錦織のガッツポーズが物語る重圧の大きさ ウィンブルドンテニス
錦織が3日間にわたる精神戦を制す
ウィンブルドンで初のベスト16入りを決めた瞬間、両手を突き上げ喜びを爆発させた錦織 【写真:アフロ】
その2日前の6月28日、ファイナルセットの3−3で迎えた第7ゲーム、錦織のサービスゲームで日没により試合が中断。ミドルサンデーの休みを挟んでこの日の試合再開となった。
再開直後の第7ゲームにいきなりピンチを迎えた。15−15から打ち合いになり、ボレッリのフォアハンドがダウンザラインに走って15−30、さらに次のポイントも打ち負けて15−40と2本のブレークポイントを握られた。ファーストサーブが決まらない嫌な立ち上がりだったが、錦織はそこから踏ん張った。ボレッリはバックハンドも安定したスライスを持っているが、フォアハンドほどの威力はない。錦織は相手のプレッシャーを引き出すように丁寧にバックサイドを攻めて、この窮地を乗り切った。
ウィンブルドンのファイナルセットは、タイブレークのないロングゲーム。サービスゲームを先行する錦織が精神的には有利だ。5−4で迎えた第10ゲーム、相手の2本のバックハンドのミス、ダブルフォールトなどで錦織が最初のマッチポイントをつかむと、ボレッリにバックハンドミスが出て、3日間にわたる精神戦に終止符を打った。
勝負を決めたショット力の差
「中断のプレッシャーは、ランキングが上の錦織の方が大きかったかもしれない。自分も第4セットで勝てたという思いを2日間引きずって、難しかった」(ボレッリ)
「土曜日の夜は3−3から続きの夢を見たくらい、試合のことが頭から離れなかった。相手に押され気味の試合だったけれど、それでも勝てたのはとてもうれしい」(錦織)
ボレッリが先手を取った展開を振り返れば、日没中断は錦織に利したようにも見える。ボレッリは2−1でリードした第4セット、第10ゲームで15−30、第12ゲームで0−30とあと2ポイントまで迫りながら錦織に逃げられ、重苦しい気持ちで過ごしたミドルサンデーだっただろう。
錦織にしても、相手がシード選手ではなくラッキールーザーだったことを考えれば、同じようにプレッシャーは大きかった。勝った瞬間、両手を上げての喜びのポーズがプレッシャーを物語っていた。
錦織は次の4回戦で、ともに期待の若手として注目される23歳のマイロス・ラオニッチ(カナダ)と対戦する。対戦成績は錦織の2戦2勝だが、いずれも接戦。ラオニッチは持ち前のサーブが好調で、ここまで1セットも落とさず勝ち上がっている。
マレー、ジョコビッチらが順当に16強入り
女子では、第4シードのアグニエシュカ・ラドワンスカ(ポーランド)がエカテリーナ。マカロワ(ロシア)に、第16シードのキャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)がバーバラ・ザラボバ・ストリコバ(チェコ)にそれぞれ敗れる波乱はあったが、3年前の優勝者、ペトラ・クビトバ(チェコ)、昨年準優勝のサビーン・リシッキ(ドイツ)、台頭著しいユージェニー・ブシャール(カナダ)らは勝ち上がった。
(文:武田薫)
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