書かれ始めたハメス・ロドリゲスの神話 母国の英雄バルデラマが跡継ぎと認めた男
「ファルカオ以上のヒット」と呼ばれる
モナコでは序盤に苦労したハメス・ロドリゲス。しかし、すぐに「ファルカオ以上のヒット」と呼ばれるようになった 【VI-Images via Getty Images】
まだ幼さを残す顔に笑みを絶やさないこの好青年は、22歳という若さながら、モナコ参入決定直後に長女サロメの誕生を迎え、いまや一児の父でもある。自信と謙虚さを兼ね備えた彼は、地に足をつけた若者だ。プレー面で言えば、パスの供給者がいなければゴールできない、いわば生粋のセンターFWのファルカオより、チャンスを生み出し、必要とあらば自ら決めることもできるJ・ロドリゲスのような選手のほうが、ある意味で利用価値が高い。彼の獲得が「ふたを開けてみればファルカオ以上のヒット」と呼ばれるようになるには、シーズンの半分も必要なかった。
もっともそれは、母国コロンビアでは新しい発見ではない。コロンビアの偉人“エル・ピベ(少年)”ことカルロス・バルデラマは、このW杯を待たずして、「コロンビアにはもはやエル・ピベ二世などいらない。なぜならハメスこそが、長いこと代表チームに欠けていた神童だからだ。概してプレーに一貫性があり、並外れた才能に恵まれ、何より私が長年この世界で見てきたどんなプレーヤーよりも熱い情熱を持っている。ハメスは史上最も偉大なコロンビア人プレーヤー、存在する中で最も偉大なプレーヤーのひとりとなる潜在能力を持っている」と明言していた。
「バルデラマさんは、もうかなり前から、僕のことを跡継ぎと呼んでくれていて、僕はそのことをすごく誇りに思っている」。まだあどけなさの残る顔をほころばせ、J・ロドリゲスは言う。「エル・ピベこそ最強だから、彼の言葉には大いに励まされるよ。でも代表にいるのは僕だけじゃない。僕らの強さの秘密は、チームの団結力なんだ」
コロンビア人も驚くその早熟度
半面、アタックの要ファルカオを故障で欠くコロンビアがそれでも快進撃を見せていること、J・ロドリゲスがファルカオのようなFWの力を引き出すのを天職とするパサーであることから、「ここにファルカオがいたらどんなにすごかったか」という声も聞かれる。しかしいまや代表選手たちには、『もし』について語っている時間はない。
「ファルカオの欠場は大きな痛手だったが、J・ロドリゲスのような選手が輝くチャンスを与えるものでもあった。ハメスは今、彼の歴史書を書き始めた」と言ったのは、代表仲間のカルロス・サンチェスだ。J・ロドリゲス本人は、「僕らには夢がある。やってのけられるかは分からないけど、あとは精いっぱいやるだけだ」といつもの笑顔で言う。対ブラジル戦の結果がどんなものであるにせよ、今、ハメス・ロドリゲスの神話は書かれ始めた。