横山典とゴールドシップ、人馬一体の技=初コンビで重ねた会話と完璧な宝塚連覇
新コンビ横山典とゴールドシップが宝塚記念を快勝、レース史上初の連覇を達成した 【スポーツナビ】
ゴールドシップは今回の勝利でJRA通算19戦11勝。GIは2012年皐月賞、菊花賞、有馬記念、13年宝塚記念に続く5勝目、重賞は9勝目。騎乗した横山典は1991年メジロライアン以来となる宝塚記念2勝目。須貝尚介調教師は昨年に続く同レース2勝目となった。
なお、3馬身差の2着には池添謙一騎乗の9番人気カレンミロティック(セン6=栗東・平田厩舎)、さらに1馬身1/4差の3着には福永祐一騎乗の8番人気ヴィルシーナ(牝5=栗東・友道厩舎)が入線。一方、川田将雅騎乗のGI6勝馬ジェンティルドンナ(牝5=栗東・石坂厩舎)は直線伸びず9着に敗れた。
「僕の言葉は邪魔でしかない」
まさに王者の競馬、須貝調教師は「人馬一体とはこのこと」と絶賛 【スポーツナビ】
しかし、単にレース条件や天気に恵まれて勝ったわけではない。横山典弘が言った。
「この馬の成績を見てもらえれば分かるように、まともに走りさえすれば……ね。そこだけに尽きますよ」
持っている能力を出し切れば、この中で一番強いのは分かっている。ではこの稀代のクセ馬、どうすれば“まともに”走ってくれるのか――新コンビに指名された横山典に託された責任は大きかった。だが、東西随一の名手が出した答えは文句なしの100点満点だった。
「きょうのゴールドシップとノリちゃんを見ていたら、僕の言葉は邪魔でしかないなと思いました。内容うんぬんじゃなくて、人馬一体ってこのことだと思いましたね」
須貝調教師がしみじみと口にした。
馬のことを理解し、自分のことを理解してもらう
返し馬に入るときも横山典とゴールドシップの間には濃密な会話が交わされていた 【スポーツナビ】
「どの馬でもそうなんですが、たとえば初めて会った人といきなり理解し合うのは難しい。3週間乗せてもらって、ゴールドシップのことを理解し、自分のことを理解してもらいながら、ここまで来られたと思いますね」
新パートナーに任命されてからこの3週間、横山典はゴールドシップのために栗東まで毎週足を運び、稽古に乗りながら徐々に会話を深めていった。それは馬と騎手の間だけでなく、騎手と厩舎の関係においてもそうだ。須貝調教師がこう振り返っている。
「この中間の馬との接し方、時計の出し方すべてにおいて、僕の思うところとノリちゃんの思うことが全部一緒だった」
馬と騎手と厩舎と、互いが互いに相思相愛。トレーナーの表情には、横山典に依頼して本当に良かった、そんな思いが強くにじみ出ていた。