現地の外国人記者が見た今大会の日本代表 開幕前には大きな期待も「正直、失望した」
「日本の守りは集中力がなさすぎる」
ブラジル人記者も「日本の守りは集中力がなさすぎる」と苦言を呈していた 【写真:ロイター/アフロ】
コロンビア戦でアドリアン・ラモスにPKを与えた今野泰幸も「自分たちが我慢しきれなかった」と落胆の表情で語っていたが、一度劣勢に回った時に守備が崩されてしまうというのは前々からの課題だった。その象徴が昨年6月のコンフェデレーションズカップ。日本はブラジル、イタリア、メキシコにトータル9失点し、3戦全敗を喫した。この大会と今回のW杯の日本代表の戦いを連続して見ており、FIFAクラブW杯などでたびたび日本を訪れている日本通のブラジル人フリーランス記者、フェルナンド・バレイカ氏(日刊紙『Metro』に寄稿中)も「日本の守りは集中力がなさすぎる」と苦言を呈していた。
「今回の日本には大きな期待を寄せていて、レシフェまでコートジボワール戦を見に行ったが、試合結果には正直、失望した。ホンダのゴールでリードしていたのに、ドログバが入ってきた途端に崩れた。今のドログバはプレミアリーグ得点王を取っていた頃の輝きも鋭さもない。それでも崩されてしまうのは、守りに入った時に自信を持って戦えないから。そういう部分を含めて、集中力が欠けているのではないかと思う。
昨年のコンフェデ杯のブラジル戦でも、日本は1失点した後、ズルズルと失点を重ねた。その課題をザッケローニは1年かけてしっかりと修正しなければいけなかったのにできなかった。プレッシャーのかかる状態でも普通のプレーができなければ、W杯では勝てない」と彼は語気を強める。
日本のメディアの間では、パワープレーや岡崎慎司の左サイド、1トップ起用、あるいは大久保嘉人の先発抜てきなど、今大会のザッケローニ監督の采配を疑問視する声が高まった。しかし、バレイカ記者は「ザッケローニはイタリア屈指の戦術家として知られている。それでも采配ができなかったのは、チームに何か問題があったのではないか」と見ている。
改めて知らされた育成の重要性
日本は98年フランス大会に初参戦してから、2002年日韓、06年ドイツ、10年南アフリカ、そして今回と5回連続でW杯に出場。次の18年ロシア大会にも出れば、選手が3世代代わることになる。そこで今のホンダやカガワ、ナガトモ(長友佑都)ら以上のタレントが出てくるように、下の年代からの育成を強化しなければいけない。実際、今回の日本は若い世代の選手があまり出ていなかった印象が強い。
例えば、コロンビアを見ても、J・ロドリゲスは自国開催だった11年U−20W杯のエースとして母国を準々決勝へと導いている。そのまま海外へ出て経験を積み、代表チームの10番を背負うようになった。アルゼンチンのメッシにしても、かつてはU−20W杯で活躍した。スーパーな可能性を秘めた若手が年代別代表や海外リーグで戦うことでタフになり、どんな重圧の中でも国を背負って戦えるようになる。ザッケローニの指導にも限界はあるだろうし、やはり大事なのはこの失敗を踏まえて、どう新たな選手を育てていくかだと思う」
とバレイカ氏は日本の現状を踏まえつつ、育成の重要性を改めて強調していた。
実際、日本の場合はクラブ側の事情や海外移籍選手の増加によって年代別代表の活動が年々やりにくくなっている。遠藤保仁ら黄金世代が10代だった頃は、U−17、U−20、U−23代表を経てA代表になるのが順当な流れだった。だが、ロンドン世代を見ると、宇佐美貴史(バイエルン・ミュンヘン、ホッフェンハイムに在籍し、現在はガンバ大阪でプレー)や大津祐樹(現VVVフェンロー)など予選期間中にすでに海外クラブへ移籍する者もいて、日本国内の活動や海外遠征に思うように選手を呼べないケースも多かった。こうした環境の変化も加味しながら、卓越した個の力を持ち、試合を決定づけられる仕事のできる選手をいかにして育てていくかを今、われわれは真剣に考えるべきだろう。
外国人メディアがストレートに語った日本代表の現状から目を背けることなく、前向きな方向に生かすべき。そうすることで、日本のこの先のW杯成功が見えてくるのではないだろうか。