横山典とゴールドシップ、人馬一体の技=初コンビで重ねた会話と完璧な宝塚連覇

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新コンビ横山典とゴールドシップが宝塚記念を快勝、レース史上初の連覇を達成した 【スポーツナビ】

 JRA上半期を締めくくる初夏のグランプリ、第55回GI宝塚記念が29日、阪神競馬場2200メートル芝で行われ、横山典弘騎乗の1番人気ゴールドシップ(牡5=栗東・須貝厩舎、父ステイゴールド)が優勝。好位4番手追走から直線で力強く抜け出し、同レース史上初の連覇を達成した。良馬場の勝ちタイムは2分13秒9。

 ゴールドシップは今回の勝利でJRA通算19戦11勝。GIは2012年皐月賞、菊花賞、有馬記念、13年宝塚記念に続く5勝目、重賞は9勝目。騎乗した横山典は1991年メジロライアン以来となる宝塚記念2勝目。須貝尚介調教師は昨年に続く同レース2勝目となった。

 なお、3馬身差の2着には池添謙一騎乗の9番人気カレンミロティック(セン6=栗東・平田厩舎)、さらに1馬身1/4差の3着には福永祐一騎乗の8番人気ヴィルシーナ(牝5=栗東・友道厩舎)が入線。一方、川田将雅騎乗のGI6勝馬ジェンティルドンナ(牝5=栗東・石坂厩舎)は直線伸びず9着に敗れた。

「僕の言葉は邪魔でしかない」

まさに王者の競馬、須貝調教師は「人馬一体とはこのこと」と絶賛 【スポーツナビ】

 阪神ではさすがの強さである。これで当地では6戦5勝2着1回。スピードよりもタフさを要求されるコース形態はまさにゴールドシップにぴったりで、良馬場発表とはいえ週中の雨が残った重たい芝も持ってこいの好条件となった。さらに、「雨乞いのダンスをしたかいがあったよ(笑)」と須貝調教師の願いが通じたか、直前にもダメ押しのひと雨。何もかもがゴールドシップ完全復活のお膳立てとなった。

 しかし、単にレース条件や天気に恵まれて勝ったわけではない。横山典弘が言った。
「この馬の成績を見てもらえれば分かるように、まともに走りさえすれば……ね。そこだけに尽きますよ」
 持っている能力を出し切れば、この中で一番強いのは分かっている。ではこの稀代のクセ馬、どうすれば“まともに”走ってくれるのか――新コンビに指名された横山典に託された責任は大きかった。だが、東西随一の名手が出した答えは文句なしの100点満点だった。
「きょうのゴールドシップとノリちゃんを見ていたら、僕の言葉は邪魔でしかないなと思いました。内容うんぬんじゃなくて、人馬一体ってこのことだと思いましたね」
 須貝調教師がしみじみと口にした。

馬のことを理解し、自分のことを理解してもらう

返し馬に入るときも横山典とゴールドシップの間には濃密な会話が交わされていた 【スポーツナビ】

 指揮官がレース後、何度も言葉にした横山典とゴールドシップの“人馬一体”。これは何もきょう突然にうまくいったわけではない。ジョッキー自身は「たまたまの部分もあります」と謙遜するものの、やはり一朝一夕に作れるものではないだろう。

「どの馬でもそうなんですが、たとえば初めて会った人といきなり理解し合うのは難しい。3週間乗せてもらって、ゴールドシップのことを理解し、自分のことを理解してもらいながら、ここまで来られたと思いますね」

 新パートナーに任命されてからこの3週間、横山典はゴールドシップのために栗東まで毎週足を運び、稽古に乗りながら徐々に会話を深めていった。それは馬と騎手の間だけでなく、騎手と厩舎の関係においてもそうだ。須貝調教師がこう振り返っている。
「この中間の馬との接し方、時計の出し方すべてにおいて、僕の思うところとノリちゃんの思うことが全部一緒だった」
 馬と騎手と厩舎と、互いが互いに相思相愛。トレーナーの表情には、横山典に依頼して本当に良かった、そんな思いが強くにじみ出ていた。

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