“名勝負”間違いなしのW杯準々決勝 「22歳の10番」対決など見どころは?

川端暁彦

マラドーナも超えた壁にメッシが挑む

メッシ(左)やディ・マリア(中央)が好調のアルゼンチン。屈強なベルギーの選手たちをどう崩すのか 【写真:ロイター/アフロ】

 日本時間の6日に実施される反対側の山では、まずアルゼンチンとベルギーが激突する。両国が国際Aマッチで対峙したのは、過去4度。その内2度がW杯での対戦だ。82年スペイン大会では開幕戦のカンプノウスタジアムで激突し、ベルギーが1−0で快勝。若きディエゴ・マラドーナを擁した前回大会の優勝国をたたきのめした。続く86年メキシコ大会では準決勝での遭遇となり、マラドーナの2得点で2−0とアルゼンチンが快勝。4年前のリベンジを果たしたチームは、そのまま世界王者へと駆け上がった。

 これ以降、両国の対戦はないわけで、アルゼンチン国民にとっては不思議な「良縁」を感じるカードかもしれない。マラドーナの再来と言われ、今やそれを超えんとするリオネル・メッシが力を示して勝ち残れば、その先に待つのは86年以来の戴冠ではないか。そんな期待感が高まるのも無理はない。

 今大会、個人的な優勝予想はアルゼンチンだったのだが、ここまでのあまり褒められない試合内容を含めて“アルゼンチンらしい”勝ち残りとなった。きっ抗した展開を最後に突き崩してしまうメッシとアンヘル・ディ・マリアという2大スターの存在感と、涼しい会場での試合が続いているために消耗が少ないであろう2点は、重要なアドバンテージと言える。一方、この準々決勝に向けては左SBのマルコス・ロホが出場停止となるのが不安要素である。

 対するベルギーは、米国とのシュート数50本を超える、まさに“殴り合い”を制しての勝ち残りとなった。今大会、いささか決定力不足の感もあるベルギーだが、GKティボ・クルトワと、ダニエル・バン・ブイテン&バンサン・コンパニの両CBで形成されるゴール前中央部は、まさに城塞。全体として身体的に恵まれた選手が多いこともあって、「攻め込まれても最後は体で何とかしてしまう」プレーはアルゼンチンのような小柄な選手が多いチームにとっては天敵となり得る。攻撃面では米国戦で決勝点を記録した21歳のFWロメル・ルカクの再爆発に期待したい。190センチ・100キロのボディから繰り出されるキャノン砲は驚異的だ。

オランダはポゼッション型に変身するのか?

 準々決勝の最後となる4カード目は、オランダとコスタリカの一戦。準々決勝では唯一、過去に親善試合を含めた国際Aマッチで対戦した経験がないカードとなった。

 今大会、5バックをベースにした堅陣からアリエン・ロッベン&ロビン・ファン・ペルシという大会最強の2トップを走らせるカウンターアタックが機能しているオレンジ軍団。5−1で圧勝したスペイン戦はその白眉(はくび)とも言える試合内容だったが、コスタリカとの試合は難しいゲームになるかもしれない。

 というのも、コスタリカもまた5バックをベースにした堅守速攻で勝ち残ってきたチームだからだ。オランダに対しても割り切った守備からの速攻を狙ってくることは想像に難くない。オランダは本来、ボールを握って相手を押し込むポゼッションゲームを得意とするチームではあるのだが、その「変身」がうまくいくかどうか。中盤の要であるナイジェル・デ・ヨングを負傷で欠くのも不安要素となる。

 対するコスタリカも、ラウンド16で退場となったストッパーのオスカル・ドゥアルテが出場停止。屈強な肉体に加えてフィード面でも貢献していたこの男の不在は、意外に大きなダメージとなるかもしれない。我慢の展開となることは必至なだけに、代役となりそうなジョニー・アコスタの奮闘に期待が懸かる。175センチとCBとしては小柄ながら、意外なほどの高さも持つ選手だ。

 過去、幾多の名勝負を大会史に刻み込んできた「W杯の準々決勝」。ベストゲームを選ぶのがすでに難しいほどの「名勝負乱発」となっている今大会だけに、どんなビッグゲームが誕生するのか。夜ふかししても損のなさそうな、そんな試合がそろったのは間違いない。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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