小林可夢偉を待つ、かくも厳しい未来 希望の光は…来季復帰のホンダか

田口浩次

可夢偉の状況はさらに悪化、それでも結果を

第9戦イギリスGPでは15位。厳しい状況に追い込まれたが、それでも可夢偉は結果で価値を証明するしかない 【写真:ロイター/アフロ】

 すでに売却契約は履行され、ケータハムはフェルナンデスの手を離れた。フェルナンデスとの関わりでスポンサードしていた企業も続々と離れるだろう。となると、気になるのが今後の可夢偉の動向だ。“ピラニアクラブ”と表現されているF1の世界で、「ドライバー等に変更はない」という新チーム代表の言葉をうのみにはできない。

 考えられる1つの可能性は、体制を含めた可夢偉周辺の状況がさらに悪化することだ。実はザウバー在籍時代にも、可夢偉はチームメートに対して明らかに待遇面で差をつけられていた。当時、ザウバーへのサプライヤー企業にいたスタッフから、可夢偉とチームメートが仕様するマシンパーツは、1つは新品、1つは中古を組み直したものという話を聞いた。これはすでに運営に苦しんでいたザウバーがコストカットのため、本来ならばより速いドライバーに良いパーツを集中しなければいけないのだが、可夢偉に集中させられないチーム内資金面での事情があったのだという。今回もまた、チーム側は可夢偉の力量を評価していても、それをサポートするだけのリソースを集中できない、ザウバー時代より厳しい状況を迎えることになるだろう。

 さらに言えば、新しいチーム代表はオランダ人のアルバースであり、現在ケータハムがリザーブドライバー契約を結ぶのはオランダ人のロビン・フラインスだ。もしフラインスが母国オランダの企業からサポートを得ることができれば、シーズン途中でのドライバー交代も不可能ではない。しかも、フラインスは速さにも定評がある。追加資金を持ち込める“速いドライバー”を拒絶する理由は見当たらない。今後の可夢偉は、契約内容は運を天に任せ、より厳しい状況に追い込まれたマシンのまま、結果でドライバーの価値を証明するしかない。

マンセル「ホンダは可夢偉を乗せるべき」

 こう書いていくと、可夢偉の状況がいかに厳しいかを再認識するばかりだが、希望を見いだすとしたら、やはりホンダの存在に行き着く。くしくも、イギリスGPのパドックでは、10月の日本GPにゲストとして来日することが決定しているナイジェル・マンセルと可夢偉の対談が行われた。このときマンセルは、個人的な意見と前置きをしつつも、「ホンダは可夢偉を乗せるべき」とコメントした。
 これをリップサービスと言うのはたやすいが、母国イギリスで抜群の人気を誇り、世界中のグランプリで愛されたマンセルはこう見ているはずだ。日本での人気と実力は申し分なく、そのドライビングスタイルから世界にも可夢偉のファンは多い。それだけに、可夢偉とのタッグは、来季からF1に復帰するホンダにとっても、F1全体にとっても、メリットがあると。

 可夢偉の価値をホンダがどこまで高く見積もっているかは分からない。来季はマクラーレンのみの独占エンジン供給も決定している。だが、それでも……可夢偉にワンチャンスの運を与えてほしい願っている日本のファンは多いはずだ。

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