ファン・ハールが導いた誇るべきベスト4 国内の若手主体で作り上げたオランダ代表

中田徹

ファン・ハールが作りあげたクラブのように緻密なチーム

ファン・ハール監督は戦術練習を徹底し、まるでクラブのように緻密なチームを作り上げた 【写真:ロイター/アフロ】

 ファン・ハール監督は5月7日から国内リーグ組を招集して第1次合宿を敢行し、4−3−3から5−3−2フォーメーションに変える戦術練習を徹底した。GKヤスパー・シレッセン、CBヨエル・フェルトマン、ステファン・デ・フライ、ブルーノ・マルティンス・インディ、右ウイングバックのダリル・ヤンマート、左ウイングバックとMF兼任のダレイ・ブリント、MFクラシーによる守備のベースはこの頃できたのだ。エールディビジ勢に、主将のファン・ペルシーを加えたメンバーは5月17日にエクアドルと親善試合を行い1−1で引き分けている。

 その後のポルトガル合宿から外国でプレーする選手たちもそろい、かなりの好ムードの中、5−3−2フォーメーションが仕上がっていった。壮行試合となったウェールズ戦ではオプションの4−4−2をテストするなど、オランダは事前準備の段階でやれることをやりきっていた。エールディビジ勢がCL、ELに勝てない分、オフが長いのをうまく利用し、まるでクラブのように緻密なチームをファン・ハール監督は作ったのだ。逆にスペインは、国内リーグ勢の成功の代償を代表チームが払う事となった。W杯初戦で生まれた5−1というドラマはこうして生まれた。

結果で証明したエールディビジのレベル

 その中でも悔しい思いをしたのがクラシーだった。ポルトガル合宿で、彼はレギュラー当確と目されていた。その高いサッカーセンスは中盤のコントローラーとして最適で、ナイジェル・デ・ヨングと共に中盤の底でプレーすると見られていた。しかし、ファン・ハール監督が最終的に選んだのはジョナサン・デ・グズマンだった。その後も指揮官はジョルジニオ・ワイナルドゥムやブリントを、クラシーより優先した。5−3−2はかなり守備にアクセントを置いたシステムなので、パワーに劣るクラシーの抜てきに指揮官も悩んだのだろう。

 しかし、今大会22番目の選手としてクラシーが準決勝の62分から投入された。
「(そけい部の負傷から復帰したばかりの)デ・ヨングに対して、リスクをとりたくなかった。あの時間帯、中盤で彼がフリーマンになっていた。その状況でプレーするクオリティーを持っているのはクラシーだった」(ファン・ハール監督)

 クラシーが入ってからオランダはポゼッションを再び高める事に成功し、やや優勢な時間帯を作った。こうしたエールディビジ勢のやりくりを絶え間なく行ったのが、今回のオランダ代表だった。

 ディルク・カイトは言う。
「今回のオランダ代表は、半数がエールディビジの選手で占められていた。それで準決勝まで残ったのは誇っていい。決勝戦に進むに十分値するチームだった」

 1年前、GKシレッセンやDFフェルトマンに至っては、2部リーグを戦うアヤックスリザーブチームの一員だった。今回の代表チームには10年秋、PSVに0−10と大敗したフェイエノールトのメンバーだった者も多い。そんな彼らが、決勝のマラカナンの舞台まであと一歩というところまで来た。今大会中にブリントが言ったように、エールディビジは皆が思うほど、レベルは低くないのかもしれない。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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