスはチアゴ・シウバやダビド・ルイスより上だった。

 また、ノーミスで大会を終えたGKヤスパー・シレッセンの健闘も称えたいし、ブリントは外国メディアに強く印象を残した選手だった。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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