横山典とゴールドシップ、人馬一体の技=初コンビで重ねた会話と完璧な宝塚連覇
ライアンの時と同じくらい嬉しい!
レース後は横山典も厩舎スタッフも喜び爆発! 【スポーツナビ】
「馬もやっぱり賢いですよ。ソフトな仕上げで馬の気持ちを尊重しようということになったので、ちょっと重いのかなと思っていたんですけど、きょうの馬体重でマイナスだったのを見たときは、さすがだなと思いましたね」
相棒は完ぺきに仕上がった。あとは、気分良くゲートに入って、レースに集中してもらうだけ。その道程の一つ一つにも、横山典とゴールドシップにしか分からない濃密な会話が重ねられていた。
「なかなかアレコレとこっちが押しつけて言うのではなく、まぁ、お願いみたいな感じで言いながら、その中で僕のことを意識してもらいながらという感じです。攻め馬からパドックから、ポイント・ポイントで会話をしながらゲートまで行ったんですが、その一つ一つがうまくいきました。走るのは馬ですから、そこさえゴネなければ、ね。ゴールドシップがよく走ってくれましたよ」
レースは見ての通り、完勝だった。スタートはやや出遅れたものの、前走の天皇賞・春のようにレース前からパニックになった状態での出遅れではない分、大きな問題とはならない。横山典自らの誘導で前から4番手の位置を確保に行くと、その後は折り合いもぴったり。好位からきれいに抜け出す王者の競馬で、他の11頭をまったく寄せ付けなかった。
「メジロライアンで勝った宝塚記念と同じくらい嬉しいですね!」
7万人を超すファンの前で語ったこの言葉が、横山典の気持ちを一番よく現わしているのだろう。
秋は国内か、それとも海外か
秋のローテーションは未定、狙うは国内か海外か 【スポーツナビ】
「それに関しては、オーナーとの相談にもなりますし、第一はゴールドシップの体調。それを見てから決めていきたいです」
須貝調教師がこう語ったように、現時点では未定。今回の勝利で様々な選択肢と可能性が生まれたことは確かだが、それよりもトレーナーが最も喜んだのは、テン乗りとは思えない息の良さを見せた横山典とゴールドシップのコンビのことのように思う。チグハグな敗戦を重ねたこの1年は、それまでの主戦だった内田博幸の降板から1戦ごとにジョッキーを替えるなど、なんだか迷走しているようにも見えた。しかし、落ち着く場所がついに見つかったというべきか。
“人馬一体”の横山典とゴールドシップ。どの路線を選択するにせよ、もう迷路に入り込むことはないだろう。この宝塚記念は、新生ゴールドシップの船出でもある。
(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)