ポゼッションサッカーはまだ終わらない ドイツ・レーブ監督の施した戦術の微調整
ポゼッション志向のチームが敗れる中、準決勝進出を果たしたドイツ。その秘密は、レーブ監督が練り出した戦術のマイナーチェンジにあった 【写真:ロイター/アフロ】
そんな中、ポゼッションを基調とするサッカーのドイツ代表が準々決勝でフランス代表を1−0で下し、準決勝に駒を進めている。その秘密はどこにあるのか。ヒントは監督ヨアヒム・レーブが練り出した戦術のマイナーチェンジにあった。
論理的な戦術変更
では攻撃はどうだろうか。守備を固める相手に対していくらボールをキープしたところで攻撃の糸口は作れない。とはいえ闇雲なドリブルや縦パスでは、相手にボールをプレゼントするようなものだ。そこでキープ力と動き出しの良さが長所のトーマス・ミュラーを中心に、攻撃陣の頻繁なポジションチェンジで揺さぶりをかけるやり方を取った。ドイツ代表チーフスカウトのウルス・ジーゲンターラーは「ポゼッション率自体が大切なわけではない。ただボールを持たされているだけでは得点はできない。重要なのはボール・プログレッション(ボールの前進)」と強調していたが、彼らにとって大事なのは「ポゼッションをする」ことではなく、「どのようにポゼッションからボールを前に運ぶか」だ。理想だけを追い求めるだけでは、頂点にたどり着けないことを過去の大会で骨身に染みて知っている。現実的なスパイスを混ぜ込むことで結果を出している。決勝トーナメント1回戦でも素晴らしい抵抗を見せたアルジェリアに苦戦はしたが、相手の一瞬のスキを見逃さずに得点を取り、勝ち進んできた(2−1)。
フランス戦は戦い方をさらに変更
そんな勢いのあるフランスを相手に、ドイツはがらりと戦い方を変えてきた。風邪でアルジェリア戦を欠場したマッツ・フンメルスが復帰したとはいえ、これまで通りの布陣ではビルドアップで相手のプレスを受け、前にボールを運べない事態が危惧された。そこで攻守両面で機能性を上げられるラームを右SBに、そして守備力だけではなく縦への推進力のあるサミ・ケディラ、ゲームコントロールに長けたバスティアン・シュバインシュタイガーをダブルボランチで起用。またフィジカルにも強いCBを置くフランスに対して、しっかりと攻撃のポイントを作れるミロスラフ・クローゼをFWに置いた。