ベスト4の顔ぶれに見る“W杯の真実” 伝統国が高いノルマを達成し続ける理由
勝利が義務づけられた開催国ブラジル
勝利が義務づけられた立場のブラジルは、エースのネイマールに頼ることで数々の困難を乗り越えてきた 【写真:ロイター/アフロ】
ただし、もしライバルチームが前半の猛攻を耐え抜くことができれば、後半は勝利が義務づけられた地元チームが一転して精神的なプレッシャーに苦しむことになる。PK戦の末に辛くも勝利を手にしたチリ戦は、まさにそんな展開となった。
今大会を通して素晴らしい戦いを見せ、世界中を驚かせてきたコスタリカには準決勝まで勝ち進むチャンスがあったものの、より勝利にふさわしかったのはPK戦を制したオランダの方だった。各ラインに1人以上のクラック(名選手)を擁し、質の高いフットボールをもってダークホースと恐れられていたベルギーもまた、伝統国アルゼンチンとの準々決勝ではほとんど何もできなかった。
そして長き伝統を持つフランスも、世界的強豪であるドイツとの対戦で敗退を余儀なくされた。手堅く、各ラインに質の高い人材をそろえるドイツは、南米開催のW杯でヨーロッパのチームが優勝した前例がないことは承知の上で、90年以降、手が届きそうで届かないタイトルに再び近づこうとしている。
決勝は毎回ほとんど同じ顔ぶれ
ドイツは突出したスターがいない反面、すべてがそろっているチームだ。彼らはパワーやスタミナといった伝統的な強みに加え、移民2世の選手たちの台頭によって生じたテクニックの向上により、美しいパスワークによる連動性の高いプレースタイルをも身につけた。
オランダは策士ルイス・ファン・ハールのクラシカルな組織的プレー、そしてウェスレイ・スナイデル、ロビン・ファン・ペルシー、アリエン・ロッベンのトライアングルによる刺すような速攻がミックスされたチームだ。そしてセルヒオ・アグエロの負傷に続いてアンヘル・ディ・マリアを失うなどトラブル続きながら、アルゼンチンには今大会の顔となるべきリオネル・メッシがいる。
伝統国であることだけでは足りず、ベースとなるテクニックの高い選手を擁することも重要な要素である。だが結局、毎回決勝まで勝ち残るのがほとんど同じ顔ぶれであることもまた“W杯の事実”なのだ。
(翻訳:工藤拓)